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事例

知られざる歴史・文化・自然遺産を Web GIS で世界に向け発信

ブルガリア アセノグラード市

 

Web GIS で効果的に PR することで地域活性化を目指す

概要

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Web GIS であるジオポータルでは、
アセノグラード地域の文化、歴史、
自然遺産のバーチャルツアーと
3D モデルが閲覧できる

バルカン半島の中心に位置するブルガリアは、長く豊かな歴史を持ち、ヨーロッパにおけるいくつかの古代文明発祥の地である。中でも、ブルガリアの南中央地域にあり「ロドピ山脈への聖なる扉」で知られるアセノグラートは、中央ブルガリアからロドピ山脈、エーゲ海につながる理想的な立地と、山脈と平地というユニークな組み合わせから、古代から人々が定住してきた地だ。

このアセノグラードに多く存在する隠れた名所の認知度アップを目的に、アセノグラード市は名所情報を一元管理することができる観光名所 GIS と、効果的なプロモーションが期待できる Web GIS アプリケーションを構築し、地域の活性化に役立てている。

背景

アセノグラードには、国内で最も古くて有名な文化遺産、歴史遺産、自然遺産が数多く存在する。聖地と呼ばれる場所が集中する地域の 1 つでもあり、4 つの男子修道院、33 棟の教会、60 棟のチャペル、そして多くの「神聖な場所」が存在する。この多くの名所を地域活性化の切り札として魅力ある人気の観光地に変えるべく、アセノグラード市では課題の洗出しに取り掛かった。

主な課題の 1 つは、自然遺産、歴史遺産、文化遺産の多くがほとんど知られていないことだ。観光客の分布も様々で、観光地の中には頻繁に人々が訪れる場所がある一方、全く観光客に知られていない場所もある。これは、地理的視点による観光業の開発が行われていないことが原因であると分析された。また、2 つ目の課題として、名所の情報が市役所内で分散して管理されており、非効率的な観光業マネジメントにつながっていることもわかってきた。

アセノグラード市は、課題の解決と名所を活用した地域活性化を実現するため、ヨーロッパ地域開発運営計画が出資している「ロドピ山脈アセノグラード聖なる扉プロジェクト」の一端として、観光名所 GIS の開発プロジェクトを開始した。GIS システムの開発と導入は、Esri プルガリアが担当することになった。

導入手法

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アセン要塞地区にある 12 ~ 13 世紀の教会

Esri ブルガリアは、名所に関する情報や、市役所、市民、民間企業、第三者機関の間での情報の共有、アセノグラード地域で改善が必要とされる事柄の分析を行った。分析結果を基に、ArcGIS を利用した空間情報と属性情報の収集、統合、保存、編集、分析ができる観光名所 GIS を構築した。また、機能の一部として、名所の効果的なプロモーションを目的とした Web GIS アプリケーションが組み込まれた。

分散していた名所情報はデータベースで一元管理し、デスクトップユーザである市職員は市役所内の LAN を通して、またその他の関係機関のユーザはブラウザを通して、アクセス権に応じた機能の利用と情報の閲覧が可能になった。観光名所 GIS の導入により、観光マネジメントプロセスの可視化と、市役所と関係機関の間の効果的なやり取りが確立された。

観光名所 GIS は、2 種類のサブシステムとシステム管理用モジュールから構成されている。サブシステムの 1 つである「観光名所」は、すべての市職員が使える Web アプリケーションで、空間データや属性データの入力と分析、レポート作成を行うことができる。また、もう一方の「データ公開」は、観光名所に関する情報をインターネットに公開するためのものだ。

成果

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アセン要塞の 360 度バーチャルツアー

一般の人々は、名所のプロモーションを目的とした Web GIS アプリケーションであるジオポータル(gis.assenovgrad.com/tourism)から、アセノグラードの文化遺産、歴史遺産、そして自然遺産に関する豊富な情報を閲覧することができる。ジオポータルでは、名所までのルート検索をはじめ、歴史や伝説の紹介、美しいビデオと写真が閲覧できるほか、すべての名所の 3D モデルを見ることができる。また、プロジェクトの一環として、アセノグラードで最も美しく有名な観光地の一つであるアセン要塞の 360 度バーチャルツアーを構築し、ジオポータルに統合した。バーチャルツアーでは、マウスクリックでズームやオール アラウンド ビューが可能で、実際の観光をしているような感覚が得られる。このジオポータルを公開したことで、ブルガリア国内のいくつかの観光地の知名度が上がり、地域活性化につながりつつある。

まとめ

情報・コミュニケーションテクノロジー開発の分野で大きな功績をあげた団体に贈られるブルガリア情報技術協会主催の授賞式が、2013 年 1 月 22 日に行われた。市政管理部門においてアセノグラード観光名所 GIS が受賞し、エミル・カライヴァノフ市長へ賞が授与された。「アセノグラード観光名所 GIS は、国際的にみても先進的な事例といえるだろう。ブルガリアの観光地を認知してもらうための新しい試みである」と市長は語った。

 


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掲載日

  • 2013年12月24日