事例 > GISと風況解析で南極昭和基地のスノウドリフト(吹き溜まり)予測を目指す

事例

GISと風況解析で南極昭和基地のスノウドリフト(吹き溜まり)予測を目指す

国立極地研究所

 

南極ならではの問題に立ち向かう

課題

導入効果

 

概要

除雪作業の様子
除雪作業の様子

国立極地研究所は、南極・北極といった極地に関する科学の総合的な研究観測を行っている組織である。同研究所が所轄する、南極圏内の東オングル島にある昭和基地は、全68棟、総床面積7,254m²の建造物からなり、南極観測における重要な観測拠点である。昭和基地には、天体・気象・生物学などの研究・観測を行う施設の他に、厨房・食堂・通信室・娯楽室が完備されている管理棟や発電棟・居住棟・汚染処理棟など、様々な施設が存在する。

 

南極昭和基地中心部の建物配置
南極昭和基地中心部の建物配置

これら施設の維持には南極という厳しい環境ならではの問題がある。南極では冬になると海から秒速30m以上のブリザード(猛吹雪を伴う強風)が吹き、建物が埋まってしまうほどの積雪(3-4m)が発生する。特に基地中心部にある管理棟周辺は利便性や内部施設の管理運用などを理由に、狭い範囲にいくつもの施設が増築されてきた背景があり、建物が密集したこれらの場所に海から吹き付けるブリザードの影響で大量の雪の吹き溜り(スノウドリフト)が発生し、基地運営上の大きな問題となっている。

 

導入経緯

スノウドリフトは施設管理上の問題だけでなく、除雪作業による隊員たちの大きな負担になっている。本研究では国立極地研究所、九州大学応用力学研究所、株式会社環境GIS研究所の3者の専門家が協力することにより、昭和基地建物周辺の地形と複雑な気流の変化を、数値風況シミュレーションによって評価し、スノウドリフト発生領域の予測を試みた。

管理棟周辺建物の様子 夏期(左)と冬期(右)
管理棟周辺建物の様子 夏期(左)と冬期(右)

 

解析手法

国立極地研究所と国土地理院から提供されたデータをもとに、株式会社環境GIS研究所の荒屋氏によって、ArcGISを用いて昭和基地周辺の環境が3次元で忠実に再現された。そして、九州大学の内田准教授がAirflow Analyst®を用いて数値風況シミュレーションを実施した。223m × 160m × 75mの広範囲のエリアを20cmという空間解像度で計算するために、計算に使う格子数は9,000万点にも及んだ。

 

導入効果

Airflow Analyst®を使った3次元風況解析の結果
Airflow Analyst®を使った3次元風況解析の結果

計算された数値結果は、同じくAirflow Analyst®の機能を用いて可視化され、昭和基地建物周辺に発生する気流が3次元かつアニメーションで表現された。計算結果を可視化することにより、金助教をはじめとする国立極地研究所は、現地で観測されたスノウドリフト分布との相関関係を直観的に比較することができた。また、視覚的な理解だけでなく、地形と建物の影響を受け、風速が低下する領域とスノウドリフトが発生する領域が一致することを定量的に突き止めることに成功した。

 

まとめ

数値風況シミュレーションは、スノウドリフトを考慮した最適な建物配置の決定など、今後の昭和基地設営のグランドデザインに大きく貢献していく。また、数値風況解析の精度を向上させるためには、詳細な地形データが必要であり、現在、国土地理院と連携して3次元レーザー測量を計画的に実施している。

プロフィール

極地工学研究グループ 助教 金 高義 氏


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掲載日

  • 2015年2月3日

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