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ArcGIS を用いた電力流通設備の落雷リスク評価

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ArcGIS を用いた電力流通設備の落雷リスク評価

中部電力株式会社

落雷解析により電力流通設備の合理的な落雷対策につながる可能性を見つけ出す

中部電力株式会社 (以下、中部電力)技術開発本部 電力技術研究所は、中部電力グループの技術研究開発を担う部門である。現場課題の解決に加え、2050 年を見据えた経営ビジョン 2.0 実現のため、重点 7 分野(再生可能エネルギーの拡大、エネルギープラットフォームによる価値提供、資源循環事業の展開など)の技術研究開発を推進し、革新的技術の社会実装を目指している。

経済産業省が公開している電気保安統計では、2021 年度(令和 3 年度)に発生した送電設備における故障のうち、落雷が原因の故障が最も多かった。電力会社では、送電設備に落雷が生じても供給支障事故に至らないように設備設計をしている。落雷の特徴(雷電流の極性、大きさ、落雷頻度など)は地域によって異なることから、落雷被害の大きい地域を基準にして送電設備の落雷対策を一律に実施することは過剰な設備投資となり、電力流通費用の増大につながる。したがって、地域ごとの落雷の特徴を把握したうえで、適切な設備設計を行うことが望ましい。そこで、中部電力では歴史的に落雷頻度マップを作成し、これをもとに設備の落雷対策を実施してきたが、更なる合理化を検討するために ArcGIS を活用した送電設備の落雷リスク評価を実施した。

落雷対策設備の中には運転開始後 50 年を超過している設備もあり、将来的に合理的な設備更新が必要とされる。また、設備更新の工事期間中は落雷に対する送電設備の保護能力が一時的に低下するため、工事期間中における落雷被害の発生確率を十分に検討したうえで、工事の実施時期や期間を設定する必要がある。さらには、近年の気候変動は、落雷の特徴や地域性に変化を与えている可能性があることから、最新の情報やトレンドをふまえて落雷リスク評価をすることが重要となっている。

送配電事業を行う中部電力パワーグリッド株式会社( 以下、中部電力 PG )が既に運用開始している送変電地図情報システム(ArcGIS による送変電地図情報システムの再開発 参照)は ArcGIS を採用している。落雷に関わる解析結果をシームレスに中部電力 PG の業務に反映するためには、ArcGIS をベースとした解析ツールの開発が望ましい。また、落雷と送電設備の位置関係を織り込んだ解析を実現できることも ArcGIS の採用理由の一つである。

中部電力では、高精度に落雷情報を取得するための研究を従来から進めてきた。落雷位置の標定精度や、落雷の特徴を解析するシステム の能力が向上し、より精密で詳細な落雷の地理情報を得ることができるようになった。こうした最新の落雷情報と送電設備情報を ArcGIS Pro 上で解析することにより、設備単位での落雷発生確率を解析することが可能となる。また、地図上で可視化することで、直感的に地域ごとの落雷の特徴やトレンドを把握することができるようになる。解析業務は ESRIジャパンのコンサルティングサービスを活用し、ESRIジャパンと共同で進めた。まず、送電鉄塔、送電線、落雷対策設備の位置情報を基に ArcGIS Pro 上にプロットした。これらの設備情報に、中部電力の保有する落雷情報を重ねてプロットした。落雷情報は時刻データを有するため、時間経過による落雷地点の推移を表現することもできる。(図1)

図1 送電設備と落雷情報
図1 送電設備と落雷情報

次に電力設備の雷等によるリスク評価を目的として、ArcGIS Pro を用いた落雷の集計・統計作業を実施した。一例として落雷頻度の地域 特性を解析した結果を図 2 に示す。

図 2 落雷頻度の地域特性
(メッシュの色が赤いほど落雷頻度が高い)
図 2 落雷頻度の地域特性 (メッシュの色が赤いほど落雷頻度が高い)

更に詳細な評価として、送電線から任意の離隔距離以内の範囲に落ちる雷の数を送電線路ごとにまとめた。(図 3 )図中の送電線の表示の太さは落雷数に比例し、送電線の色は落雷電流の平均値が大きいほど赤色に近い。このようにすることで送電設備の落雷リスクを個々の設備単位で視覚的に表現することができる。

図3 落雷統計解析結果
図3 落雷統計解析結果

落雷リスク評価の高度化を図ることで、落雷による設備被害の低減および合理的な落雷対策につながる可能性を見出すことができた。具体 的には、落雷データの地理的・統計的な解析結果と送電設備の二次元分布を重ね合わせることで、送電設備への落雷リスクを個々の設備単位で評価することが可能となった。これにより、重点的に落雷対策を図るべき設備を明確化できるため、緻密な送電設備の落雷対策が可能となり、合理的な設備投資につながると期待できる。

雷の進展特性は、地形や電力設備の形状等によって異なることが知られている。このため、地域ごとの雷の特徴(雷電流の極性、大きさ、直前の落雷との時間差など)に加えて、地形や電力設備の三次元としての特徴も加味して解析することによって、落雷による設備被害が発生する可能性をより高精度に評価することが可能になると期待される。また、落雷のトレンド解析により将来的な落雷の特徴の変化を予測することが可能となれば、先駆的な電力設備設計につながると考えられる。

中部電力 技術開発本部の受電設備
中部電力 技術開発本部の受電設備

プロフィール

技術開発本部 技術企画室 企画グループ 課長 吉田 昌展 氏(左) 技術開発本部 電力技術研究所 小椋 陽介 氏(右)

技術開発本部 技術企画室 企画グループ
課長 吉田 昌展 氏(左)
技術開発本部 電力技術研究所
小椋 陽介 氏(右)

中部電力株式会社
掲載日

2024年1月29日

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