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事例

画像、LiDAR、GIS がもたらす伐採管理の変革

Transpower(ニュージーランド送電企業)

 

ニュージーランドの北島と南島における電力事業者および主要電力顧客へ電力を発電および送電している電力セクターにおいて、Transpower は 1994 年から国有企業として重要な役割を果たしています。同社は送電設備の所有者であり、また同時にシステムオペレーターとしての役割も担っています。Transpower が直接電力を発電したり販売したりすることはありませんが、ニュージーランドの電力規制当局から契約を受けて発電事業者が電力を電力事業者に販売し、電力事業者が消費者に供給するための卸売電力市場を運営しています。Transpower のネットワークは、25,000 本の送電用鉄塔、11,000 キロ以上の送電線、および 174 の変電所から構成されています。

課題

植生の干渉は、Transpower の送電ネットワークの信頼性と安全性に対する重大なリスクをもたらします。ニュージーランドの多様な地形は、密集した森林やアクセスが困難な地形を特徴としており、植生が急速に成長するための理想的な環境となっています。植生の生長が放置されると、送電線に干渉し、停電、サービス中断、その他様々な運用上の事故を引き起こす可能性があります。従来の植生の管理方法は、目視検査や現地調査など、手動での作業に依存しており、時間を要するとともに時に不正確でした。Transpower は、運用効率と環境への配慮のバランスを取りながら、植生のリスクを効果的に把握し軽減する必要に迫られていました。これまでに画像を活用して一部の植生のリスクを特定してきましたが、画像データの管理は煩雑であり、運用に関与する多くの利害関係者にリスクを一貫して効果的に伝えるための改善が求められていました。

解決策

Transpower は、LiDAR データとオルソ画像を活用して送電ネットワーク全体の植生を把握し管理する方法に業務の変革を進めています。同社は Esri の ArcGIS Online 、ArcGIS Experience Builder 、ArcGIS Image Server 、および ArcGIS Dashboards をデータの管理、可視化、分析に利用しています 。同社は航空機を用いた約 100 メートル幅の計測によって送電回廊と周囲の植生の詳細な 3 次元データを収集しました。これらの画像と LiDAR データは契約業者によって処理され、送電設備と関連付けられます。処理された 3 次元データは GIS のシステムに読み込まれ、シーンレイヤーパッケージとして ArcGIS Online 上に Web サービスとしてホストされます。この 3 次元データの Web サービスは Transpower およびその関連事業者が植生の干渉状況や高さ、送電線との近接度を確認するために活用されます。また伐採管理の進捗状況を効率的にステークホルダー間で共有するために ArcGIS Dashboard が利用されます。すべての送電路のシステムのデータ収集は 2023 年後半に行われ、この計測データを活用するための可視化ツールが 2024 年半ばに全ユーザーに提供される予定です。

結果

Transpower は長年様々な用途で LiDAR を使用してきましたが、送電システム全体の植生管理の目的で使用するのはこれが初めてです。これまで、Transpower は植生の干渉を特定するために契約事業者の現地調査と報告に依存してきました。事業者からの報告を受けて Transpower の資産管理システム内で作業指示が発行していましたが、伐採管理の進捗状況を空間的に把握することは困難でした。

伐採管理業務を変換するためのこのプロジェクトの目的はこれまでの運用の良い部分と、最新の技術が提供するソリューションを融合させることです。新しく改善されたシステムと運用により、Transpower とそのサービス提供者は現地に向かう前に問題が発生している場所を把握できるようになりました。LiDAR データは植生の侵入に関するより詳細で正確な情報を提供し、作業の計画とスケジューリングを効率化し、作業の安全性を向上させるとともに、土地所有者への説明をサポートするためのより有効な可視化ツールを提供します。さらに、Transpower は LiDAR データを使用して地面から送電線までの十分な距離が保たれているか監視することができます。

この新しい運用により送電網の信頼性と安全性を向上させ、植生に起因する停電やサービス中断のリスクを抑制することが期待できます。LiDAR 調査から得られた詳細な植生データにより対象を優先付けした植生の伐採などの保守運用が可能となり、送電網のメンテナンスと運用効率を向上することができます。ArcGIS Image Server は、計測したオルソ画像を Transpower の組織全体の従業員およびサービス提供者が任意の送電システム領域を可視化するために利用することを可能にします。これによってオルソ画像を定期検査、計画、環境評価などの様々な用途で活用することができます。また ArcGIS Dashboards は航空測量の進捗報告や管理すべき植生のリスクの数と場所に関する統計情報を関係者に提供するために活用できます。

パートナー

Esri のディストリビューターである Eagle Technology は、Transpower と密接に連携し、要件定義、プロトタイピング、GIS および画像技術の実装を行ってきました。Eagle Technology は、Transpower のトレーニングおよび今後の展開についての戦略においても支援を継続しています。

効果

Transpower は LiDAR データを活用することで植生に関するリスクを早期に検出および軽減し、停電などの事故に発展する前に対策を講じることが可能になりました。これにより、より安定したサービスの運用を実現し、顧客満足度を向上させることができます。空間的なデータの分析を活用することで保守スケジュールやリソースの割り当てを最適化し、作業管理システムとの統合によって業務プロセスの時間も短縮しました。正確な植生データを活用することで、Transpower およびそのサービス提供者は規制基準を遵守しながら環境への影響を最小限に抑えた伐採管理に関する意思決定を行うことが可能になりました。また、能動的に植生に関するリスクを早期に発見し対応することは、受動的な保守作業や停電などの事故対応に関する費用の削減につながります。

GIS は、現場調査を実施する前に現場の状況に関する貴重な情報を契約業者に提供します。この情報にアクセスすることで、契約業者は作業の優先順位を決定し、クルーを効率的に展開する計画を立てることができます。

また、Transpower の送電網はさまざまな所有者の土地にわたっています。このシステムにより、土地所有者は伐採作業が行われる前に対応が必要なエリアを 3 次元で確認することが可能となり、Transpower と土地所有者の円滑なコミュニケーションを支援することができます。

次のステップ

植生管理業務への活用に加えて、ArcGIS Image Server はエンジニア、設計者、オペレーターが LiDAR を設備管理、保守、修理のために活用することを可能にします。Transpower は、このデータの活用を今後も拡張していく予定です。たとえば、空間的な分析と機械学習を活用し、過去および現在の傾向などのデータソースを組み合わせて、気象パターンや植生の成長予測を実現することを検討しています。

「システムの導入前は、送電ネットワークの植生リスクの把握は限定的でした。LiDAR を使用して業務を改善することにより、Transpower は作業の計画を事前に立て、サービス提供者やスタッフのために使いやすい GIS ツールを提供することが可能になりました。」

– Mathy Dornan, GIS マネージャー, Transpower

 

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掲載日

  • 2024年9月20日