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事例

ArcGIS Onlineを利用した行政情報の配信による市民サービスの向上と市の魅力発信を目指して

千葉県 船橋市

 

庁内型 GIS と公開型 GIS を連携データ作成、管理、公開、利用の運用フローを確立

ArcGIS プラットフォームの特徴

  • 庁内のデータを一元管理し、ほぼ全部署で横断的に利用
  • 各種コスト(データの重複投資、職員の人件費、外部委託費用 など)の削減
  • 公開型 Web マップアプリケーションを職員がプログラミングなしで作成

概要

船橋市役所
船橋市役所

千葉県北西部、東京から 20km 圏内に位置する船橋市は、鉄道を中心とした発達した交通網を擁し、東京湾から北に向かって工業地、商業地、住宅地、農地が広がっている。人口は 62 万人を超え、政令指定都市を除いた市の中では最も多い人口を抱えた都市として継続的な発展を遂げている。 2000年に都市計画課が GIS を利用し始め、2013 年にアジア航測社製の ArcGIS をベースにしたパッケージ システム「ALANDIS NEO」を導入し、ほとんどの部署で GIS を利用できる環境が整っている。そして、2016 年 5 月からは、クラウド GIS サービスの ArcGIS Online を利用した市民向けの Web マップアプリケーション(以下「アプリ」)の公開を開始した。

背景

市民向けアプリの公開に至った背景は以下のとおりである。 船橋市では、地域防災計画に沿った庁内の防災訓練を年 1、2 回実施してきていたが、副市長から地図の部分について紙ではなく、GIS の使用を検討するようにとの指示が出たことと、災害発生時に市民に情報発信を GIS で行う検討をしていたこともあり、ArcGIS Online を利用した各種アプリの公開を行うことになった。

ArcGIS採用の理由

ALANDIS NEO による庁内利用に加えて、アプリの公開で ArcGIS Online を採用した理由として以下が挙げられる。

  1. 庁内で利用している GIS(AlandisNEO 及び ArcGIS for Desktop)とのデータ等の親和性が高く、職員による GIS データのアップロードが容易であり、迅速かつ正確な情報公開が可能であること。
  2. 多様な情報を各種組み合わせ、市民にとって分かり易い形で積極的に配信したいと考える船橋市にあって、ArcGIS Online は多様なアプリが用意されており、アプリの開発及び作成を外部委託することなく、職員により作成することができること。
  3. PC 用に作成したアプリが、自動で各種デバイスに対応したアプリに変換されるため、職員の事務量の削減と多様な市民のニーズに対応できること。
  4. GPS 機能を有するスマートデバイスに対応しているため、自分のいる位置を中心に地図を拡大・表示できるとともに、地図やデータを切替える事が可能であり、「位置」を基にして多くの情報を市民へ提供可能であること。

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アプリケーションの配置の考え

Webマップ公開サイトのトップページ
Web マップ公開サイトのトップページ

行政として市民に配信するアプリは、市民に“何を伝えたいか”、市民が“何を知りたいか”を追求し、明確な「主題」を持ったものとする事を市民配信の条件とし、市民配信を考える GIS データ保有課と GIS 管理者(都市計画課)が何度も協議を重ね、市民配信するアプリを作成している。また、平時から GIS 管理者は各課が保有する GIS データの把握や、潜在的に需要のある行政情報の GIS 化支援を実施し、明確な「主題」を持ったアプリ作成のため、必要であれば複数課の GIS データの重ね合わせにより、単独の GIS データの配信では得る事のできない付加価値の付いたアプリの作成を支援している。

~ 主な市民配信済みアプリケーション(平成28年12月現在) ~
① 防災ハザードマップ

災害のマップは PDF や紙で災害毎に作られており、何枚もの地図を HP 等で開いて災害情報を得る必要があった。しかし、利用する人は自分の住む地域や転居する際にその土地にどのような危険があるのかを知りたい場合が多く、「位置」を基に各種災害マップを切り替え情報を得ることができるようにした。

防災ハザードマップ
防災ハザードマップ

②遺跡と標高マップ

船橋市の標高は高くても40mに満たず、日本全体の標高図ではほぼ起伏がないものになってしまい、土地の起伏を十分に読み取る事ができない。一方、船橋市の遺跡は縄文時代のものが多いが、遺跡の多くはその地形の影響を受けている。とりわけ現在より海面が高かったことは、その当時暮らしていた人にとって住む場所を選ぶ時の最大の条件だったと考えられる。このように当時の海面の高さと遺跡の出土箇所が非常に密接な関係があるという事をこのマップにより視覚的に伝えたいと考えた。

③くらべてみよう いまむかしマップ

図書館にある明治 36 年の地図を GIS 化し、現在の地図と重ね合わせ、時間の中で変わらないものと変わってしまったものをスワイプ機能により比較できるようにした。今は失われてしまった歴史も確認でき、文化課の協力を得てそれらの解説もつけてあるので、自分の住む場所にどのような歴史があり、昔どのような地形・まちであったのかを知るきっかけにしてもらいたいと考えた。

くらべてみよう いまむかしマップ
くらべてみよう いまむかしマップ

今後の課題

市民配信アプリを増やしていくために、最も大きな課題は市民配信する GIS データをいかに庁内各課で作成し維持していくかという事である。逆に言えば各課が常に配信可能な GIS データを保有していれば、この ArcGIS Online は多くのアプリを職員の手により容易に作成することができるシステムであると言える。庁内での GIS 普及に向けた課題は、市役所全体として求められる業務の質・量ともに高くなっている。そうした中、これまでの業務スタイルを変えず、GIS データを日々の業務の中で職員が作成する事は非常に難しく、通常業務として GIS を活用し常にその鮮度と精度を保っている課がまだまだ少ないことが課題である。

QRコードを利用したマップのPR
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今後の展望

市役所は暮らしに直結した多くの情報を持っており、その大多数は「位置」情報を有していることから GIS 化が可能である。 それらの情報を行政として市民へ分かり易い形で加工して配信する事は、最も市民に近い行政機関である市役所の大きな責務であると考えており、今後も ArcGIS Online のアプリ配信により、市民の方々の安全、安心、快適、幸せの向上に一層寄与していきたいと考えている。

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資料

掲載日

  • 2017年3月2日