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事例

日本初、草地管理にGISとリモートセンシングを本格活用で地域創生推進

標茶町農業協同組合

 

これぞGIS/リモートセンシング! 牧草の生育状況を衛星画像解析により把握。地籍データと重ね合わせ、組合員が直感的に状況を把握し草地更新を実践

概要

標茶町に広がる圃場
標茶町に広がる圃場

北海道川上郡標茶町(しべちゃ)は北海道の東部に位置し、太平洋岸の釧路からは北に車で1時間程である。広大な平野部と丘陵部からなる土地の総面積は1,099.41Km²で東京23区の約1.8倍の広さである。平野部の多い地勢と、冷涼な気候は牧草の生育に適し搾乳を中心とした酪農業が古くから町の基幹産業である。
しかし、昨今、人材不足により草地の管理が行き届かず雑草の繁茂などにより良質な牧草の生産量が減少している。この状況を打開するため、標茶町農業協同組合(以下JAしべちゃ)はGISとリモートセンシングを活用し、牧草の生育状況を把握すると共に、組合員に対し情報を提供し草地の更新計画の立案などに役立てている。今後は土壌のデータも勘案し、更に生産性の高い草地を増やすべく尽力していく。

背景

JAしべちゃの組合員は酪農型農業に従事し、346戸が乳用牛を約37,000頭、35戸が肉用牛を約8,400頭それぞれ保有している。約25,000ヘクタールの草地ではチモシー、オーチャードグラス、ペレニアルライグラスなどの牧草を生育しているが、シバムギやタンポポなどの雑草が繁茂し全道では草地の50%がこれらの雑草に覆われているとの調査結果も報告されている。草地の更新(掘り返し)により牧草の生育を促進する必要があり、理想的には毎年草地全体の10%程度を面積ベースで更新すべきだが実際には人材不足とコストの問題で4~5%に留まっている。JAしべちゃでは人手とコストを抑えながら草地の現況を確認し、どの圃場を優先的に更新すべきなのか組合員に情報を提供し計画、実践してもらう必要に迫られていた。
営農部農業振興課農業振興係の島職員は、酪農学園大学在学中にGISとリモートセンシングを学んだこともあり、同大学農食環境学群・環境共生学類の金子教授に相談したところ、NPO法人Digital北海道研究会(以下Digital北海道)を紹介されGISとリモートセンシングを活用した圃場の管理に関するアドバイスを受けた。
同時に、国際航業株式会社(以下国際航業)が受託した国交省事業「平成24年度地域情報の共有・活用による地域活性化プロジェクト検討業務」の中で標茶町の圃場(草地)管理が採択され支援を受けることになった。

導入手法

導入に当たっては、Digital北海道がコンサルティング全体を受け持ち、一般財団法人北海道農業近代化技術研究センター(以下農業近代化技術センター)がArcGIS for Serverを用いたイントラネットの情報共有システム「農地GIS圃場管理支援システム」の構築を担当した。国際航業は地方独立行政法人北海道立総合研究機構農業研究本部根釧農業試験場(以下根釧農業試験場)と協働し、BlackBridge社が運営する地球観測衛星「RapidEye」が取得した衛星画像の解析を行い植生状態の把握を行った。

GISデータ

本システムに搭載するデータの準備は島職員が自ら受け持った。「個人情報を含む地籍データが必要なんですが、町内だけでなく町外に土地を保有している組合員もいるので役場と調整した上で個別に同意書をいただきに伺いました」この部分が今回の導入で最も苦労した部分だったと振り返った。努力の甲斐あって、地番図、圃場図、背景図、農家位置図が揃い、これらのデータと後述する衛星画像の解析結果を重ね合わせることにより、組合員が直感的に状況を把握できるようになった。

農地GIS圃場管理支援システム

農業近代化技術センターがシステム構築を主導した。ArcGIS for Serverに前述のデータが格納され、JAしべちゃ職員はクライアントからArcGIS API for Silverlightで開発されたWeb GISアプリケーションでイントラネットを経由してデータにアクセスする。組合員はクライアントからではなく、システムに接続された大判プリンターでカラー出力した紙地図で状況を確認する。また、管理用PCにはArcGIS for Desktopがインストールされ、島職員他の管理者がデータの更新や主題図の作成を行っている。

植生解析

草地の植生分析に衛星画像を利用するにあたっては根釧農業試験場の知見が大いに役立てられた。容易に想像しうるところだが、牧草と雑草の反射スペクトルは類似している。両者のスペクトルの差ができるだけ、大きくなるよう撮像時期を工夫することによりスペクトルの差異を抽出した。2014年6月と10月に撮像された衛星画像を用い、10月分に関しては2回から3回刈り取られた後、雑草と伸び方が異なるタイミングを図った。これらの衛星画像を国際航業が教師無し分類するなどして最終的に良好な圃場とそうでない圃場を地図上に可視化した。

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農業GIS圃場管理支援システム(診断結果:©国際航業株式会社)

導入効果

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現地調査の様子

「だいたい8割程度合致していると思います」と島職員は語った。奇しくも取材に伺った前日に現地調査を行い解析結果の確認を行ったとの事だった。JAしべちゃのOA教室と呼ばれる一室に本システムと大判プリンターが設置され、取材当日も関係者が紙地図で現況を確認する姿が見られた。衛星画像解析から得られた予測データを元に、およそ見当をつけて現地を確認することにより、広大な圃場をひとつひとつ端から確認していく手間が大幅に削減されている。また、実際には雑草に覆われている圃場を牧草が良好に生育していると誤って認識していた組合員が改めて現況を把握するなど、圃場の状態を正しく理解するためにも役立っている。

今後の展望

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OA 教室にて

「組合員向けに情報を整理して紙地図に出力して閲覧してもらっているんですが、まだまだ見に来られない方もいらっしゃいます。情報共有の手法にはまだまだ課題がありますね」OA教室で紙地図を広げながら島職員は語った。「あとは、肥料やpHなど土壌に関連するレイヤーを重ねて、より解析精度をあげていけたらと思っています」更に、タブレット端末を利用した情報の共有や、UAVを使った災害時の被害調査などやりたいことがまだまだあるようだ。これぞGIS/リモートセンシングと呼べるような活用をされている現状が新たなテクノロジーを取り込んで更に進化していくことだろう。JAしべちゃのGIS運用に期待し、また、GIS担当職員の方々を応援したい。

プロフィール

営農部 農業振興課 農業振興係 GIS担当 島 壮太 職員 尾崎 日織 職員

営農部 農業振興課 農業振興係 GIS担当
島 壮太 職員
尾崎 日織 職員

標茶町農業協同組合 (JAしべちゃ)

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資料

掲載日

  • 2016年3月9日

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