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ArcGIS Onlineで実現する工業用水の次世代管理

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ArcGIS Onlineで実現する工業用水の次世代管理

みおつくし工業用水コンセッション株式会社

ArcGIS Online を活用し、工業用水の点検・修繕業務を効率化
最新の設備管理技術で大規模漏水を未然に防ぐ

  • クラウド基盤によるデータの一元管理
  • 豊富なアプリ群による柔軟な業務対応

みおつくし工業用水コンセッション株式会社(以下、みおつくし工水社)は、2021 年(令和 3 年)8 月に設立された。大阪市工業用水道特定運営事業等、いわゆる「コンセッション事業」として、2022 年(令和 4 年) 4 月から 10 年間、大阪市水道局に代わり工業用水道の運営を担っている。同社は、経済産業省から許認可を受け、管路の更新・維持管理を含むフルパッケージ型としては全国初かつ国内唯一の工業用水コンセッション事業として注目を集めている。

この事業の最大の目的は、市内に拡がる膨大な管路網を維持管理し、大規模漏水を未然に防ぐことである。淀川から取水し、浄水処理を経て工業用水を供給する管路網は、市内の産業活動を支える生命線である。老朽化、収益減少、人材不足といった課題を抱える中、効率的かつ確実なインフラ管理が求められていた。

大阪市水道局が保有していた従来の資産管理システムはコンセッション移行後に引き継ぐことができず、新たな仕組みを構築する必要があった。代替としてフリーの GIS ソフトなどを用いていたが、利用者ごとにデータ編集が行われた結果、どのデータが最新であるか判別できない状況が頻発した。さらに、更新データが個人のローカル環境に保存され、組織全体での共有が滞るなど、属人的かつ断片的な管理に陥っていた。

現場点検においても、鉄蓋や弁栓の状態記録が個人単位で蓄積され、全体像の把握が困難であった。設備の劣化や小規模漏水の的確な把握不足は、大規模漏水につながる可能性がある。しかし、そのために必要な情報を組織全体で共有する基盤が整っていなかった。

管網図全体
管網図全体

ArcGIS 導入の目的はデータの安定的な蓄積と全社的な共有である。それまで活用していたフリーの GIS ソフトなどでは個々の利用者がデータを編集していたため最新情報が不明確となり、組織全体で一貫した資産管理を行うことが難しかった。これに対して ArcGIS Online はクラウド上で最新データを一元的に管理できるため、誰もが同じ情報を参照できる環境を整えることができた。

さらに、ArcGIS には多様なアプリケーションが用意されており、特定の業務だけでなく点検、修繕、経過管理など幅広い業務で活用できる点も評価につながった。

まずは情報共有を円滑に進めるために、 ArcGIS Online 上に管路網のデータをアップロードし、組織全体で常に最新の情報を共有できる環境を整備した。また、大阪市から引き継いだ資産データは属性がコード化されており、そのままでは実務に使いにくい状態であったため、図形情報と属性情報を結合して分かりやすく再構築する作業を進めた。この整備により、従来は断片的に管理されていたデータが、統一された基盤上で一元的に扱えるようになった。

現場業務においては、スマートフォンやタブレット端末で利用するモバイルアプリ ArcGIS Field Maps を使い、鉄蓋の目視点検や弁栓の操作確認といった作業を記録する仕組みを導入した。既存の鉄蓋や弁栓のデータに現地の点検結果が紐づけられ、管路データと連携されることで、現場の業務記録が資産の一部として蓄積される。これによって、これまで個人が手元で保管していた情報が組織全体で共有され、設備の状態を時系列で追跡できるようになった。

現地調査アプリ画面
現地調査アプリ画面

ArcGIS Online の導入によって、みおつくし工水社の業務は大きく変化した。まず、クラウド上でデータを一元管理できるようになったことで、社内の誰もが常に最新の情報にアクセスできる環境が整った。フリーの GIS ソフトなどから ArcGIS Online に移行したことで「見るだけ」の利用者も簡単に地図や情報を参照できるようになった。これにより、事故や漏水が発生した際には、影響範囲を地図上で迅速に把握できるようになり、対応判断のスピードが格段に向上した。

また、異なるデータのテーブルを連携させ、親子関係を作れる「リレーションシップクラス」という機能を活用し、設備データと点検結果を紐づけた。これによって、劣化の進行度や修繕履歴を時系列で整理できるようになり、単年度の記録に留まっていた情報が、連続的に把握できる資産情報へと進化した。その結果、設備更新や修繕の優先順位付けに役立てられている。

さらに、現場ではモバイルアプリを通じて点検結果をその場で入力できるようになり、現場からでも ArcGIS Online にあるデータにアクセスできる体制が整った。これにより、過去の点検結果や写真をすぐに参照できるため、「昨年の劣化が今年どう変化しているか」といった経年的な比較も容易になった。設備の修繕後に状態が改善されているかどうかを可視化できる点も、維持管理の精度向上につながっている。

こうした一連の変化は、組織内部の効率化にとどまらず、工業用水の安定供給を通じて市民や利用企業に対しても安心を提供する効果を生んでいる。

点検結果管理アプリ
点検結果管理アプリ

今後、みおつくし工水社はさらなるデジタル化と高度化を目指している。
漏水通報の記録については、現在の Excel 中心の管理から脱却し、ArcGIS Survey123 を用いて現場から直接 ArcGIS Online に入力する仕組みを整備していきたいと考えている。これにより、通報内容や調査結果がリアルタイムに地図上へ反映され、事故報告や調書の作成が自動化されるなど、業務効率と情報精度の両立が期待される。

また、管路の運用実態をより正確に反映させることも課題の一つである。現状では「水が流れている区間」と「止水している区間」が PDF などで別管理されているが、将来的にはこれらの情報を ArcGIS Online に統合し、現場と管理部門が同じ視点で状況を把握できるようにする計画だ。災害時や緊急時に即時判断を行うためにも、この情報一元化は大きな意味を持つ。
さらに、ArcGIS Dashboards や ArcGIS Experience Builder を活用して可視化の幅を広げることにも力を注いでいる。特に鉄蓋の劣化状況については、特殊なカメラで撮影した写真を地図上に配置し、色分けやアイコンで劣化度合いを表現する仕組みを構築中である。これによって、現場担当者だけでなく、GIS に慣れていない利用者でも直感的に状況を理解できるようになる。こうした取り組みの先には、点検や修繕で蓄積されたデータを分析し、将来的に劣化の進行を予測する仕組みの導入も視野に入れている。全国初のフルパッケージ型コンセッション事業として培ったノウハウを活かし、他地域の水インフラ事業にも波及しうるモデルケースとなることが期待されている。

プロフィール

施設部 管路グループ 主任 田中 和希 氏 コーポレート部 総務財務グループ 主任 福富 信平 氏

施設部 管路グループ
主任 田中 和希 氏
コーポレート部 総務財務グループ
主任 福富 信平 氏

掲載日

2026年1月16日