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カリフォルニアの記録的大干ばつ:2011 – 2017

 

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カリフォルニア州では渇水や干ばつは珍しいことではない。1895 年の観測開始以来、州は長期間に及ぶ干ばつに幾度も苦しんできた。史上最も乾燥した期間は 1974 年から 1977 年までである。
では、2011 年から 2017 年にわたった大干ばつは、州の歴史上どのような位置づけなのだろうか。


干ばつの程度をカテゴリー分けし、被害を受けた州の面積を%で示した時系列グラフ
(出典:U.S. Drought Monitor)

カリフォルニアの水源

カリフォルニアには約 1,300 の貯水池があり、夏の乾季に備え冬季の降水を蓄えている。積雪はカリフォルニアの給水量の約 65% を貯め、夏の間にゆっくり溶け、貯水池に水を補給する。
冬に州に雨を降らせる要因のひとつに「大気の川」がある。これは、大気中の大量の高湿度領域が強い風で川のように移動することを指し、到達した先で豪雨や豪雪を引き起こす。「大気の川」は太平洋を越えてカリフォルニア沿岸に到達し、州の水供給を実質的に支えている。 エルニーニョは、カリフォルニアで冬に雨や雪を降らせる傾向があるが、過去の記録には多くのばらつきがある。また、ラニーニャは、しばしばカリフォルニアの冬の干ばつに関連している。
州の貯水池や河川の地表水が少なくなると、地下水が特に重要になる。乾季の間、地下水が都市と農業用水のほぼ半分を供給している。

干ばつの始まり

2011 年の 12 月は、同月では州史上 2 番目に乾燥していた。サンフランシスコのダウンタウンの降水量はわずか 3.5 ミリメートルで、これは観測開始以来 12 月では 3 番目に少ない。2012 年 4 月までに、州の約 50% がカテゴリー D2 の干ばつに見舞われていた。
2012 年 12 月から翌年 2 月まで、州の約 74% がカテゴリー D1 以上の干ばつを経験していた。
2013 年の州の雨量は、観測史上最も少なかった。水不足、土壌水分の減少、貯水池の枯渇により、漁業と農業が打撃を受けた。
2013 年初めから 2014 年の終わりまで、冬の降水量は連続して平年以下となり、地下水位の低下、そして山火事の要因となる植生の異常乾燥を引き起こした。
牧草地の草が枯れたため牧場主は牛の群れを手放すことを余儀なくされ、通常なら雪で覆われている場所では小さい山火事が頻発した。
2014 年 1 月 17 日、州知事は州全体に緊急事態を宣言した。冬の終わりまでにいくつかの嵐がやってきたが、記録的な暖かさで積雪が融け、干ばつが再び激化した。2014 年 4 月 25 日、州知事命令が発令され、水の無駄使いが禁止された。
2014 年の夏には、州のほとんどの貯水池の貯水率が 50% を下回った。2015 年 3 月時点での積雪量は大幅に減少しており、チュオラム川流域の積雪量は 1 年前の 4 割にすぎなかった。


2014 年 1 月下旬のフォルサムダム。貯水率は 17% まで低下した

干ばつの収束

2016 年に入り、州北部に雪が、それ以外の場所では大雨が降り始めた。2016 年 1 月は 2011 年以降、州で最も積雪があった年となった。
巨大なエルニーニョに押し上げられたジェット気流が太平洋岸北西部を覆ったため、州北部の降水量は平均降水量をわずかに上回ったが、南部は乾燥した。3 月末までに、州の 70% 以上が依然としてカテゴリー D3 から D4 の干ばつに見舞われていた。


① 2012 年 4 月、② 2014 年 2 月、③2014 年 9 月、④ 2017 年 4 月の干ばつ状況

2016 年 11 月、米国森林局は、干ばつが原因でこの 1 年間に州内で 6200 万本の木が枯死したと発表した。これは前年と比較して樹木の枯死が倍増したことを示している。
幸いなことに、2017 年初めに複数の「大気の川」が西海岸を通過し、豊富な雨をもたらした。連続的な暴風雨の襲来により、州の干ばつは予想を覆す記録的な速さで解消され、4 月には州知事が干ばつの収束を宣言した。

2011 年から 2017 年にかけての連続的干ばつの原動力は一体何だったのか。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)による報告では、大気条件がこの干ばつを説明する鍵となると述べている。2011 年から 2014 年の冬までの間、西海岸沖の気圧の峰が雨期にカリフォルニアに雨をもたらす嵐をブロックしたのだ。
干ばつ初年度の高気圧は、ラニーニャの発生で主に説明がつく。しかし、遠く離れた海盆(海底にある円形の盆地)上の海面温度パターンも、干ばつの期間中に高気圧を継続させる一因となっていた。


エルニーニョとラニーニャ発生時の海面温度の比較

2017 年に発表されたハワイ大学による研究では、ラニーニャ発生の次の年は干ばつになることが多いことを示唆している。カリフォルニアの干ばつはラニーニャ発生の翌年に始まり、その後数年間続いた。科学者たちは、ラニーニャ現象の解消後も、熱帯太平洋東部では海面水温が冷え、州の降水量は平均を下回ったままであることを発見した。雨の降らない状態はエルニーニョの発生により海面温度が上昇するまで何年も続く可能性があるという。
米国における干ばつの予測は、強いエルニーニョやラニーニャがない限り難しく、特に夏季の予測は困難を極める。しかし、最近の研究により、ロスビー波(大陸・海洋の温度差や地形の高低差などによって大気が揺すぶられて生じる自由振動の波)が夏場の乾燥と熱波の発達と関連していることがわかった。この波の振幅が小さいと大気の交換も小さく、雨が降らない時期が長引き、干ばつ状態を急速に発展させることがある。NASA の科学者たちは、ロスビー波を観測することで夏季の乾燥や猛暑を 2 週間から 1 ヶ月前には予測可能であることを示した。

州の干ばつは終わりを迎えたが、今後も干ばつの報告は続くだろう。長期的な観点から言えば、米国西部では過去 20 年間ずっと乾燥状態が続いているからだ。言い換えれば、干ばつは本当に終わったわけではない。気候変動が干ばつに与える影響は明らかではないが、地球温暖化により気象変動が激化する可能性もある。次の干ばつに備えた計画を立てるためには、このような干ばつから学ぶ必要があるだろう。

今回紹介のストーリーマップは、マップギャラリーでもご覧いただけます。
NOAA Climate Program Office

 

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掲載日

  • 2019年1月28日