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事例

「環境基礎情報データベース」で再生可能エネルギーの促進と環境保全の両立を目指す

環境省 総合環境政策局 環境影響評価課

 

地域環境に配慮した再生可能エネルギー導入促進へ向けた取り組み

概要

環境省では、質が高く効率的な環境アセスメントの促進を目指して、平成 24 年度より「環境アセスメント基礎情報整備モデル事業」を開始した。本事業では、風力・地熱発電所の立地選定や環境アセスメントにおいて必要となる自然環境・社会環境に関する情報や、風力発電等に関する技術情報を集約し、事業者や自治体、地域住民などの関係者が活用可能な「環境基礎情報データベース」の整備を進めている。 「環境基礎情報データベース」で公開する情報の多くは地理空間情報として取り扱われるため、平成 24 年度には WebGIS システムの構築に着手し、平成 25 年度に運用を開始した。その後、事業の成果を中心に多くの情報を搭載してきたが、平成 27 年度にシステムを拡張・改修し、平成 28 年度は、より一層の情報の充実に向けて取り組みを進めている。

環境アセスメント環境基礎情報データベースシステム
環境アセスメント環境基礎情報データベースシステム

背景

気候変動への対応強化に向けた世界的枠組であるパリ協定が採択され、我が国においても低炭素社会の構築や再生可能エネルギーの導入促進が大きな課題となっている。

風力発電は相対的な導入コストが低く、今後さらに導入拡大が期待される再生可能エネルギーの一つであるが、騒音や鳥類への影響(バードストライク)など環境への影響が顕在化したことを踏まえ、環境への適切な配慮を確保し、環境保全と両立した導入を促進すべく、平成 24 年度に環境影響評価法の対象に追加された。

環境アセスメントでは、一連のプロセスを通じて住民の理解と受容が一層進み、環境と調和した健全な立地が促進されることが期待されている。一方で、多くの環境情報を収集し様々な関係者で共有する必要がある。再生可能エネルギーの導入促進に向けて、環境アセスメントをより効率的に進めるためには、収集すべき環境情報を一元的に提供できる仕組みを構築することが効果的である。

環境アセスメントで取り扱う情報は多岐にわたり、大気環境、水環境、土壌・地盤、地形・地質、動植物の生息地、景観等の自然環境に関する情報から、土地利用状況、河川利用状況、海域利用状況、関係する法令に基づく地域指定等の状況といった社会環境に関する情報まで、事業の立地の検討や環境への影響の検討に当たって実に多くの情報を収集する必要がある。

このような情報は、事業を計画している地域の自治体や、各分野を所管する行政機関などに広く散在しており、従来は各機関を直接訪問して収集したり、各機関のウェブサイトを閲覧するなどして収集する必要があった。また、情報の形態は、所管する機関のウェブサイトで GIS データとして公開されているものから、報告書として取りまとめられているものまで様々であり、また、集計期間や面的な集計単位が異なるケースもある。

一方で、収集しなければならない情報が多いものの、確認しておくべき情報が把握できていなかった場合には、事業計画の見直しや追加の調査が必要となる場合があり、事業を進めていく上での費用的、時間的なリスクにつながる。そのため、地域の環境情報を予め幅広く把握しておくことの重要性は非常に高い。

こうした状況に鑑み、多岐にわたる環境情報を一元的に WebGIS 情報として提供することができれば、質が高く効率的な環境アセスメントの実現に大きく貢献できることから、「環境基礎情報データベース」の整備に取り組むこととした。

導入手法

環境省では、平成 24 年度に「環境アセスメント基礎情報整備モデル事業」を立ち上げ、風力・地熱発電所の立地候補地を対象とした現地の環境調査を実施する取り組みと併せて、環境アセスメントに必要となる土地利用規制等の情報や動植物の分布情報など、全国的に整備された自然環境や社会環境に関する既存の情報を収集する取り組みを開始した。収集対象のデータには、国の関係機関や、情報を取り扱う団体によって既に GIS データとして整理されているものがある一方で、図面や書籍、報告書等の形態で整理されている情報もある。

既に GIS データとして整理されている情報としては、国土交通省による「国土数値情報ダウンロードサービス」、環境省による「生物多様性情報システム( J-IBIS )」、海上保安庁による「海洋台帳」などがある。これらの情報は、技術的には本データベースへの搭載が容易であるが、一部の情報については、環境基礎情報データベースで公開することについて著作者の承諾を得るなどの作業が必要となる場合がある。また、図面や報告書等の情報の場合には、図面から地道に GIS データを作成する作業が必要となるだけでなく、GIS では地図の拡大縮小が容易であるため、図面の縮尺に応じたデータの精度を確認し、GIS で表示可能な縮尺の設定(表示可能縮尺の制限)を検討しなければならない場合がある。

このように、収録する情報項目のそれぞれに検討課題があり、幅広い情報の GIS 化には多くの作業が必要であるため、平成 28 年度も引き続き取り組んでいるところである。

収集対象となる情報の多くは、地図上の情報、いわゆる地理空間情報として取り扱われるため、本事業を開始した平成 24 年度には情報を一元的に管理・公開するための WebGIS システムの構築に着手し、平成 25 年度に運用を開始した。その後、関連する事業の成果など、当初の想定より多くの情報を搭載する見通しとなったことから、平成 27 年度にシステムを拡張・改修した。平成 28 年度は、より一層の情報の充実に向けて取り組みを進めている。

なお、政府全体としてオープンデータ化の取り組みが進められており、地理空間情報も含めたデータ形式の標準化のガイドラインが示されたことから、今後は、国や公的機関で整備された情報の共有と活用が進むことが期待される。

環境基礎情報データベースでは、環境アセスメントで必要となる様々な情報を地図上に表示し、一元的に閲覧することが可能
環境基礎情報データベースでは、環境アセスメントで必要となる様々な情報を地図上に表示し、
一元的に閲覧することが可能

今後の展望

整備した環境基礎情報は、風力発電の環境アセスメントなど様々な場面において、事業者だけでなく、自治体、専門家、地域住民などに幅広く活用されるよう普及に努めていく予定だ。

また、現在進めている再生可能エネルギー導入に向けたゾーニングの取り組みにおいて、今回整備した情報は基盤情報として活用が可能であり、再生可能エネルギーの導入促進と環境保全の両立に取り組む自治体などにおいて活用が期待される。今後も引き続き、本データベースの活用に向けて、情報の充実、利便性の向上等の取り組みを進めていく。

プロフィール


環境影響評価課
専門官 會田 義明 氏(右)
係 長 久保井 喬 氏(左)



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資料

掲載日

  • 2017年3月30日