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鉄道路線管理を効率的に

ブルガリア国立鉄道基盤会社

 

バルカン半島の中央に位置するブルガリア共和国は、ヨーロッパの戦略拠点として重要な役割を果たしている。 ヨーロッパの運輸網は、西ヨーロッパ、地中海の間を横断し、欧州連合(EU)の外側縁を走る。ブルガリア国内には、4つの国際的な陸上輸送路線が通っており、ブルガリアの鉄道路線の管理と発展は、ブルガリアのみならずバルカン半島とヨーロッパ全体にとって重要な鍵となっている。

ArcGISウェブアプリケーションでは、鉄道インフラと地籍データの情報を共に表示

ブルガリアの鉄道路線は、全長4,000キロメートルを越え、その大部分が国際的な運輸網として利用されている。多彩な自然と地形から、180以上の壮観なトンネルや970か所におよぶ鉄道橋、また路線沿いに840の踏切が存在する。

20世紀中頃にその多くが建設されたブルガリア鉄道路線では、ブルガリアとヨーロッパおよび欧州連合の市場経済のニーズを満たし、多くの課題を解決すべく、ブルガリア国立鉄道基盤会社(the Blugarian National Railway Infrastructure Company: 以後 NRIC)の監督のもと、近代化と発展が進められている。

NRICは、ブルガリア国内における経済構造の重要な一端を担い、その資産価値は何億ユーロにものぼる。2002年1月にブルガリア政府により設立されたNRICは、国内路線のすべての管理を行っている。ブルガリア鉄道のインフラ管理においてNRICは、効率的な管理と近代化、鉄道網の発展、 EU標準への適合といったブルガリア政府からの要件を満たす必要性があった。さらに、EU諸国の鉄道会社の情報システムとの同期が求められ、それはEU共通の情報基盤構築のための一歩と位置づけらていた。

これらの目的からNRICは、集中統合型情報システムを導入し、路線網や資産、その他関連データについての空間情報と属性情報をすべて収集する必要があった。包括的なGIS構築のため、NRICは地理情報システム設計と導入プロジェクトを立ち上げ、Esri社のディストリビューターであるEsriブルガリアに開発を依頼した。Esriブルガリアは、国内の巨大GISプロジェクトクトに携わるなど16年の以上の実績があった。

プロジェクトは2009年5月に始動し、2010年11月に完了した。NRICのGISはArcGISを基盤としており、鉄道インフラや資産、所有権、その他関連するデータについての空間情報と属性情報を収集、蓄積、格納、送信、分析し、また企業の運営、商業活動、財政管理に利用できるように設計された。

NRICのGISは、鉄道インフラの地理空間情報を含む集中型データベースへアクセスすることができ、インフラ運用の効率的管理を可能にした。この集中型データベースへのアクセスは特に重要で、鉄道運営担当者への業務指示や緊急時の対応、車両整備の実行、鉄道の近代化に役立っている。

新たに導入された高速列車が首都ソフィアと黒海の都市バルナを結ぶ

またこのGISには、「鉄道」と「地籍と不動産登記」の2つのサブシステムがある。 NRICでは、将来的に別のサブシステムも追加していく予定だ。

ArcGISは、敷地と基盤設備のモニタリングや評価、分析のみならず、職務の整理統合などの戦略的かつ経営上の課題解決にも利用されている。従って、鉄道インフラ管理を向上させることで、大きな経済的成果も得られるようになった。

近代的な地理空間情報技術の導入は、資産管理のプロセスを向上させ、ヨーロッパ社会における鉄道運輸標準の達成を確かなものとした。また、NRICのイントラネットを利用した地籍データとインフラ管理も可能とした。

GISは、運用、管理、修理、インベントリ、検査、計画、分析とレポート作成、意思決定、資産管理、その他の業務に利用されている。

NRICのGISには多くの利点として、異なる情報源の統合情報へのアクセスや、効率的かつリアルタイムな情報管理、強力な分析機能、計画とメンテナンスにおける効果の 優先順位化、情報表示のマルチプルオプション、国際標準とモデルの導入などがある。さらに、Esriブルガリアの専門技術を活用できたことは、もうひとつの大きな収穫であった。

ベリコチルノボ市の鉄道インフラの10cm解像度のオルソ画像マップ(NRIC提供)

ArcGIS導入によりNRICは、全社で鉄道網と所有権に関する実データへのアクセス可能な近代的システムを有することとなった。加えて、様々なタイプのレポート作成機能により、企業の計画と管理の向上につながった。

GIS導入は、鉄道構造管理の質と効率を向上させ、経済発展の前提づくりに貢献しているとともに、NRICの継続的な発展と国内運輸インフラの近代化に向けた長期目標達成への弾みとなるであろう。

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掲載日

  • 2012年5月14日