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事例

新プラント開発・建設におけるリスク軽減の取り組み

Mainstream Renewable Power社

 

データの可視化、情報の共有化による業務効率化でGISへの投資額を2年以内に回収の見込み

課題

導入効果

 

Mainstream Renewable Power社は、ユーティリティ企業や大企業、機関投資家との協業もしくはその代理として、風力、太陽光発電所の開発を行っている。アイルランドのダブリンに本社を置き、ヨーロッパ、北アメリカ、アフリカにある8ヶ国に11の支店を持つ。風力発電や太陽光発電プラントの開発計画、立地選定、建設工事は、リスクを伴う複雑なビジネスである。新しいプラントの最適な立地の決定には何百もの要素を考慮する必要があり、計画の妥当性を見出すには何年も要する。建設工事のプロセスも多くの専門団体が係るので、非常に複雑だ。

 

導入経緯

Mainstream Renewable Power社は、この複雑なプロセスを管理しリスク軽減を図ることで、ビジネスの効率化とプロジェクトの促進につなげたいと考えていた。3大陸で働く従業員や450社におよぶパートナー企業やサプライヤーとの協力体制の向上を図るためにも、全てのデータ資産の管理と、プロジェクト関係者による迅速な情報へのアクセス手段の構築が急務であった。

加えて、Mainstream Renewable Power社が保有する膨大なデータ資産の活用方法にも課題があった。同社が請け負う各プロジェクトは、地質や気象パターンから、植生、鳥の渡りに至るまで、情報に大きく依存する。ヨーロッパで進む沖合の風力発電プラント計画の場合、潮の満ち引きや海流で海底面が絶えず変化することから、扱う海洋環境データセットは非常に複雑である。Mainstream Renewable Power社は、大量のデータを可視化し、時間をかけて環境の変化をマッピング、測定、予測する必要性に迫られていた。

 

導入手法

様々な検討を重ねた結果、Mainstream Renewable Power社 はArcGIS for Serverテクノロジーをビジネス全体に展開することを決定した。Esri アイルランドの協力により、ヨーロッパ、北アメリカ、アフリカの各オフィスに導入が進められた。ArcGIS for Serverは、既存システムのMicrosoft SharePointプラットフォームに統合され、一貫性のあるエンタープライズソリューションが構築された。

 

導入効果

GISの導入は、データ管理、可視化、分析をはじめ、パートナー企業を含むプロジェクトに関わる従業員のデータ共有を実現した。Mainstream Renewable Power社はGISが生み出した5つの価値として、プロジェクトの見える化、データの分析、プロジェクトの管理、プロジェクトのマッピング、マップの作成を挙げる。ArcGIS for Server導入から12ヶ月後には、8ヶ国で進む67のプロジェクトを管理し、各プロジェクトでは最大で50レイヤーにおよぶ空間属性データを利用するまでになった。

GISの利用はリスク軽減の面でも大きな役割を果たす。例えば、ダブリンオフィスの従業員がチリの建築請負業者と同時刻に同じ情報を閲覧できるようになったことで、グローバルチーム間の協力体制が向上した。結果として、コストの増加や工期の遅れにつながる解釈の相違、プロジェクト管理に関する課題が生まれるリスクの回避につながっている。また、分かりやすい形で膨大なデータをまとめ、情報の見える化が実現されたことで、新たな発電プラントを不適切な場所に計画するリスクが軽減した。

 

今後の展望

Mainstream Renewable Power社は、将来の気象や海流の変化が開発予定地に与える影響を分析する最新の予測モデリングを進める。例えば、Esri アイルランドや他のパートナー企業と共同で長年の海底面の変化を観察する3D時系列マップ構築が挙げられる。完成後はシナリオを進行させるツールを使い、将来どのように海底が変化する可能性が高いかを表すモデルをつくる予定だ。この情報は、沖合での風力発電プラントの立地を査定する際に有益であろう。

 

まとめ

「沈泥の動きを可視化し、リスクの特定と回避を可能にするGISは、Mainstream Renewable Power社にとって無くてはならないテクノロジーだ」とEsri アイルランドのジョアン・マクラフリン氏は言う。GISの導入は、Mainstream Renewable Power社が抱えていた大きな課題であるリスクの軽減は元より、複雑なプロジェクトの迅速な遂行、業務の効率化に大きく寄与している。「業務プロセスの効率化が進み、現在では導入前に比べ大凡40%の時間削減を実現している。GISへの投資も2年も経たずに回収できる見込みだ。GISはMainstream Renewable Power社のビジネスの中心に据えられている」とマクラフリン氏は結んだ。

 

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掲載日

  • 2015年2月16日