南海トラフ巨大地震に備える! 計測用航空機で初動時の広域災害情報を素早く収集・共有する最新システム
株式会社テラ・ラボ
大規模災害に備えた長距離無人航空機による災害対策情報支援システムの構築を目指して
課題
- 他組織との迅速な連携を確保するための研修や訓練の実施
- 災害発生初動期における迅速な情報収集と共有の体制整備
- 効率的な飛行計画と解析プロセスの簡易化、高速な解析環境の整備
導入効果
- 航空写真計測データを迅速にデジタルマップ化し、共有・解析が可能
- ArcGIS Pro を活用して短時間で必要なデータを取りまとめ、迅速なマップ整備を実現
- 国土数値情報やポリゴンデータを重ね合わせて情報提供し、災害対応の効率を向上
概要
株式会社テラ・ラボ(以下、テラ・ラボ)は、大規模災害に備えた長距離無人航空機による災害対策情報支援システムの構築を目指す研究開発型ベンチャー企業である。南海トラフ巨大地震に備え、計測用航空機とオペレーションセンターを名古屋空港に配置し、広域災害が発生すると同時に情報収集と共有を行い、共通状況図(COP: Common Operational Picture)の作成を行う。これにより、災害対策本部の重要な意思決定に役立てることができる。
課題
南海トラフ巨大地震は、30 年以内に 80 %以上の確率で発生すると言われている。この大規模広域複合災害では、関係者間での関連情報の共有が不可欠であるが、これを実現するのが共通状況図(COP)である。
しかし、従来の航空測量技術では、航空機の手配、写真撮影、標定、判読図化、編集を経て地図情報を作成するため、プロセスに多くの時間がかかっていた。また、被災地域の精密な写真は個人情報の観点から公開範囲が限定されていた。


災害時におけるテラ・ラボの航空機(有人・無人)による「共通状況図」の作成
ArcGIS活用の経緯
テラ・ラボの代表取締役松浦氏は、上述の課題を解決するためには GIS を導入することが有効だと考えていた。そして、GIS を用いて他組織を含めた多くの人々と情報共有するための方法を検討していた。その中でクラウド GIS サービス「ArcGIS Online」の存在を知り、クラウド上にマップを保存して URL 情報を伝えるだけで外部にすばやく地図を共有できることに感銘を受け、採用を決定した。さらに自社の災害対策クラウド情報支援プラットフォーム「テラ・クラウド」においても同様の情報共有の仕組みを実装するために、エンタープライズ GIS サーバー「ArcGIS Enterprise」を導入した。その後、ArcGIS をプラットフォームにしたデジタルマップを活用して、災害対策の効率化を図っている。
課題解決手法
テラ・ラボは、計測装置を搭載した検証用航空機(有人)や、開発が進む長距離無人航空機「テラ・ドルフィン」を活用し、有事・平時に備えるために災害対策オペレーションセンターを 2024 年(令和 6 年) 12 月に名古屋空港の旅客ターミナルビル内に開所した。
南海トラフ地震を想定し、他組織といち早く連携ができるよう平時から研修や訓練を通じて、災害時に実効性のあるオペレーションを目指している。
災害が発生した初動期においては、迅速な情報収集と共有が求められる。そのため、災害対応オペレーションセンターでは、効率的な飛行計画、解析プロセスの簡易化、ワークステーションの高速解析などの環境を整備した。大規模な災害の発生とともに、航空機による情報収集を行い、南海トラフ巨大地震の被災が想定される市区町村の危機対策部門や消防組織へ、プッシュ型で情報提供が行える体制を整えている。

南海トラフ地震を想定し、他組織といち早く連携ができるよう平時から研修や訓練を通じて、
災害時に実効性のあるオペレーションを目指す

航空機等による情報の三次元解析を行い、広域災害の初動期の現況図をクラウド上の
GIS を活用し迅速に情報共有を行う
効果
ArcGIS は、広域災害時に航空写真計測データをデジタルマップ化し、クラウド上で迅速に共有・解析するための基盤を提供している。これにより、現場スタッフは ArcGIS Pro を活用して短時間で必要なデータを取りまとめ、迅速なマップ整備を実現できる。さらに、ArcGIS Enterprise は国土数値情報や民間企業が提供するポリゴンデータを重ね合わせて情報提供することで、共通状況図の基盤を構築し、災害対応の効率を向上させるための役割を果たしている。たとえば、2021 年(令和 3 年)7 月に静岡県熱海市で発生した土砂災害では、ArcGIS を基盤とした GIS プラットフォームを活用し、被災状況を迅速に把握し、共通状況図を作成・共有した。このプラットフォームは ArcGIS Online、 ArcGIS Enterprise、ArcGIS Pro を組み合わせて構築されており、クラウド上でのデータ共有と情報連携を実現している。


今後の展望
松浦氏は、GIS を用いて他組織と情報共有することの重要性を強調しており、ArcGIS Online のクラウド GIS サービスを活用することで、外部に地図を共有する際の利便性を高く評価している。また、災害対策クラウド情報支援プラットフォーム「テラ・クラウド」においても、有事において迅速に情報収集を行うためには、計測用航空機の飛行の意思決定を社内で行う必要があり、独立した財務体制を整える必要がある。そのため、平時におけるビジネスモデルとして、地域に特化した航空測量、広域インフラ調査、デジタルマップアーカイブビジネスの事業化を目指し、持続可能な災害支援体制を構築していきたいと考えている。
プロフィール

代表取締役 松浦 孝英 氏

2026年1月8日
