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緊急事態発生時のための災害対応用アプリを ArcGIS Experience Builder で作成

GISコープス / 全米公共安全連盟 /CEDRデジタルコープス

 

SNS が危機管理を促進 ボランティアによるタイムリーな情報提供

概要

ハリケーン、地震、伝染病など、大規模な緊急事態が発生した場合、人命を救うために迅速かつ効果的な行動が必要とされる。緊急要員や支援サービスを適切に配備し、管理するためには、状況認識が重要な役割を果たし、位置情報はこれらのオペレーションに欠かせない。PhotoMappers は、都市・地域情報システム学会(URISA)の GISCorps(以下、GISコープス)、全米公共安全連盟(以下、NAPSG財団)、CEDRデジタルコープスの 3 つのボランティア団体が共同連携して設立したプロジェクトである。危機管理団体や被災した住民を支援するために、緊急時対応者や一般市民へ重要な情報をタイムリーに提供している。

PhotoMappers では、米国に在住している 7,000 人以上のボランティアが、SNS やニュースメディアなどに一般公開されている被害状況や被災地の様子の写真を収集し、公開している。公開された写真は、政府機関や連邦緊急事態管理庁(以下、FEMA)、国家対応調整センター(NRCC)等の緊急対応機関、また、地域の被害状況を確認したい住民の情報源として役立っている。

緊急事態発生時、GISコープスはボランティアチームを立ち上げ、ボランティアメンバー向けのポータルで新規にインシデント ID を作成し、必要な画像やデータの収集をチームに指示する。ボランティアメンバーが収集した被災地の写真を基に、管理チームは写真が撮影された位置を特定し、建物被害スコアおよび FEMA が定義するライフラインへの影響をあらわすアイコンを付加したものをパブリックポータルで一般公開する。

課題


ボランティアポータルの管理画面

ボランティアポータルの管理画面には、スマートエディターウィジェット付きの ArcGIS Web AppBuilder アプリが組み込まれており、管理者が現場で起きていることを直感的に理解できる。しかし、このアプリは表示される情報量が多いため、モバイル端末やタブレットなどの小さな画面で見やすく表示できないという課題があった。多くのボランティアメンバーはパソコンで作業するため、アプリを多様な画面サイズに最適化し、動作させる必要があった。また、GISコープスの管理者チームは、パブリックポータルとボランティアポータルの表示を合理化することも望んでいた。同組織のプログラムコーディネーターであるホリー・トーピー氏は、「以前使用していたツールでは、ボランティアポータルのダッシュボードに組み込まれたマップやアプリの数があまりにも多く、ポータル全体のメンテナンスや更新が困難でした」と説明している。

ArcGIS 活用の経緯

GISコープスのコア委員会メンバーであるエリン・アーキソン氏は、モバイル端末にも対応し、簡単な操作でアプリ構築とメンテナンスができる ArcGIS Experience Builder(以下、Experience Builder)がこのプロジェクトに最適であり、ボランティアメンバー向けのアプリ構築に貢献すると考え、採用した。
加えて、管理チームのメンバーがより簡単に、自由な場所にテキスト形式で文字を配置できるなど、アプリの機能性向上が期待できる点も採用の理由となった。

課題解決手法

Experience Builder は、データをインタラクティブに、かつモバイル端末で最適化する Web アプリケーションに変換できるように設計されているため、アプリにボランティアメンバーが必要な手順や解説付きのビデオ、ツール類をすべて埋め込むことができた。
さらに、元のダッシュボードタイプの表示、さまざまなデータが集約された写真とマップのみの表示、建物被害スコア、FEMA が定義するコミュニティライフラインのアイコン、その他のカテゴリに基づいたデータのフィルタリングなど、それぞれ異なる方法でデータを表示することが可能になった。
FEMA のコミュニティライフラインのカテゴリは、食料、水、シェルター、交通、エネルギーなど、特定のライフラインに影響を与えるものに焦点を当てており、ユーザーはそれぞれの役割に応じて必要な情報を入手することができる。

効果

Experience Builder を導入したおかげでデータをマップに表示するまでの時間の短縮と、簡便なカスタマイズ機能やテスト運用が実現し、PhotoMappers のボランティアメンバーと GISコープスの管理チーム両方のユーザーエクスペリエンスが改善された。ボランティアメンバー同士のコラボレーションが促進され、最近の活動ではたった 1~2 週間で 600 枚もの写真をマッピングできるようになった。トーピー氏は、「アプリをさまざまな画面サイズで表示できること、そして管理者が表示内容をカスタマイズできることは、Experience Builder に切り替えた大きな利点でした。一枚ずつ写真を見たり、表で数字を見たりするよりも、さまざまな種類の被害を地図上で見ることで、現場で何が起こっているのか直感的に把握することができます。それが、このアプリを利用する多くの人にとっての価値だと思います」と述べている。


組み込まれた添付ファイルビューアー
エリア内で撮影された写真のギャラリー表示

また、アプリの修正時、ダッシュボードに埋め込まれた複数のアプリでそれぞれ編集を行う必要がなくなり、管理者は Experience Builder 一箇所で編集を行えるようになったため、アプリのメンテナンスにかかる時間が短縮され、作業が効率化された。

さらに、アプリやウィジェットを一箇所に集めたことで、閲覧者がデータを見つけやすくなっただけでなく、ボランティアメンバーへ投稿の依頼をする際にも 1 つのリンクを送るだけで済むようになった。

今後の展望


ボランティアポータルのダッシュボード

NAPSG 財団のディレクターであるタリ・マーティン氏は、ボランティア活動と危機管理のニーズに合わせてアプリを進化させた GISコープスの取り組みを評価し、「このアプリはあらゆる人々が求めていたデータソースになったのです」と語った。
今回のプロジェクトは、特に災害の初期段階において、状況認識を提供する SNS が持つ可能性が、コミュニティにとって本当に価値あるものと決定づけられた事例となった。

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資料

掲載日

  • 2023年1月30日