事例 > オープンデータとして提供する「農地の区画情報(筆ポリゴン)」の利活用促進

事例

オープンデータとして提供する「農地の区画情報(筆ポリゴン)」の利活用促進

農林水産省 統計部

 

農地の区画情報「筆ポリゴン」をより身近にし、データに基づく農業経営と関連する取り組みの進展を支援

課題

導入効果

はじめに

農林水産省統計部では、農山漁村の実態や農林水産業従事者の構造、農林水産物の生産・流通・加工・消費からなる、フードシステム全体に関する実態の把握に向け統計調査を実施し、調査結果を農林水産統計として公表・提供している。

農林水産統計は、各種政策目標の策定や交付金の算定根拠等として用いられるなど、農林水産行政の推進に不可欠な「情報インフラ」としての役割を担っている。また、公表された調査結果は、国民のための「公共財」としての役割も担っている。

筆ポリゴンとは

農林水産統計の 1 つである作物統計調査では、日本全国の農地を対象に田畑別の耕地面積や水稲の作付面積を「標本調査」により把握しており、その母集団情報として農地の区画情報『筆(ふで)ポリゴン』を整備している。また、この整備情報を基に公開用に調整し、農業関連のオープンデータとして公開・提供している。

筆ポリゴンの作成方法(概要)

  1. オルソ画像(人工衛星画像等)を GIS ソフトウェアに読み込み・表示
  2. その画像を目視判読し、一筆ごとの形状に沿った区画の境界を作図し、ポリゴンを作成
  3. 更に属性情報として、目視判読した地目情報(田・畑)を付与

筆ポリゴンの主な特徴

  1. 全国を対象とした約 3,000 万件の GIS データ
  2. 撮影済みのオルソ画像から作成したデータ。ただし現地測量や現地確認、各種台帳との突合を行っていないため、現況の農地、各種の台帳等の状況とは一致しない場合がある。


筆ポリゴン(青線)[左図] およびオルソ画像
(国土地理院の地理院タイル)に筆ポリゴンを
重ね合わせたイメージ[右図]

オープンデータとしての公開・提供

筆ポリゴンは、調査の母集団情報として 2010 年代前半(平成 20 年代半ば)から整備を進め、2018 年(平成 30 年)度末までに全国の地域で整備が完了し、2019 年(平成 31 年)にオープンデータとして提供を開始した。

この筆ポリゴンは、利用規約等に同意すれば、誰でも複製や編集・加工等、自由に利用することができ、商用利用も可能である。

筆ポリゴンの利活用における課題

筆ポリゴンは農地情報のデジタルインフラとして、スマート農業などデータを活用する農業経営の実現等に大きく貢献することが期待されている。

しかし、筆ポリゴンは農林水産省 Web サイトに掲載した GIS データをダウンロードし、利用者がそれぞれ利用する形態であったため、GIS ソフト等を所有していない利用者は筆ポリゴンが具体的にどのようなデータであるかを容易に確認できなかった。また、GIS ソフトが利用できる環境を構築し、本格的な利用を始めるにはそれなりの準備が必要であり、利用者が筆ポリゴンの利活用を検討する前段階で断念する場合もあった。

更なる利活用の促進に向けて

農林水産省統計部では、筆ポリゴンをより多くの方が利用でき、利活用した取り組みの検討等を実施できる状況を目指し、GIS 製品を活用して筆ポリゴンを利活用しやすい環境の整備を行うことにした。

誰でも筆ポリゴンを簡単に閲覧・確認できる環境の構築

ArcGIS Online を使用し、Web マップ上に筆ポリゴンを表示させたことで、GIS ソフトに馴染みのない利用者でもインターネット環境があれば筆ポリゴンを閲覧・確認できる環境を提供した。利用者に筆ポリゴンがどのようなデータであるのかを簡単に確認してもらうことで、筆ポリゴンを活用した取り組みを検討する第一歩が踏み出しやすくなると考えている。


<筆ポリゴン公開サイト>
Web マップ上に公開することで、全国の筆ポリゴンが誰でも閲覧可能に

筆ポリゴンを利活用した取り組みを試せる Web GIS 環境の構築

ArcGIS Enterprise を使用し、筆ポリゴンを活用した取り組みの試行や検討ができる「筆ポリゴン利用 GIS」を提供した。これにより、GIS ソフトの利用環境がない利用者でも、筆ポリゴンの利活用についての事前検討が可能となり、GIS ソフトの導入も含め、本格的な筆ポリゴンの利活用への移行後も目的に応じた継続的な活用につながると見込んでいる。


<筆ポリゴンの活用イメージ①>
筆ポリゴンごとに作付け品目情報を登録し、
情報を見える化


<筆ポリゴンの活用イメージ②>
筆ポリゴンと土壌分類情報
(農研機構の日本土壌インベントリー)を
重ね合わせて農地に関する情報の分析に貢献

筆ポリゴンの修正情報を提供できる環境の構築


<修正情報提供フォーム>
マップ上でポリゴンを作成して、
修正情報を提供することも可能

筆ポリゴンがより多くの方に認識されるようになると、利用者からの最新の情報が寄せられることが想定される。そこで ArcGIS Survey123 で「修正情報提供フォーム」を作成し、筆ポリゴンの区画修正情報等を受け付ける統一的な窓口を設置した。これにより全国の利用者から現地の農地区画に関する貴重な情報を収集できるようになった。

今後の展望

ArcGIS 製品を活用したこれらの環境整備により、筆ポリゴンの利活用が促進され、データに基づく農業や関連した取り組みがさらに進展することを期待している。

また、上記の取り組みを後押しするため、筆ポリゴンを利活用した事例、活用イメージの紹介なども引き続き検討していきたい。

プロフィール


農林水産省(合同庁舎第1号館)



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2023年1月30日