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包括契約締結による全社的な GIS 環境整備で技術力と提案力を強化

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包括契約締結による全社的な GIS 環境整備で技術力と提案力を強化

株式会社 建設環境研究所

社内の GIS 利活用環境の整備を通して、GIS 技術力を強化し社会の地理空間情報活用のニーズに応える

株式会社建設環境研究所(以下、建設環境研究所)は、”環境”を軸とした、建設コンサルタントである。環境、土木分野の専門の技術者が多く所属し、地域固有の環境課題に対応している。近年は、DX に注力しており、システム開発や空間情報解析、AI 技術といった先端技術へも取り組んでいる。
同社では、20 年前から ArcGIS 製品を導入し、業務において GIS の活用を進めてきた。GIS の知識を持つ技術者が多くいるだけでなく、2020 年(令和2 年)には空間情報技術を専門とする部署を新設し、社内で GIS 活用を通じた業務効率化を推進している。
2025 年(令和 7 年)度には ArcGIS 製品の包括契約(Enterprise Agreement 以下、EA)を締結し、全社的に ArcGIS 製品を活用できる社内環境を整備した。これにより、GIS 技術者の育成や GIS を用いた提案力の強化につなげている。

建設環境研究所の業務では、自然環境に関する多種多様なデータを扱うため、位置情報を基盤にデータを統合・可視化できる GIS は不可欠である。そのため、同社では 20 年前から ArcGIS 製品が活用されている。近年では、デスクトップ型のアプリケーションの ArcGIS Pro の活用も進めており、3D データの活用や環境解析に活用している。たとえば、CIM(Construction Information Modeling)データと動植物の生息域などの環境データを重ね合わせ、地形が環境に与える影響を非専門家にも分かりやすく可視化している。また、鳥類の飛行経路を 3D 表示することで、従来の 2D 地図では難しかった高さの情報を視覚的に表現できる。これにより、高さ方向の影響を立体的に評価できるようになった。
また、同社は独自の野外調査支援ツールである電子野帳「Wild-K」を 5 年前に開発した。Wild-K は、現地で調査結果を入力すると、オフィスにデータが自動転送され、 ArcGIS Pro のレイアウト機能を用いて即時に整形された報告図面を自動生成できるシステムである。従来必要だった清書、資料整理、入力等の作業が不要となり、調査から成果物完成までのリードタイムが大幅に短縮できた。さらに近年では、AI 技術と GIS を組み合わせたデータ解析にも着手しており、自然環境のモニタリングや災害リスク評価への応用など、業務の幅を広げている。

電子野帳「Wild-K」の利用イメージ
電子野帳「Wild-K」の利用イメージ

社内での GIS 利活用をさらに促進するために、2020 年には空間情報技術を専門とする部署が新設された。同部署では、社員が日常的に GIS を活用できるようにするための教育やサポートにも注力し、GIS に関するマニュアルの整備も進めている。一例として、ArcMap(ArcGIS Pro の旧形態の製品)から ArcGIS Pro への移行マニュアルの整備がある。ArcMap から ArcGIS Pro への移行が進む中で、製品間の操作方法や UI の違いに戸惑うユーザーも多く、移行支援や社内教育の体制整備が求められていた。独自にマニュアルを整備することで、製品間の移行をスムーズに行うための支援も行っている。他にも、社内で頻繁に発生する操作上の疑問やトラブル対応をまとめた FAQ ドキュメントも作成した。実務的で有用性のある情報を迅速に参照できる仕組みを整え、日常の業務効率化に大きく寄与している。こうした取り組みは、環境コンサルタントとしての信頼性と効率性を高めることに繋がっている。

ArcGIS Pro の利活用が進む一方で課題もあった。利用者数の増加に伴い、ライセンスが不足することによる機会損失の懸念やライセンス管理の煩雑さに頭を悩ませていた。従来は部署ごとにライセンスを管理していたため、契約手続きの手間の増加と組織全体での利用状況の把握が難しい状況であった。こうした課題を解決し、技術者たちが安心して GIS を活用できる環境を構築するために、同社は 2025 年度に EA 契約を締結するに至った。EA 契約の検討にあたっては、社内の各部門からの要望や運用実績をもとに、ライセンス利用の最適化と将来的な拡張性も重視した。

EA 契約締結によって、ライセンスの一元管理と利用環境の整備が実現した。EA は、ArcGIS 製品を包括的に利用できる契約体系であり、企業全体で柔軟にライセンスを運用できるのが特長である。これにより、契約や更新業務が簡素化された。また、利用可能なライセンス数が増加することによって、より多くの社員が ArcGISを使用できるようになった。EA 契約締結を機に、ESRIジャパンが提供する ArcGIS Pro のトレーニングを全社的に受講し、社内全体のGISスキルのさらなる向上を図っている。

ArcGIS 活用のためのさまざまな取り組みにより、社員が自発的に ArcGIS を活用できる環境が整い、組織全体の技術力向上とサポート体制の強化につながっている。専門部署の設立や EA 契約といった社内環境の整備を行うことで、同社では GIS を活用した提案が日常的に行われるようになり、「GIS を活かせる組織文化」が醸成されてきている。
また、こうした ArcGIS の活用により、建設環境研究所では技術力の向上と提案力の強化が実現できている。同社の提案力の核となるのは、前述の 3D データの活用や独自ツールの開発だけには留まらない。 AI・機械学習による画像分類がその代表的な例である。衛星画像や UAV の空撮画像を解析することで、河川の「瀬」と「淵」の区分や土砂粒径の判別、植生の密度分布などを自動分類することができる。これまで専門技術者が手作業で行っていた高度な分析作業を自動化し、誰でも実行可能な、定量的で再現性の高い環境評価を可能にした。
さらに、ArcGIS Pro のレイアウト機能を活用し、解析した結果を高品質で見栄えの良いマップとして簡単に図面化することができる。これにより、発注者への説明資料や合意形成の場面でも視覚的に理解しやすい形で情報を提供できるようになった。上記の成果は、環境調査や保全提案の高度化に直結し、科学的根拠に基づいた説得力ある提案を行うことを可能にしている。同社では、ArcGIS を単なる分析ツールではなく、提案力を支える基盤技術としても活用している。

画像分類による河川環境の分析
画像分類による河川環境の分析

建設環境研究所は、EA 契約締結によって整備された ArcGIS の利用基盤を活かし、さらなる技術革新に取り組んでいる。特に、ゲームエンジンとの連携による 3D シミュレーションや AI 画像分類の汎用化・高精度化、環境の定量評価等にも取り組んでおり、地理空間情報を活用したさらなる価値創造を目指している。また、環境分野におけるデータ連携や AI 解析をさらに発展させ、気候変動や自然災害への適応など社会的課題の解決に GIS を積極的に活用していく方針である。GIS は今後も官民問わず活用が進む分野であり、同社は EAを通して得た経験を基に、GIS 利活用の社会的ニーズに応える技術集団として成長を続けていく考えである。

Twinmotion(ゲームエンジン)との連携イメージ
Twinmotion(ゲームエンジン)との連携イメージ

プロフィール

左から事業創造部 デジタルイノベーション室 工藤 尚史 氏、東間 千芽 氏、野村 大祐 氏、押川 考一郎 氏

左から事業創造部 デジタルイノベーション室
工藤 尚史 氏、東間 千芽 氏、
野村 大祐 氏、押川 考一郎 氏

掲載日

2026年1月16日