ESRIジャパン株式会社

教室とフィールドをつなぐ GIS 活用

事例

Breadcrumbs

TOP事例教室とフィールドをつなぐ GIS 活用

教室とフィールドをつなぐ GIS 活用

石川県立輪島高等学校

「探究学習」に GIS を

近年、教育現場では主体的・探究的な学びが重視されており、石川県輪島市にある輪島高等学校 (以下、輪島高校)でも探究学習に力を入れている。輪島高校の1年生は「不自由研究」として、教員があらかじめ用意したテーマに沿って探究活動を行い、基礎的な調査方法や分析の手法を学んでいる。2年生以降は自由なテーマを設定し、自ら課題を見つけて解決に取り組む「自由探究」へと発展させるのが特徴だ。今回の取り組みでは、1年生の授業においてGISを体験的に活用する機会を設けた。生徒は地図を使って情報を可視化・分析することで、データを多角的に捉える有効性を実感した。こうした経験は、2年生で本格的に自由探究に取り組む際、GISを活用したデータ分析や成果の表現を円滑に進めるための基盤となる。ArcGISは、生徒の主体性を高め、学びの質を深化させる有力な教育ツールとして、今後ますます期待されている。

輪島高校で GIS を授業に取り入れるきっかけとなったのは、NPO 法人 RISE(以下、 RISE)の働きかけであった。RISE は教育分野での探究学習を支援する団体で、特に GIS を活用した学びの有用性を各地で提案している。輪島高校に対しても、探究学習において地理情報を可視化・分析することが生徒の理解を深め、主体的な学びを促す有効な手段であることを説明した。その提案が契機となり、同校で ArcGISを用いた授業が実践されることになった。
授業ではまず、GIS の種類や活用方法を紹介し、事例および ArcGIS のデモンストレーションを通じて理解を深めた。その後、合計 4 コマにわたり ArcGIS Online の基本操作を実践する時間を設け、生徒が自ら地図を操作しながら学びを体験できる環境を整えた。

輪島高校での授業は、1 年生約 80 名を視聴覚室に集めて実施された。まず 2025 年(令和 7 年)7 月に導入として「GIS とは何か「」どのような仕組みで活用されているのか」を解説し、世界や国内での活用事例、そして ArcGIS のデモンストレーションを通じて生徒に GIS の意義を伝えた。
その後、同年 9 月に ArcGIS Online を用いた実習を合計 4 コマ(1 コマ 45 分)にわたり展開した。

授業の前半では ArcGIS Online の基本的な操作方法を学び、地図上でレイヤーを追加・保存・表現する手順を実際に操作した。後半では現地調査用アプリである ArcGIS Survey123 を活用し、フィールド調査のデータ入力から地図への反映までを体験した。
授業では「高校生でも理解しやすい構成」を重視し、テキストを A3 用紙 1 枚にまとめ、手順や情報量を最小限に抑える工夫を行った。
その結果、GIS を初めて扱う生徒でも操作につまずくことなく学びを進めることができた。また、約 80 名が同時にインターネットに接続する際の通信負荷が懸念されたが、3 人 1 組のグループで代表者のみが操作する方式を採用することで問題を解消した。これにより、生徒全員が協働的に学習に取り組み、ArcGIS の有効性を実感できる授業となった。操作が複雑とみなされがちな GIS において、こうした工夫は円滑な学習環境を実現する上で非常に重要なポイントである。

授業風景
授業風景

授業後の生徒からは前向きな感想が多く寄せられた。
「探究マップが意外とわかりやすかった」「地図でいろいろなことが分かって楽しかった」との声や、「ボタンひとつで衛星画像に切り替わるのがすごい」「田畑の位置が一目でわかって驚いた」といった GISの機能への感嘆があった。また「生活や防災にも役立ちそう」「正しく使いこなしたい」といった将来への期待も聞かれ、GIS の可能性を身近に感じる機会となったことがうかがえる。

総合的な探究の時間を通して地域の活性化を目標に探究学習を展開してきたが、課題を設定する場面でも仮説を立てる場面でも根拠に曖昧さがあることを否めなかった。今回、GIS 利用支援プロジェクトを通して GIS が活用されている事例を知ったり、実際に触れてみたりすることで、生徒たちは改めて情報の大切さを知り、使ってみたいという意欲が高まっていた。今後、科学的根拠に基づく思考が期待できると感じている。

また、今回授業を実践した ESRIジャパンの講師は、以下の通り授業を振り返った。
「高校生への GIS 研修は初めてで、難しく感じてしまうのではと心配しましたが、多くの生徒が興味を持って操作し安心しました。地元の GIS データを重ねて身近な地域を拡大し、自分の感覚と照らし合わせて理解する様子から、探究学習に非常に適していると実感しました。先生方も熱心に取り組んでいただき、協働的な学びが広がったのも大きな成果です。 Wi-Fi 帯域の課題はグループ操作によって解消でき、ArcGIS Online の利便性やクラウド上の多様なデータ活用の可能性も確認できました。今後は Web マップ作成の自由度をより強調できる教材構成や、研修準備の標準化を進めることで、さらに効果的な授業が実現できると感じました。」

授業風景
授業風景

今後について、寺田氏は以下のように述べている。「複数レイヤーのデータを統合し分析することで、分析能力や問う力を高めていきたい。特に、震災後急速に変化する輪島市でフィールドワークを実施し、必要な情報を集め、地図化、分析することで生徒たち自ら問いを立てられるようにし、その問いを大切に探究学習を充実させていきたい。GIS を用いた科学的な根拠をもとに展開される活動を通して輪島市の復興に寄与し、『自分たちにもできる』ことを認識してほしい。」

寺田氏

プロフィール

石川県立輪島高等学校 寺田 知絵 氏

石川県立輪島高等学校 寺田 知絵 氏

掲載日

2026年1月14日