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コロンビアのコーヒー生産者がGISで収穫量増加を狙う

コロンビアコーヒー生産組合

 

コロンビアにおいて、コーヒー豆は300年以上もの歴史がある重要な経済基盤です。コーヒー栽培は、キリスト教宣教師がベネズエラからコーヒー豆を持ち込んで始められました。今日では、コロンビアの総輸出量の10パーセントを占め、コーヒー産業はコーヒー生産部門で50万人以上もの雇用を生み出しています。その大多数は5ヘクタール(5万平方メートル)以下の小規模栽培農場となっています。

1927年、小規模コーヒー農場主の保護のため、コロンビアコーヒー生産組合(Federacion Nacional de Cafeteros de Colombia: FNC)が設立されました。ところがコーヒー生産者の数があまりに多いため、FNCはこれらの農場から集められた膨大なデータの管理の難しさに直面しました。それは国全体でのコーヒー収穫量予測や値段交渉にも影響を与えるものでした。

収穫予測の精度を上げるため、FNCはコーヒー生産の大規模な調査を約20年前に行いました。その結果となる「全国コーヒー調査(Encuesta Nacional Caretera: ENC)」が基準となり、それを基にして定期的に更新されたコーヒー情報システム(Sistema de Informacion Cafetera: SICA)は今日でも参照されています。SICAは基本的なデータインフラおよび、デザイン、組織立て、そしてコロンビアのコーヒー農場検索に使われる戦略的情報を提供するシステムです。現在のバージョンのSICAは2008年にArcGIS Serverソフトウェアで作られ、オンラインでの情報分析、計画、持続可能な農業に関する方針、意思決定、競合分析、環境調査、収穫量予測、農場登録、そして品質保証に使われています。FNCはArcGIS Desktopソフトウェアを長年使用していたため、SICAのアップグレードにArcGIS Serverを採用したのは自然な流れでした。

FNCのコーヒー生産サンプリングエリアの仲から1つの区画が選ばれているところ。表示されたデータには緯度経度および様々な固有のコードなどの情報が含まれています。

全国コーヒー調査には航空写真のセットが含まれており、それらはEsri社のGISソフトウェアを使ってオルソ加工され、SICAの地理情報データベースに組み込まれていました。現在ではArcGIS Server Image Extensionが採用され、SICAに格納するためのオルソ加工済みのモザイク画像、衛星画像、航空写真などの大容量の画像の管理と印刷に使われています。FNCの技術スタッフはENVI社の画像処理ソフトウェアを使用し、集められた画像を使って時系列別の分析や調査を行っています。

収穫量予測は、SICAのデータを元に、ArcGISの分析ツールを使って行われます。SICAデータにはFNCのフィールドサービスチームによって特定の耕作地で集められたコーヒーサンプルも含まれています。半年に一度のサンプリング時には、1,000人以上のフィールド技術者が所定のエリアでコーヒーの木から完熟した実と熟していない実の両方を収穫します。コーヒー豆は数を数えて重さを量り、それから次の半年間の収穫量を推定するための統計プロセスが行われます。サンプリングが完了した後、FNCのフィールドサービスチームは収穫量データをインターネットベースのサーバアプリケーションかカスタマイズされたArcGIS Mobileアプリケーションのどちらかを通してSICAのジオデータベースにアップロードします。FNCのGISはWebベースなので、今ではSICAのデータベースはほぼリアルタイムにアップデートされています。

集められたデータはFNCの研究所であるCenicafeで分析され、組合は重要な発見をレポートにまとめメンバーに提供します。現在の研究のトピックには土壌侵食管理、土壌復旧、そして気温と雨量の組み合わせなどの環境の変化がコーヒー収穫量に与える影響、が含まれます。

FNCはまたコーヒー農家に影響を与える社会経済的な問題についても監視しています。SICAはFNCメンバーへの教育の機会、町や村のインフラの状態、そして彼らが受けられる健康管理施設についての情報を保持しています。

GISが今やコロンビア国立コーヒー組合と加盟農家にとっての貴重な財産だということが証明されました。GISの技術は、コーヒー収穫量予測や関連した研究に関する広範囲のサービスを提供するだけでなく、加盟メンバーの生活の向上を目指すことを可能にしました。これはGISの力と、GISがどのように世界中の人々の社会経済の状態向上に貢献するかを如実に表す一例と言えるでしょう。

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掲載日

  • 2011年1月25日