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3D 都市モデルで世界の都市を革新

ロンドン、ヘルシンキ、ボストン、シンガポール

 

本記事は、米国 Esri 社の「Global Cities Innovate with 3D Modeling」を翻訳したものです。

 

図1

スマートシティにおいては、都市計画やインフラ、サービスに関する意思決定を行う際に、3D 都市モデルを利用して仮想の街並みを作成し、シナリオのモデル化や影響の把握を行う事例が増えている。ロンドン、ヘルシンキ、ボストン、シンガポールなどの都市が代表例だ。

3D 都市モデルは、既存の建物(屋内・屋外)、交通インフラ、緑地、プロジェクト案などをリアルに表現する。3D 都市モデルでは、新しい建物やソーラーパネルの設置、橋梁の建設などが地域にどのような影響を与えるかを簡単に把握することができる。都市計画が提案され、モデルに統合されると、パートナー企業や一般市民とのコミュニケーションのための効果的なツールとなる。また、これらのモデルは都市計画だけでなく、状況認識や緊急時の対応にも非常に有効である。

このようなリアルなモデルを開発するには、GIS が重要な役割を果たしている。物理的な模型や 2 次元の図面とは異なり、政府は 3D の都市景観を簡単に修正することができ、新しい建物や新しい素材、変化する風景などを反映させることができる。

ボストンでは、ボストン計画開発局が、全米最古の都市公園であるボストンコモン付近の開発の指針として、洪水予測、見通し解析、日影解析に 3D 都市モデルを使用している。

マサチューセッツ州では建物がボストンコモンに影を落とす時間を制限する法律が制定されているため、周辺の開発計画がボストンコモンにどのような影響を与えるか、詳細な分析が必要である。木製の物理的な模型を 3D のデジタルモデルに置き換えることで、プランナーはこれまで視覚化できなかった詳細情報にアクセスできるようになり、太陽の角度や日照時間が変化する 1 年のさまざまな時期に、新たな区画整理や開発によって公園の影がどのように増えるかを明確に把握できるようになったのである。

図2

市のリーダーたちは、ボストンの建物や資産の最新かつ詳細な画像を手に入れることで、市の職員や開発者を含む関係者間のコラボレーションに大きなメリットがあることをすぐに理解した。また、重要な意思決定や交渉の中心にデータが置かれるようになった。そして今度は、そのメリットを他の人々にも広げていきたいと考えている。ボストン計画開発局のシニアアーキテクト兼アーバンデザイナーであるコリー・ゼンジボット氏は、「スマートな3D都市モデルをユーザーフレンドリーにすることで、誰でも何にでも使えるようにしたいと考えています。将来的に何に利用できるかは無限大です」と述べる。

 

都市間におけるコラボレーション

3D 都市モデル化の流れは、世界中で盛り上がっている。2019 年 2 月には、ロンドンとヘルシンキが「都市間デジタル宣言」で連携し、テクノロジー関連の取り組みの中でも、3D 都市モデルに関する成功事例を共有することを発表した。

ロンドンの最高デジタル責任者であるテオ・ブラックウェル氏は、「このデジタル宣言は、ヘルシンキとロンドンがそれぞれの庁内の専門知識と技術部門とのつながりを発展させ、都市データを活用して市民の生活を向上させるための協力の正式な枠組みを定めたものです」と述べる。また、ヘルシンキの最高デジタル責任者であるミッコ・ルサマ氏は、「ヘルシンキのビジョンは、デジタル化を最大限に活用した世界で最も機能的な都市になることです」と付け加えた。

テクノロジーに精通した2つの都市のリーダーが強く意識しているように、地図の視覚的な性質は、課題や現状、可能性についてのコミュニケーションを簡素化する。3D 都市モデルは、スマートシティが庁内や市民、他の政府と協力するための効果的な手段となる。

図3

 

デジタルツインの構築

アジアに目を向けると、世界的な大都市であるシンガポールでも、庁内や市民に広く利用してもらうために、3D 都市モデルに多額の投資を行っている。シンガポールでは、政府機関や一般市民が使用する 3D 都市モデルに数百万ドルを投じている。このプロジェクトには、首相官邸、国立研究財団、シンガポール土地公社、シンガポール政府技術庁などが協力している。この3D都市モデルは、アイデアの検証、計画の立案、成長やその他の差し迫った問題に関連する地域の課題に対処するための効果的な方法を提供する。

シンガポールの都市モデルに含まれる情報は、構造データだけではない。シンガポールでは、膨大な量の地形、人口統計、リアルタイムのセンサーデータと組み合わせた気象データを含める予定である。建物や自然環境、人の動きを可視化することで、政府はどこに新しいインフラを投資し、効果的にサービスを提供すべきかを判断できるようになる。これは、計画から災害対策まで、あらゆる面で役立つだろう。

これらの都市は多額の資金を投じて取り組みを行っているが、ドローンなどで屋内外を素早く撮影できるようになったことで画像撮影のコストが削減されている今、3D 都市モデルの作成は多くの都市にとって手の届くところにある。ロンドン、ヘルシンキ、ボストン、シンガポールのように、3D 都市モデルとその活用方法に関する包括的な戦略を組み合わせることで、リーダー達はスマートな成長計画を前進させ、市民の生活の質を高めることができるだろう。

 

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掲載日

  • 2021年10月18日