九州大学自律分散型空間情報基盤システム
九州大学大学院工学部 環境システム科学研究センター 地圏環境研究室
学術研究都市の空間情報基盤づくりを目指す空間情報システム
自律分散型空間情報基盤システムは,学内はもとよりインターネットを通じて誰もが,九州大学に関する情報を共有できる環境を提供するシステムである。
九州大学での自律分散型空間情報基盤システムの提案
平成7年に公表された九州大学の改革の大綱案では
- 時代の変化に応じて自立的に変革し、活力を維持し続ける開かれた研究大学を構築する。
- 新しい発想に立って最新の情報通信処理技術を採用し、世界への情報発信、教育技術の抜本的改革、管理運営方式の合理化・効率化等の電子キャンパス化を積極的に推進する。
- 大学情報のデータベース化と情報発信の必要性、更に、管理・運営の情報化については、他の管理業務も含めてできるだけネットワーク化し、省力化や事務の簡素化を推進することが不可欠で、単に自動化をはかるだけでなく、組織そのものを情報化、電子化に対応して再編・合理化する。
こととなっている。これをうけて九州大学新キャンパスマスタープランでは、ITを活用した研究、教育、キャンパスの管理運営の実現が具体的に計画された。
このような中で我々のグループはキャンパスのIT化として将来あるべき姿を模索し、欧米の大学ではすでに定着しつつあるGISを用いた情報システムを採用することとした。GISを大学において有効に活用するためには、様々な分野の豊富なデータを重複せずに容易に収集できるような学内外相互の横断的連携と課題に対応できる開発環境が必要となる。つまり、情報を広く共有して内外に発信してゆき、研究・教育の支援はもちろんのこと、大学運営の計画支援、危機管理などの意思決定の支援が可能な高度レベルの利活用を行う体制を構築することが重要である。
そこで当研究室では、九州大学において各種GIS高度利用体制を確立することを目指し、GISをベースとして各分野・組織が保持している空間データを分散したまま連携して共有できるような仕組みを、汎用のソフトを使って自ら設計・立ち上げを行うことでカスタマイズ可能なキャンパス自律分散型空間情報基盤システムを提案している。
自律分散型空間情報基盤システムの概要
分散型データベースは従来の集中型に比べ、負荷分散、記憶容量、データのバックアップの点で有利である。自律分散型空間情報基盤システム地圏環境研究室メンバーは各種GISプロジェクトによって分散形成された拠点がネットワークを介して連携することで成立するものである。このシステムを構築するためには、それら拠点が互換性のあるGISプラットフォームによってネットワークを介し空間データを相互利用できるという思想のもとで形成されされている。また各拠点で管理されている空間データを調べるための検索システムであるクリアリングハウスをこの中に取り入れ、それとWebGISを組み合わせる。自律分散型空間情報基盤システムを構築するためには、このような各種GISプロジェクトによって形成される拠点を結んで連携したシステムへと高度化を進める。

拠点 (node) の概要
拠点は、組織内LAN等のネットワーク環境のもとで、拠点内で共用できる空間データを「共用空間データ」として一元的に整備・管理し、各分野において活用する組織内横断的なシステム(技術・組織・データの枠組み)である。
その特徴として、
- データの重複投資を避け、情報の共有化をはかることができる。
- 検索・取得までの手間がかからない。
- 地図、図面、データの発生源で入力するので、最新のデータが重複なく整備できる。
- ベクトルデータの形式をShapeフォーマットに統一し、座標参照系 は汎用的なものを採用している。
- 同一組織内の独自のデータベースシステムであるため、管理運営、利用に適するようにカスタマイズできる。
- 比較的小規模なシステムのため専任の管理者を要しない。システムダウンなどの障害時の被害が小さい。またコストも極めて安価である。
などがあげられる。このように、組織内で統合化されたGIS環境は、従来のGISのスタンドアロンな形態から脱却して、効率的なGISの共同利用を目指すものである。

拠点の運用 (九州大学キャンパスマップ)
九州大学は福岡市の六本松、筑紫、馬出、箱崎、大橋地区に分散している。この分散したキャンパスに各拠点を構築し、自律分散型システムを展開させる。現在、各拠点のポータルサイトとして機能する九州大学キャンパスマップの試験運用を開始した。これは福岡市周辺の広域図に各キャンパスの位置、名称、概要などを入力し、各団地地図をベースにポイントあるいはポリゴンで表示されている各キャンパスの情報を属性データ(アクセス方法、キャンパス概要、学部・大学院等)として提供している。各キャンパスの詳細情報は広域図を拡大することにより、各キャンパスの建物のポリゴンが表示され、各部局へのリンク先を含む属性データ(建物概要、学部・大学院・教員等)が表示される(学外向け)。キャンパスの図面には各地区の実態調査図(CAD)を利用する。将来的には各建物のフロアー図も提供し、講義室・共同利用施設等の利用状況や既存データベースとの連携を計り各居室の情報も提供する(学内向け)。各研究のデータや各キャンパスの施設や環境データは分散配置された各拠点がそれぞれデータベースとして保存、または各キャンパスのポータルサイトとして機能し、情報を発信することになる。

まとめ
このような情報システムは、米国の一流大学でも始まったばかりの、研究・教育に加えて、大学運営と一体化した利活用を目指すものであり、研究者自ら構築、運営して将来へ継承、発展しうるものである。また、既存のあるいは配備が決定されている高速通信システムなどの情報基盤を有効に活用するとともに、学内IT化で計画中のFM、セキュリティシステム、電子事務局とも連携が可能な柔軟性を有する、調和共存性を持ったものである。GISは従来から国、自治体などに数多く導入されているが、まだ多くの解決すべき問題を残しているが、研究、教育および学内運営に真に役立つ将来性が期待でき、かつ経済的に格段に有利性を持つものと考える。
本システムは、九州大学が独立法人として、また東アジアを中心とした世界的視野での学術活動を展開するための、新しい社会基盤、情報基盤の1つとして提案するものである。
プロフィール

地圏環境研究室メンバー

2005年1月1日
