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地域に根差した地域創生のための人材育成/研究推進

北海学園大学 経済学部・人文学部・地域連携推進機構

 

学部の垣根を越えた利用者の拡大、学生による学びのフィールドの広がり、教育・研究の高度化、そして域学連携の加速へ

概要

北海学園大学は経済学部、経営学部、法学部、人文学部、工学部の5学部で構成され、学生数約 8,400 人を擁する北海道最大の私立大学である。その起源は 1885 年に設立された北海英語学校にまで遡り、これまで 130 年以上の間、北海道内外に、地域の発展に資する有為な人材を輩出してきた。
学内で ArcGIS ユーザーは偏在していたが、さらなる GIS 技術の育成と活用による教育や研究の高度化を目標に、地域経済学科を中心に学部横断的に「GIS 研究会」が立ち上げられ、2017 年 4 月から「地理情報システム論」が開講された。
この開講を契機に、学内での活用にも弾みがつき、道内の自治体をはじめとする学外での関心も高まっている。
今後は ArcGIS Online による Web マップの作成、公開などを活用し、学内での教育のみならず、地域との共同研究や連携活動を拡充させていきたい考えだ。

課題

北海学園大学は、地域に根差した地域課題の解決に資する人材を育成することが課題であった。これまでも地域研修などの事業を中心に活動を継続してきたが、学生が地域の状況を学問的視点から捉えることができるような教育の高度化を実現するため、有用なツールの活用を模索してきた。同時に、自治体との連携に基づく地域課題の解決においても、地理情報を活用することによる研究の高度化と、ステークホルダーへの分かりやすいフィードバックの手法を模索してきた。

ArcGIS活用の経緯

これまでにも同学内に ArcGIS ユーザーは存在していたが、個々の研究においての活用という側面が強かった。そのような中で、人文学部の村中准教授(地理学)をはじめとする教員ユーザーの積極的な情報発信により、相互の連絡が活発化し、新しく興味を示す教員も増え、GIS 活用の機運が高まっていった。


浜益防災マップ

学生がマップギャラリーにも出展

2015 年には自治体との域学共同研究において Network Analyst を活用したゴミ問題に対する研究・提言が実施された。研究・評価を行った経済学部の浅妻教授(経済政策)は「統計資料だけでは把握が困難な実態を、地図上に可視化し、さらに VRP 解析などで施設や回収ルートの最適化をシミュレーションできたのは ArcGIS の高度な解析機能のおかげ」と語る。
2016 年に実施された石狩市と北海学園大学との地域連携事業では、地域住民とフィールドワークを行ない、共同で浜益地域の防災マップを ArcGIS を使って作成、配布した。
また、同じく 2016 年に経済学部の水野谷教授(社会調査論)による ArcGIS の操作を習得するゼミが開始され、教育活動でも活用され始めた。
このように、学内での情報交換や ArcGIS の活用が進んでいく中で、データの可視化や高度な解析機能、共有機能に対する理解が深まり、その有用性が研究、教育の両面から評価されるようになり、学内で「GIS 研究会」が立ち上げられるに至った。
このように、学内での情報交換や ArcGIS の活用が進んでいく中で、データの可視化や高度な解析機能、共有機能に対する理解が深まり、その有用性が研究、教育の両面から評価されるようになり、学内で「GIS 研究会」が立ち上げられるに至った。
また、教員が研究で GIS を活用しているのに興味を持った学生が、わずか半年間の自主学習で ArcGIS に習熟し、卒業論文作成に ArcGIS を活用するほどの成長を見せたという実績もあり、学生のスキル向上に寄与できるとの手応えを得たことも判断材料の一つとなり、2017 年 4 月から特別講義「地理情報システム論」が開講されることとなった。

課題解決手法


担当の先生達

「地理情報システム論」は、これまで ArcGIS を研究やゼミ等で活用していた教員有志が立ち上げたもので、講義は 4 名の教員が持ち回りで行っている。また、担当教員が複数の学部から構成されているのも特徴である。
1. GIS の概念を把握すること
2. GIS がどのように社会問題や経済問題の解決に活用されているかを理解すること
3. ArcGIS の基本操作を学ぶこと
4. 課題設定に応じた機能の利用について理解を深めること
5. 行政やビジネスの現場などの実社会での利用にも応用できること
※シラバスより抜粋

本講義は教員間での関心も高く、問い合わせや見学も多い。GIS 研究会の積極的な情報発信もあり、他学部でも教員レベルでの導入が増えている。

効果

もともと、デジタルマップを活用することに抵抗がない世代の学生達にとっては、PC 上で地図データを重ね合わせるという作業は親和性が高く、ネットを中心として様々なデータが手軽に入手できるという状況も相まって、受講態度は熱心だと言う。
「本格的に ArcGIS を導入した講義としては本学初の試みであり、結果についてはまだこれから。ただ、GIS を活用しない地域経済研究というのは、これからは考えられなくなっていくのではないかと思っている」と語るのは経済学部の大貝准教授(経済地理学)。「地域経済学科は地域と密接に結びついた経済を追求していく分野。これからは地域研修のカリキュラムでも、GIS の活用は必須という流れを作っていきたい」と意気込む。

今後の展望

これからは、同学が地域貢献の一環として力を入れている地域研修において、Collector for ArcGIS をはじめとする ArcGIS Online を活用することで、研修の様子をストーリーマップ等に展開していくことを計画中だ。
また、同学のマチブラ部では大学周辺の AED 配置図を ArcGIS Online 上で Web マップ化した「とよひら AED マップ」を作成しており、学生活動においても ArcGIS が活用され始め、主体的な活動が活発化してきている。
大貝准教授は「より多くの学生が ArcGIS を手軽に活用できる環境整備をさらに推し進め、地域の課題解決に貢献できる GIS スキルを持った人材育成を進めていきたい」と語る。総合大学としての強みを活かした学際的な研究を、プレゼンテーションツールとしても有用な ArcGIS Online を活用しながら進めることによって地域貢献にも活かしていきたい考えだ。
また、浅妻教授は、域学連携の一環として、自治体への GIS カリキュラムの提供も検討を開始している。
地域連携推進機構の機構長でもある安酸学長は「GIS 技術は地域の課題解決に大いに役立つ。本学の教員と学生の意欲的な取り組みが、地域創生の起爆剤となることを期待している」と語った。


マチブラ部による「とよひらAEDマップ」

プロフィール


北海学園大学豊平キャンパス



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資料

掲載日

  • 2017年8月16日