GIS 基礎解説 > 画像関連 > マルチスペクトル画像

GIS 基礎解説

マルチスペクトル画像

 

マルチスペクトル画像とは

複数の波長帯の電磁波を記録した画像を、マルチスペクトル画像と呼びます。私たちが目で認識できる光(可視光線)も電磁波の一種であり、電磁波は波長の違いによりさまざまな呼称や性質を持ちます。

マルチスペクトル画像には、人の目で見える可視光線の波長帯の電磁波だけでなく、紫外線や赤外線、遠赤外線などが該当する、人の目で見えない不可視光線の波長帯の電磁波も記録されます。

マルチスペクトル画像のイメージ

マルチスペクトル画像のイメージ

スペクトル反射特性

地表の物体は、種類によって波長帯ごとに電磁波の反射の強さが変化します。これを、スペクトル反射特性と呼びます。たとえば、「水」は波長が長くなるにつれ反射が弱くなり、「土」は波長が長くなるにつれ反射が強くなる傾向があります。また「植物」は、光合成色素の働きで可視域の電磁波を吸収(反射が弱くなる)し、近赤外域の電磁波を強く反射する特性を持っています。

土、植物、水のスペクトル反射特性

異なる波長帯の電磁波を記録するマルチスペクトル画像は、このような物体のスペクトル反射特性を把握するために必要なデータと言えます。なお、マルチスペクトル画像は異なる波長帯の電磁波を「バンド」として保持しますが、センサーにより各バンドが対応する波長帯の域は異なります。右の表は、Landsat 7とLandsat 8の各センサーにより取得されるマルチスペクトル画像のバンド構成の一例です。

マルチスペクトル画像の活用:正規化植生指数(NDVI)

マルチスペクトル画像の持つ異なる波長帯の情報を用いて演算し、特定の地表の物体の特徴をうまくとらえることができます。これを、バンド間演算と呼びます。たとえば、「近赤外域のバンドの値」を「可視域のバンドの値」で割る計算を考えてみましょう。この場合、スペクトル反射特性により植物の部分は 1 を大きく超える値を、水の部分は 1 より小さな値を示す、2 つの地物の特徴を抽出した結果を得ることができます。これはバンド間演算の「比演算」という手法の単純な一例ですが、バンド間演算にはさまざまな手法があります。

バンド間演算の代表的なものに「正規化植生指数」の算出があります。正規化植生指数(NDVI:Normalized Difference Vegetation Index)は、植生の有無・活性度を表す標準化された指標であり、前述した植物のスペクトル反射特性を生かしたものです。

NDVI の式は以下の通りです。 NDVI の値が高いほど植物の活性度が高いことを表しています。

NDVI = ((IR – R) / (IR + R))

IR = 近赤外波長帯のピクセル値

R = 赤色の波長帯のピクセル値

NDVI は、世界規模での干ばつや農業生産量のモニタリングや予測、火災危険ゾーンの予測支援や砂漠化の把握などに頻繁に使用されています。

衛星画像の前処理

植物のスペクトル反射特性

トレーニング サンプルの抽出

NDVI の算出結果の例(緑の部分は NDVI の値が高いところ、赤の部分は低いところ)

ArcGIS でマルチスペクトル画像を活用するには?

上記で紹介した NDVI の算出は、ArcGIS for Desktop の [画像解析] ウィンドウで簡単に実行することができます。また、NDVI 以外のバンド間演算、その他マルチスペクトル画像を活用した分析に関しては、ArcGIS Spatial Analyst エクステンションが提供する各解析のジオプロセシング ツールで実行することができます。