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事例

ArcGIS Image for ArcGIS Online で天然資源の迅速なモニタリング

スカイテック社

 

スタートアップ企業が大手企業と同等の画像解析能力を実現

概要

米国テネシー州チャタヌーガに拠点を置く、地理空間とリモートセンシングのスタートアップ企業スカイテック社は、無人航空システム(UAS)、リモートセンシング、そして GIS 技術を活用し、土地保全の推進に注力している。

同社は天然資源の持続可能性を視野に入れ、2019 年(令和元年)に重要資源をモニタリングするためのアプリ「Ranger」を、ArcGIS Web AppBuilder を使って開発した。

このアプリは、天然資源保護の優先度の高いエリアが縮小や消滅など変化しているかを特定でき、ドローンとプラネット・ラボ社からほぼ毎日送られる衛星画像を使って、契約者の敷地を遠隔監視する。

Ranger アプリは、デスクトップとタブレットでの使用に最適化されており、すでに全米で 50 万エーカー以上を監視している。

課題

契約者に適切な情報を提供するには、画像管理・解析で多くのステップを踏まなければならなかった。衛星画像を収集し、ArcGIS Pro を使ってモザイク処理をした後、タイルパッケージを生成し、それをタイルサービスにするという長いプロセスだ。

小さなスタートアップ企業であるスカイテック社では、大企業のようなサーバーやクラウドなどのインフラリソースが限られているため、新しいインフラモデルを構築する必要があった。

同社は IT 運用の専門家ではなく、科学者から構成された小規模なチームであるため、効率的な画像管理や共有のためのインフラを一から構築せずに簡単に導入でき、かつ顧客の需要の増加に合わせて拡張できる、新しいクラウドベースのソリューションを模索していた。

ArcGIS 採用の理由

ArcGIS Image for ArcGIS Online(以下、ArcGIS Image Online)は画像やラスターコレクションのホスティング、分析、ストリーミングを行うための SaaS である。

同社は、顧客が必要とする画像の数量を「すぐに」処理できる、ArcGIS Image Online を採用した。

同社はラスターデータをテストした際、ラスター関数と呼ばれるリアルタイム画像処理アルゴリズムを活用して、変化のあった資源の箇所を強調するカスタムラスターチェーンの作成に成功した。それはまさに同社が求めていた、変化を強調して検出するために必要な機能であったと最高技術責任者であるアンディ・キャロル氏は述べた。

さらに、ArcGIS Image Online のセットアップは非常に簡単かつ直感的に操作でき、契約後 5~6 週間で本稼働させることができた。


衛星画像からなる変化検知モデルとドローンによる LiDAR/画像処理製品

課題解決手法

ArcGIS Online にイメージレイヤーとしてアップロードされるマルチスペクトル画像は視覚化と分析の両方に使われる。

同社は顧客がプラネット・ラボ社から GeoTIFF 形式で受け取った画像をアップロードする過程で、自動的に 1 つのイメージレイヤーを作成し、それと同時に分析チームが作業できるようにアプリを設定した。すなわち、Ranger アプリ内で、顧客がタイルイメージレイヤーを確認するかたわら、ダイナミックイメージレイヤーを作成し、複数の処理を走らせることを可能にした。

「1 枚のレイヤーを本番で使いながら、同時に派生プロダクトを生成できるのはタイルサービスではできない。画期的なことだ」と氏は語る。

効果

ArcGIS のリアルタイム処理機能により、冗長なストレージ消費を回避できただけでなく、変化抽出にかかる時間を大幅に改善できた。境界侵犯や違法伐採など、保全地役権の違反の可能性がある場所をすぐに画像解析し、たった 1 時間の電話対応ですべて完了させた例もある。

ArcGIS Image Online を使用することで、6~7 ステップあったプロセスを、アップロードとラスター関数の実行という 2 ステップに短縮することができ、プロセス全体の合理化に貢献した。これにより顧客への納品もリクエストを受けてから「24 時間、翌日配信可能」な状態に持っていくことができた。

同社は ArcGIS Image Online を導入して 1 年足らずだが、操作感もユーザーフレンドリーで習得が容易であったため、迅速な市場投入が可能となった。また、顧客からデータアナリストまで、社内外での人材育成にかかる時間が短縮されたなど、さまざまなメリットを享受している。

さらに、ArcGIS Image Online のセキュリティと信頼性により、同社は煩わしいインフラ整備ではなく、より技術力の向上に専念できる環境になった。たとえば、2 つの異なる ArcGIS Online 組織間にゲートウェイを開設する場合でも、標準のセキュリティ機能のみで、データへのアクセス者を簡単に制御できる。

「ArcGIS Image Online はデータサイエンティストチームがさまざまなモデルを構成したり、マルチ処理をしたりする際に対応できる力を与えた。そして ArcGIS Image Online は SaaS として提供されるクラウドにより高い価値をもたらしている」と氏は ArcGIS Image Online のカスタマイズ機能を高く評価した。

シニアデータアナリストのマインダーマン氏は、「包括的な画像ソリューションである ArcGIS Image Online は、スカイテック社を大規模な組織と同等の能力を持てるようにしたゲームチェンジャーだ」と述べた。

今後の展望

同社は ArcGIS Enterprise の全面的な利用に向けても取り組んでいる。ArcGIS Enterprise のオプションである ArcGIS Image Server で同様の機能を提供することができるため、このソリューションですぐに顧客へのサービスを開始できる、とキャロル氏は言う。

「ArcGIS Image Online のおかげで、独自の Image Server を導入するオプションがありながら、今日から顧客へのニーズに応えるサービスを提供できるようになった。バックエンド、データベース、アーキテクチャ、サーバーのセキュリティなど、すべてを気にする必要がない。そこがこの製品の優れている点だ」。


Rangerアプリ
ArcGIS Image for ArcGIS Online で
ホストされている地役権監視マップ


ラスター関数の適用による派生プロダクトの生成

関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2023年1月30日