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河川管理の DX - 荒川下流域のデジタルツインを構築

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河川管理の DX - 荒川下流域のデジタルツインを構築

国土交通省関東地方整備局 荒川下流河川事務所

日本初の 3D 河川管内図および 3D 洪水浸水想定区域図を一般公開

  • さまざまなフォーマットのデータを取り込んで表現できる
  • 3D マップを簡単に Web で一般公開でき、所内での情報共有にも活用できる

国土交通省関東地方整備局 荒川下流河川事務所(以下、荒川下流河川事務所)は、荒川の下流部約 30km において、洪水・地震から街を守る治水対策、良好な環境の保全、維持管理、地域連携の推進を主要な事業としている。

同事務所では、健康な川づくりを目指すことを運営方針として、以下の 3 つの柱(ミッション)を推進している。

荒川下流河川を俯瞰からとらえた写真

これらの活動を強化するための施策として、誰でも荒川の現状を正確に把握できる「Arakawa Digital Twin」(あらゆる荒川流域に関する情報を 3D モデルをベースに一元化)の構築を進めており、その先鞭となる成果が本稿で紹介する 3D 河川管内図と 3D 洪水浸水想定区域図である。これらを一般公開したことにより TV や新聞などの各メディアで取り上げられ、その有効性が広く知れ渡るようになった。今後さらに有益な情報提供を行い、行政サービスの向上や流域のあらゆる関係者との協働を促進していく。

荒川下流河川事務所では、国土交通省が掲げるインフラ分野の DX 推進を背景として、誰が見ても理解できる荒川の空間を表現することを目指していた。河川管理をするための河川管内図は 2 次元の図面で作成されていたが、「橋梁下の堤防を表現できず堤防の形状が把握できない」、「湾曲する地形の表現が困難」などの問題点がある。そこで、現状を正確に表現できる 3 次元の河川管内図の整備が命題となった。つまり荒川のデジタルツインの構築である。併せて、さらなる行政サービスの向上、荒川下流で活動する協力団体やサポーターとの連携強化、職員の業務効率化を促進する必要があった。これらに対応するには GIS を活用することが有効であると考えていた。

3D 河川管内図を作成し共有するための GIS プラットフォームとして ArcGIS を導入することにした。導入の決め手となったのは以下の点である。

2021 年(令和 3 年)7 月 5 日、荒川下流河川事務所は荒川下流域の状況を詳細に把握できる「Arakawa Digital Twin online - 荒川 3D 河川管内図」を公開した(3D 河川管内図の公開は日本初)。河川の地形モデル、堤防やインフラ構造物の点群データや BIM/CIM モデル、周辺地域の 3D 都市モデルなど、高精度な河川管理を実施するための各種データを整備し、これらを集約した 3D マップを Web アプリから誰でも閲覧できるようにしたのである。

さまざまなデータが存在し、そのデータフォーマットも異なっていたが、デスクトップ GIS アプリ「ArcGIS Pro」を用いて加工や調整を行い、ひとつの 3D マップ上に表示できるようにした。そして、その 3D マップをクラウド GIS サービス「ArcGIS Online」に共有し、Web 上で閲覧できるようにした。ArcGIS Online では、デフォルトのマップビューアーを提供しているが、アプリ構築ツールを用いてカスタム Web アプリをノンプログラミングで作成することもできる。3D 河川管内図については、「ArcGIS Web AppBuilder」を使用して Web アプリを作成した。データの中には専用ソフトが無いと見られないものもあったが、ArcGIS を活用することによって誰でも閲覧できるかたちで一般公開することができたのである。さらに、その後も流域治水(流域に関わるあらゆる関係者が協働で治水対策を行う取り組み)の一環として、流域治水対策プロジェクト(東京ブロック)の対策状況を公開するなど、随時更新を進めている。

3D 河川管内図に含めるデータを検討する過程で過去に取得したテクスチャ付き 3D 都市モデルを表示した際に、その視認性の高さから「この 3D 都市モデルと 3D 表示した洪水浸水想定区域図を重ね合わせて表示できないか」という話があがった。それが発端となり、2021 年 6 月 28 日に公開されたのが「Arakawa Digital Twin online - 荒川 3D 洪水浸水想定区域図 ~ 3D 洪水ハザードマップ~」である。この Web アプリは「ArcGIS Experience Builder」を使用して作成され、2D マップと 3D マップを連動して表示することができる。想定される浸水状況を建物と重ね合わせて 3 次元で表現することにより、自分が住んでいる場所の洪水リスクを直感的に把握できるようになっている。

3D 河川管内図および 3D 洪水浸水想定区域図を一般公開したことにより、TV、新聞、ニュースサイトなどのメディアに取り上げられ、その取り組みや有効性を広く知ってもらえることになった。他の自治体から「うちでも同じようなことができないか」という問い合わせや、一般の人からも「すごくわかりやすい」との声や取り組みに共感してくれる声があった。特に荒川 3D 洪水浸水想定区域図は見た目にわかりやすく、すでに自治体広報や地域防災で活用され、関係者や周辺住民の防災意識の向上に役立つことができた。

対外的だけでなく所内においても効果があらわれている。職員の GIS に対する理解が進んだことにより、既存のデータについて「こんな使い方ができないか」、「こんな見せ方ができないか」などアイデアや活用イメージが湧いてくるようになり、情報発信力が向上した。情報発信をする際に重要となるのがデータの表現力であるが、ArcGIS を活用することで効果的なデータ表現を簡単な操作で行えるようになり、広報ツールとしての役割も果たしている。

3D 河川管内図の公開まではデータを表現することに注力してきたが、今後さらに有益な情報を提供して行政サービスの向上につなげていく。例えば、市民が出張所の窓口に出向かないと入手できなかった情報を Web で公開するサービスなどを検討している。また、流域治水を促進していくためにも、河川管理者に問い合わせをしなくても関係者自らが荒川に関するデータを閲覧できるよう情報を提供していくことを目指している。さらに、所内においては GIS を最大限活用し、職員のさらなる作業効率化・作業時間の短縮に取り組んでいく。

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掲載日

2022年1月11日