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GIS が支える福岡県の鳥獣被害対策

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GIS が支える福岡県の鳥獣被害対策

福岡県

スマートな情報共有で鳥獣被害の軽減と安全な地域づくりを実現

  • 野生鳥獣に関する多様なデータの統合と可視化
  • 収集されたデータを住民にも公開

福岡県では、野生鳥獣による農作物への被害軽減に積極的に取り組んでいる。農林水産省の調査によれば、2023 年度(令和 5 年度)の全国の農作物被害額は 164 億円を超え、そのうち福岡県は全国で 2 番目に多い約 6 億円に上った。特にイノシシやシカ、サルによる農作物の食害は農家の営農意欲を低下させる要因であり、被害額以上に深刻な影響を地域に及ぼしている。
従来、捕獲や被害の情報は市町村単位で Excel に集約され、県を経由して国へ報告されてきた。しかし、捕獲場所は 5 km四方メッシュ単位で記録されるにとどまり、正確な位置把握が困難であった。また、膨大な報告作業は自治体職員の負担となり、蓄積されたデータも十分に分析・活用されていなかった。
こうした課題を解決するため、福岡県は 2024 年度(令和 6 年度)に、ESRIジャパンと連携し「鳥獣被害対策システム」を構築した。本システムは、GIS を基盤とし、捕獲や目撃情報を地図上で一元的に管理・可視化することで、県・市町村・県民が情報を共有できる新しい仕組みである。

第一に、捕獲位置情報の粒度が粗いことが課題であった。5 kmメッシュ単位の記録では、農地や集落に迫る鳥獣の動きを正確に把握することができず、効果的な防止策の検討が難しかった。

第二に、関係者間の情報共有の制約である。市町村や県が集計した情報は狩猟者や農家に十分に還元されず、現場の対応に活かされにくい状況にあった。

福岡県が ArcGIS を選択した理由は次のとおりである。

情報の一元管理と可視化:捕獲や目撃の情報を地図やグラフで即時に可視化できること。初心者でも直感的に状況を理解できる。

柔軟なシステム構築:クラウド型の ArcGIS Online に付属するさまざまなノーコードアプリを組み合わせることで、県や市町村の環境に応じた柔軟な運用が可能である。

柔軟な外部連携:ArcGIS はさまざまな外部システムと API を通じて柔軟に連携できるため、既存の業務システムやアプリとの統合が容易である。

目撃・被害情報投稿アプリ
目撃・被害情報投稿アプリ

1. 目撃・被害情報投稿アプリの活用
県民がアプリを通じて、鳥獣の目撃や被害状況を投稿できるようになった。投稿された情報は ArcGIS Online 上のダッシュボードに反映され、誰でも地図上で確認できる。これにより、地域住民も鳥獣被害対策の一員として参加する仕組みが整った。目撃情報を共有することで、地域全体が一体となって自衛につなげることができる。

2. 5km メッシュ捕獲情報の可視化
従来、市町村から県へ提出されていた捕獲報告(Excel ファイル)では、位置情報がメッシュ番号のみで記録されていたため、エリアごとの捕獲傾向を直感的に把握することが困難だった。
しかし、メッシュ番号と地図を紐づけて可視化することで、捕獲地点の分布や傾向を直感的に把握できるようになり、地域ごとの被害状況をより正確に理解できるようになった。

5km メッシュごとの捕獲情報
5km メッシュごとの捕獲情報

3. 豚熱感染確認区域の可視化
豚熱感染確認区域(発生地点から半径 10km 圏内)も地図上に可視化される。これにより、該当エリアで捕獲されたイノシシが適切に処理されるよう、狩猟者や関係者に対して注意喚起を行うことが可能となった。

豚熱発生地点から半径 10 km圏内
豚熱発生地点から半径 10 km圏内

4. ダッシュボードによる情報共有
市町村や県の職員は、集約された情報を地図やグラフで閲覧可能である。たとえば、日付別・地域別・獣種別の発生状況を分析することで、被害が集中するエリアを把握できる。また、狩猟者や農家に対しても、わかりやすく情報を還元できるようになった。

鳥獣被害対策システム(県民向け)
鳥獣被害対策システム(県民向け)
鳥獣被害対策システム(県民向け)

現状では、福岡県からの情報発信が中心となっているが、今後は各市町村においても捕獲登録アプリなどを導入し、登録された情報がシームレスに福岡県のシステムと連携することが期待される。
これにより、県全体でより効果的かつ実効性の高い鳥獣被害対策の実施が可能になると考えられる。
さらに、本システムは農作物被害の軽減にとどまらず、安全で持続可能な地域づくりを支える重要な基盤としても期待されている。