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リスク・コミュニケーション支援システム

慶応義塾大学SFC研究所 Geo-informatics ラボ

WebGIS と連携した電子会議室で、市民や専門家がリスクについて議論する

地図やGISはリスク認知を向上させるか-市民から専門家まで、多様なステークホルダーが対象リスクへの理解を深め、自分の意見をもち、伝え、相互に理解することを目指して、地図を使ったコミュニケーションに挑戦

個人、集団、組織の間のリスクに関する情報と意見の相互的な交換の過程であり、双方向なコミュニケーションを通じて、リスクの理解と問題解決のための協調プロセスを考えることを目指している。当プロジェクトでは、対象の持つポジティブな側面だけでなく、ネガティブな側面についての情報、それもリスクはリスクとして公正に伝えるために、「地理空間情報」に着目し、関係者が共に考えるプラットフォームとして、WebGISと連携した電子会議室を提案・開発を行った。

電子会議室での議論をサポートする地図ツールには、閲覧用にHTMLベースで開発されている地図ビューアと、編集用にJava Appletで開発されている地図エディタの2つのモードがあり、処理の重さによって自動的に切り替わる仕様になっている。地図上に表示する空間データは、日本全国の範囲をカバーし、ある程度信頼性をもつものをメタデータとともに整備している。これらの空間データは、相互運用技術を用いて外部GISエンジンやWMS等のOpenGISサーバから取得することも可能である。

このツールの最も大きな特徴は、地図エディタで作成した“アイデア地図”を電子会議室に貼ったり、その“アイデア”に手を加えて返信するなど、地図を介したコミュニケーションができることである。さらに、リスク・コミュニケーションの段階(問題の理解・自己意見の確立・相互理解)に対応した3つの支援機能をもっている。

① 評価体験機能

専門家が行った各種リスク評価を、地図上で再現する。(例:地殻水平歪予測、噴火危険度予測など)

② 立地評価機能

約90種類のラスターデータ(1kmメッシュ)から必要なデータを任意に選択し、個別に効用関数を設定した評価値を重みづけして、総合的に評価する。

③ 結果比較機能

他の評価結果との差分を地図で表現し、その原因となっているパラメータ設定の違いを認知することを手助けする。

これらの評価支援機能では、精度やフォーマットが異なる約50にも及ぶデータについて、ArcGIS Desktopのオーバーレイ機能やArcGIS Spatial Analystを利用して、標準地域メッシュ(3次)を基準に、各フィーチャからの距離や含有フィーチャ数(重み付け調整済み)などの空間処理を、バッチ処理により一括して行っている。また、それらの精度差や処理方法は、各メタデータに反映している。

原子力発電から生じる高レベル放射性廃棄物は、数万年も近寄れないほどの放射線を出す危険性がある。日本では、再処理の後、地下300mより深い地層に埋めて処理をすることが法律で決められている。しかしながら、地下300m以深のボーリングデータなどは非常に少なく、深地層や地質の状態に関する科学的知見は十分とは言えません。また、数10万年~100万年にわたる将来の安全性を考えるという、人類史上はじめての試みでもある。
現在、地層処分の実施主体(原子力環境整備機構 NUMO)は、国や専門家が検討した立地条件などを、「概要調査地区選定上の考慮事項」として公表し、全国の自治体から候補地を公募している。
当プロジェクトでは、このように、多くの科学的な不確実性をもち、国民全体のNIMBY施設ともいえる地層処分問題をテーマとして取り上げていく。

2004年9月1日より約6週間、全国から一般市民約60名を募り、システムの実証実験を行った。リスクの考え方や地図に慣れる期間、自己学習期間、話し合う期間、再考の期間という利用シナリオを提案し、何度か地図を使った立地評価を実施してもらい、その変化を追うことで、地図や議論が与えるリスク認知への影響を調べていく。実際の議論では、地図をきっかけに、情報公開や合意プロセスについても議論が広がっており、このような情報システムの必要性やリスク認知への影響も確認されている。

  • 地図を見ると、十人十色の考え方が一目瞭然である
  • 活断層や火山などの自然災害は避けられないので、重要視すべきであると考える人が多い
  • 最近の台風や噴火などをきっかけに、施設の操業時におけるリスクなど、必須の要件ではないが、付加的に列挙する要素の必要性に気がついた
  • 地図を使って表現や議論をすることによって、自分では気がつかなかった項目や、相反する評価基準の存在に気がついた
  • 参加者間のチェックにより市民の知が向上する
  • 潜在的な危険性が許容できる場所を探すにしても、地図で評価結果が表現されたことにより、日本がいかに活断層・活火山帯が多く、狭い国土かということが分かる
  • 原子力施設は海岸に点在していることが分かった。必ずしも地元で電力が消費されている訳ではない。どこでその電力が使われているのだろか…など

当プロジェクトは、平成12年度より継続研究「リスク・コミュニケーションシステム有効性調査」として、経済産業省より委託を受けている。5年目となる本年は、実証実験を通じて、今後の実用化に向けての課題抽出、他リスクへの応用可能性を検討している。

プロフィール

Risk Communicationプロジェクトメンバー (研究代表:総合政策学部福井弘道教授)

Risk Communicationプロジェクトメンバー
(研究代表:総合政策学部福井弘道教授)

掲載日

2005年1月1日