GISを活用した課題研究を通して、地理的技能を培い、学術研究の基礎的な見方や考え方を身に付けさせる。また、大学進学に向けた進路決定にも役立たせる。
GISは、地域に関する空間情報と属性情報をコンビュータ上で一括して運用する統合環境のことである。地理教育においてGISを活用することにより、空間情報の収集・選択や身近な地域から世界までそれぞれのスケ-ルで地織の類似性や空間的な法則性の考察に大いに役立つと考えられる。普通教育に関する科目である地理Bの発展的な学習として、GISを活用した課題研究を行った。この場合、教育課程の中に組み込むことは困難である。そこで、高校教育のどのような時間設定で、どのような内容で実施することが望ましいかを検討し実践した。また、研究内容を学術的な内容と関連づけながら生徒の進路実現に結びつけることにも留意した。
地理的技能については、高等学校学習指導要領解説地理歴史編で、地理情報の活用に関する技能と地図の活用に関する技能の2つに分けてとらえることができるとしている。その地理情報や地図の活用については、GISに関連したものも含めて、次のような授業実践を行っている。
これらの実習で留意しているのは次のようなことである。コンピュータを利用した作業については、統計データを入力することにより、自動で統計地図が作成される場合も多いので、入力するデータの統計年次や数値の持つ意味など考えさせている。また、紙地図での作業をできる限り授業で行い、地理的事象の空間配置と要因分析に関する見方や考え方を身に付けさせるようにしている。さらに、地図やグラフを作成したのち、それらをワークシートに貼り付け、特徴・要因・意見を述べさせ、論理的に考えるようにさせている。
岡山一宮高校の土曜講座は、土曜日の有効な活用や学力向上を目的に、希望生徒を対象に実施している。したがって、各教科の学習講座が中心であるが、その他に実習、フィールドワークなどを実施している。2007年度の内容としては、各教科の学習講座、里山の自然観察、デッサン講座、音楽講座、岡山検定講座、地理情報システム講座、外部講師の講演会などである。この土曜講座の1つとして実施することにより、じっくり研究を進めることができた。また、4時間連続の時間設定ができ、フィールドワーク、聞き取り調査、公立図書館での文献調査など校外での活動など有効な時間の活用ができた。
課題研究は、「地理情報システム講座」という名称で、希望者17名、6グループを対象に、土曜日の4時間を2年生後半3回、3年生前半3回を実施した。その内容は、1. 地域研究・GISに関する講義、2. ArcViewなどの使い方、3. アドレスマッチングの方法、4. グループごとのテーマ設定、5. データ収集、フィールドワーク、地図作成、分析、6. プレゼンテーション用ポスター作成、7. プレゼンテーション練習である。また、各グループの研究テーマは次のとおりである。
この研究内容について、2007年度地域地理科学会大会(2007年7月1日、岡山大学)および2007年度岡山大学大学院自然科学研究科高大連携高校生・大学院生による研究紹介と交流の会(2007年7月31日、岡山大学)においてポスター発表を行い、研究内容や方法について、研究者や大学院生と議論したり、指導を受けたりした。そのような活動を通して、地理学、地球科学、環境学、経済学を大学での研究分野として希望している生徒もいる。