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事例

クルーガー国立公園における野生生物の生息地管理

鳥取大学

 

アフリカ最大級の国立公園における野生生物の生息地を保護,管理するための自然環境情報をGISで整備する。

「ビッグ5」と呼ばれるゾウ,ライオン,ヒョウ,カバ,サイをはじめ多種多様な野生生物が生息する広大なサバンナ。そのエコシステムを正確に把握し,時空間的なダイナミクスのなかで野生生物の生息地を管理するために衛星リモートセンシングとGISは強力なツールとなる。

全体説明

南アフリカ共和国の北東部モザンピークジンパブ工との国境に位置するクルーガー国立公園は,日本の四国にほぼ相当する約2万平方Kmの面積を有する同国最大の動物自然公園である。生息する野生生物の多様性も実に豊富であり,国内外より訪れる多くのツーリストたちを魅了している。その歴史は古く1898年には国内で初めての保護区として設定され,その後も徹底した自然公園管理がなされ,世界でも野生動物保護のお手本とされてきた先駆的な公園でもある。

しかしながら,その手厚い保護の結果,ゾウの頭数は1960年代に急激に増加し,今日ではその生息地の保護,管理が重要な課題となってきている。同公園事務所内には「Scientific Services」が設置されており,10数名の科学者が勤務しているが,そのなかにはGISセクションがあり,公園管理を情報の側から支えるデータベース構築が進められている。鳥取大学景観生態学研究室では2005年より同セクションと衛星リモートセンシングデータを活用したゾウの生息地評価に関する共同研究を開始した。公園レンジャー達のフィールドデータと衛星画像解析結果をGISを用いて統合化し的確な生息地管理計画立案のための取り組みが進められている。

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衛星リモートセンシングの活用

広大なサバンナで発生する火災は公園Scientific Servicesでもその全容が十分に把握されていない。野生生物の生息地を適切に管理するためには,毎年多箇所で発生する火災の時空間的な情報をデータベース化することが重要である。そこで高時間分解能が特徴であるMODISデータを利用して,火災跡地を効率的にモニタリングする手法を確立した。NDVI,NOII,Albedoなどさまざまなインデックス画像を検討した結果,Albedo画像によって火災による焼地を明瞭に抽出でさることがわかった。

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GISの有用性

公園Scientific Servicesでは,CyberTrackerというモバイルGISを導入し,レンジャー達の野外監視活動による野生動物の目撃情報をデータベース化するシステムが確立している。日々蓄積されていく野生生物の分布マップ(ポイントデータ)と生息環境に係わるさまざまな主題データとの因果関係を時空間的に解析するツールとして,GISの果たす役割は極めて大きい。

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今後の展開

野生生物の生息地としての広大なサパン士そこで繰り返し発生する火災による撹乱,動物自然公園の生態系バランスを今後いかに管理し,保護していくかは,マルチディシップナリな課題であり,GISから創造される試行的な出力マップは重要な情報である。今後も,公園レンジャー達によって取得されるフィールドデータと衛星リモートセンシングデータとをGISで統合する自然公園管理データベースのモデルを構築していきたい。

プロフィール


鳥取大学農学部
長澤 良太 教授
Daniel Chongo(博士過程院生)
岸本 直子(修士過程院生)



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資料

掲載日

  • 2007年1月1日