豪雪地・滝川の除排雪にかかわる問題点を、GISを通して生徒自ら発見。さらに市への提言も行う。
北海道空知支庁管内の進学校である滝川高校では、1年次に地理A(必修)、2年次後期から3年次にかけて地理B(選択)の履修ができる環境にある。地歴・公民科の小野寺教諭は、2006年のESRIジャパンの「小中高教育におけるGIS利用支援プログラム」の採用を契機に、GISを活用した地域学習を実践している。
1年生には、酪農学園大学の金子正美教授及び、北海道大学の橋本雄一准教授によるGISに関する講義を実施した。さらに、身近な地域への問題意識を持つことを目的に、生徒に町の○×(いい環境、悪い環境)を挙げて
もらい、GISへの入力を実施した。
2年生では、地域学習をさらにすすめた。滝川市は、1997年から10年間の年平均降雪量が8mもある、道内屈指の豪雪地帯であることから、冬の通学路の除雪・排雪に関する状況調査を実施した。
2年生の地理の授業で実施した冬の通学路調査は、全5時間かけて、班単位で以下の手順で実施した。
1.問題意識を持った場所を携帯電話のカメラで撮影。GPS付きの場合には位置情報も含めてメール送信。この調査は12月と1月の2回実施。
2.コンピュータ同好会の生徒がArcViewを利用して調査地点を入力し、地図を作成。
3.班ごとにマップを見ながら問題個所の原因、解決策を挙げる。
4.問題の原因や解決の調査のために、人口統計データなどが必要であれば、コンピュータ同好会の生徒がArcViewで、マップを作成。
5.班ごとに提言をまとめ、発表会を実施。
危険度評価地図
調査の過程でコンピュータ同好会が作成した主題図は以下の通りである。
主題図を作成したことで、例えば通学者数が多い道路なのに、除雪をしていない場所がある、といった発見があり、発表会では様々な問題点と提言がなされた。
以下はその一部である。
【問題】通学途中、歩道が除雪作業中で車道を歩かなければならないため、接触事故の原因となる。
【提言】見張りをつける。標識の設置。
【問題】車道の雪山が高く、交差点の見通しが悪いため、車両がお互いに気づきにくくなり、事故が発生しやすい。また、死角ができやすくなり、犯罪が起こっても気づきにくい。
【提言】交差点の排雪回数を増やす。交通量の多い道路と細い道の交差点などを重点的に排雪する。
コンピュータ同好会、美術部の生徒及び小野寺教授
コンピュータ同好会は、作成した主題図をもとに、ポスターの制作にも挑戦した。制作にあたっては、美術部にデザインで協力してもらい、また、酪農学園大学の山下亜紀郎講師にアドパイスを受けた。
その結果、2008年1月に開催された「第4回GISコミュニティフォーラム」のマップギャラリーにて第4位に入賞を果たした。さらに同年8月には、米国で開催されたESRIユーザー会のマップギャラリーにも出展した。ESRI
ユーザ会に出展する際は、閲覧者の多くが米国人ということを意識し、色遣いを派手にするなどの工夫を凝らした。
2008年11月には、滝川市役所内にて、滝川市西高等学校新聞局と共同で、3日間の展示会/フォーラムを開催した。コンピュータ同好会が協力して作成した滝川市西高校周辺の除排雪マップをもとに新聞局が新聞を作成し、滝川高校のポスターとともに展示した。また最終日には発表も行った。
この展示会は、現在の除排雪の課題を、地図を通してアピールし、地図があれば一目瞭然ということを実感してもらうことをねらったものである。
当日は高校生、市役所職員、議員、除排雪業者、各町内会長、一般市民が多数参加し、NHKニュースでも紹介されるなど、大盛況を収めた。
米国ESRIユーザー会 出展ポスター
コンピュータ同好会所属の生徒の一人は、大学受験でのAO入試にてGISの活用をアピールし、見事合格することができた。
小野寺教諭は、「高校時代のうちからGISとは何か、どういうふうに活用できるのかを知っていることが重要だ。大学、そして社会人になって、様々な分野で、様々な場面での問題解決の手法としてGISを思い出すことがで
きる。」と語る。
今後のテーマとして、空知地方の水田分布や休耕田の分布について、過去と現在の状況把握を考えている。現地調査ではArcPadの活用も検討中である。