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事例

短期間で森林整備状況のデータ化と活動内容の公開を実現

麻布大学・NPO法人 緑のダム北相模

 

森林整備状況・植生調査結果のデータ化にGIS必須

森林整備作業の様子
森林整備作業の様子

課題

導入効果

 

概要

麻布大学と特定非営利活動法人 緑のダム北相模は、中学校や学生団体とともに相模湖周辺で森林整備を行っている。緑のダム北相模(代表理事:石村 黄仁氏)は、2005年に国際認証機関FSC※の認証を取得した。今後のFSC認証の更新のため、そして、森林整備状況のデータ化、植生調査結果のデータ化のためにはGISの利用が必須と考え、さらに、本活動をアピールするためには、簡単に短期間でWeb公開できるArcGIS Onlineが最適であった。2014年6月にGIS利用開始後、すぐに定例活動の様子をストーリーマップとして公開したほか、中学生とともに間伐データや植生データを収集しFSC認証の更新用としてデータの蓄積も始め、これもストーリーマップとして公開するなどGIS導入の成果が出始めている。

※FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)は、木材を生産する世界の森林と、その森林から切り出された木材の流通や加工のプロセスを認証する国際機関。その認証は、森林の環境保全に配慮し、地域社会の利益にかない、経済的にも継続可能な形で生産された木材に与えられる。このFSCのマークが入った製品を買うことで、消費者は世界の森林保全を間接的に応援できる仕組みである。(出典:WWFウェブサイト)

背景

植生調査の様子
植生調査の様子

麻布大学では、2013年に緑のダム北相模と包括協定を締結しており、杉並区立高井戸中学校の地球環境部、学生団体「ForestNova☆」などの団体と協働で森づくりボランティアによる地域活性化や小中高等学校への環境教育活動を行っている。緑のダム北相模は、東京や神奈川など都市市民の森林ボランティア活動のグループである。1998年に活動を開始し、2002年にNPO法人登録を行った。「森林破壊という負の遺産を子孫に残してはならない」をモットーに、相模湖周辺で森林整備を行っている。

麻布大学 生命・環境科学部の原田 公 専任講師の研究室に所属している学生が、学生団体「Forest Nova☆」の会員であり、森林調査等へGISが活用できると考え、研究室でArcGISを導入することになった。緑のダム北相模が管理している「相模湖・嵐山の森」が、2005年に国際認証機関FSCの認証を市民ボランティア団体として日本で初めて取得し、今後のFSC認証の更新のためにGISを活用して整備状況をデータ化することになった。また、ArcGIS Onlineにより、NPO活動や森林整備状況を専門知識がなくても簡単にWebで公開できることもGIS導入の決め手となった。

 

導入手法

まず最初に、定例活動の様子を写真とともにArcGIS Onlineのストーリーマップとして公開することから始めた。簡易GPSレシーバーで位置を特定し、作業風景の写真とリンクした。次に、FSC認証の更新のために、2014年6月から毎月、間伐地点のGPSのデータに加え、その画像、樹木番号、樹高、胸高直径、切り口の直径を記録、さらに4mの丸太にした際の元口(根もとに近い方)、末口(根もとから遠い方)の直径もデータとして残した。この間伐データの取得は主に、杉並区立高井戸中学校の地球環境部に所属している生徒たちが「なみすけの森づくりプロジェクト」として、顧問で緑のダム北相模の理事でもある宮村 連理 先生指導のもとに行っている。さらに、植生調査もすすめており、2005年FSC認証取得時に植生調査をおこなった地点と同じ地点で調査を行い、この10年間で植生の変化の有無なども、GISデータとして残している。

定例活動の様子をストーリーマップとして公開
定例活動の様子をストーリーマップとして公開

 

成果

2014年6月からArcGIS Onlineのストーリーマップを利用して定例活動の様子を公開している。マップでは、整備作業地点と作業風景の写真が閲覧できるほか、作業風景の動画も公開している。中学生がデータの取得をした間伐データも、同様にストーリーマップとして公開している。植生調査についても、調査地点の写真と植生(コナラ林や、アラカシ林など)を記載して公開中である。ストーリーマップは、緑のダム北相模のホームページ内にある定例活動報告のページからリンクされている。活動結果や調査結果を簡単に、かつ短期間でWebに公開できたことは大きな成果である。

間伐データの公開
間伐データの公開

まとめ

GISの今後の活用方法の1つとして、紙で持っている森林簿をGISデータ化して重ね合わせ表示をしたいという要望がある。今後は、森林総合研究所の専門家からアドバイスをもらいながら、GISの活用をすすめる予定だ。「今、人工林は一番良い時期なのに、使われずに老朽化してしまう。今こそ、日本の人工林を使うことをアピールしなくては」と、日本の森林破壊が進んでいる切実な問題を石村氏は指摘する。「小規模な森林組合でも、ArcGIS Onlineなら十分に活用できることを示せたら面白いし、これでアピールして日本の森林をもっと使ってもらいたい」

緑のダム北相模の活動にご興味のある方は、毎月2回行っている定例活動に一度参加してみてはいかがだろうか。

プロフィール

相模湖・嵐山の森での定例活動集合写真
麻布大学・NPO法人 緑のダム北相模

関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2015年1月16日