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バイオマスによる持続可能な発展に向けて!GISとリモートセンシングの可能性に挑む

財団法人電力中央研究所

 

バイオマス賦存量GISデータベースとRSによる分類可能性

化石燃料への依存軽減、地球温暖化防止の一翼として期待されるバイオマス。その地理的分布と賦存量を把握することから全ては始まる。

「バイオマス」という言葉はあまり聞き慣れない言葉かもしれない。バイオマスとは、生物資源(バイオ/bio)の量(マス/mass)をあらわし、エネルギー源として再利用できる動植物から生まれた有機性の資源のことであり、「農業系」「森林系」「畜産系」「食品系」「廃棄物系」に分類される。バイオマスは地域資源としてわが国はもとより世界中に広く存在する上に、地球規模でみて二酸化炭素CO2)バランスを壊さないカーボンニュートラルであり、永続性のあるエネルギー源として非常に注目されている。

わが国では、2002年12月に「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定され、地方公共団体だけではなく民間企業においても、バイオマス利活用促進が活発化している。一方、1997年に京都市で開催された地球温暖化防止京都会議で議決した「京都議定書」にて、日本は1990年を基準として2012年までに6%の温暖化物質の排出削減目標が定められている。しかしながら、国内の削減はかなり手詰まりの状況を呈しているのが現状である。このような中、京都メカニズムのーつとしてCDM(クリーン開発メカニズム)が採択された。CDMとは、先進国が開発途上国に技術・資金等の支援を行い、温室効果ガス排出量を削減、または吸収量を増幅する事業を実施した結果、削減できた排出量の一定量を先進国の温室効果ガス排出量の削減分の一部に充当することができる制度である。しかし先進国の関心がCOMによるクレジット獲得に偏り、途上国が望む持続的発展に寄与しない為に、COMが思うように進んでいないのが現状である。

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財団法人電力中央研究所では、平成15年度よりバイオマス高効率エネルギ一利用システム開発に取り組んでいる。ハ一ドの変換技術を担当するエネルギー技術研究所(横須賀)では、将来的にアジア地域特有のバイオマス資源を利用した炭化ガス化発電プラン卜の技術開発を進めている。一方バイオマスポテンシャル評価を担当する社会経済研究所では、わが国及びアジア地域のバイオマス賦存量等のGISデータベース開発、RS技術等を活用したCDM事業支援ツール開発に取り組んでいる。

市町村別バイオマス賦存量等GIS データベース

バイオマスポテンシャル評価研究は、平成15年度から平成20年度にかけて電力中央研究所全体の重点課題として位置づけられて、研究を進めている。

平成15年度から平成16年度にかけての2ヵ年では、アジア地域におけるポテンシャル評価実施の前段階として、「市町村別バイオマス賦存量等GISデータベース』構築を中心に、日本国内のポテンシャル評価に関する研究を行った。

日本国内におけるバイオマス賦存量の推計は都道府県単位等の広域を対象としたものは数多く存在するが、地理的分布特性を瞬時に把握できる市町村単位のGISデータは存在しなかった。バイオマスの効率的なエネルギ一利用のためには、地域に偏在するバイオマス資源量(特に利用可能量)を詳細に把握することが重要である。そのため、最新の農林水産統計、地域統計データや市町村界データを用いて、3,204(平成15年10月末現在)の市町村別バイオマス(5系統15種類)賦存量等GISデータベースを構築した。

市町村別バイオマス賦存量のGIS表示を行うことで、数値による統計データだけでは難しかった地理的分布を容易に把握することが可能となった。

この成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の受託研究として、データベースを平成17年度に更新し、ArcIMSを用いて「バイオマス賦存量・利用可能量推計~GISデータベース~」として一般に公開している。

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アジア地域バイオマス賦存量等GISデ ータベース

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アジア地域バイオマス賦存量等
GISデータベース

平成17年度以降は、調査対象地域をアジアに移し、事業を展開している。

平成17年度は、アジア地域でのバイオマス利用を検討する第一段階として、バイオマス種類別に国や地域単位での地理的分布を明らかにする『アジア地域バイオマス賦存量等GISデータベース」の構築を行った。

バイオマス賦存量の推計に利用した統計データは、国単位ではFAO(FOOD AND AGRICULTURE ORGANIZATION OF THE UNITEDNATIONS)の統計、地域別の県及び州単位のデータは各国の統計資料から収集した。収集したデータをもとに、国、州、県単位のバイオマス賦存量を集計し、Shape形式のGISデータベースを構築した。

RSによるバイオマス分類の可能性(タイ国)

これまでにアジア地域のバイオマス賦存量GISデータベースを構築したが、国や地域によっては、統計データが未整備あるいは入手困難であるケースが数多く存在した。地理的分布の影響を受けるバイオマス資源の現実的な利用を検討するには、より詳細なレベルでの発生量推計手法の開発が必要であった。そのため、これまでに資料調査やヒアリングで統計データやGISデータなどが比較的整備されており、バイオマス資源についても東南アジアを代表する多くの作物や資源を有するタイを対象固として、衛星画像を用いた土地利用分類でバイオマス賦存量を推計にする方法を実施した。

衛星画像は、米国terra衛星ASTERセンサの15m高空間分解能画像を用いた。画像分類については、代表的な2つの手法であるオブジェク卜指向分類とニュー口ネットワーク法を用いた。

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プランテーション系バイオマスの分類結果
オブジェクト指向による分類結果
(2004.3.20画像)

オブジェク卜指向分類は、類似するピクセルのまとまりを領域分割(セグメンテーション)する比較的均質なオブジェクトを単位として分類を行う手法である。それに対し、ニュー口ネットワーク法は、入力データと対となるトレーニングデータ(正解データ)を数十~数百バターン学習させることで、学習したデータに近い出力値を得ることができる手法である。

廃棄物系を対象とした画像では、両手法ともにバイオマスが発生する市街地と周辺農村部を、精度高く分類することができた。その他の農業系、プランテーション系、畜産系のバイオマスはオブジェクト指向、森林系バイオマスはニュー口ネットワーク法によって現実に近い分類ができた。

今後の計画

これまでのバイオマス賦存量GISデータベース及びRSによる分類によって、地域に広く薄く存在する特徴を持つバイオマスの分布がかなり正確に把握できるようになった。

平成18年度から20年度にかけての3ヵ年は、これらのベースを元にアジア地域の持続可能な開発(貧困削減等)に資するCDM事業のモデル・支援ツール開発を進めていく。

「京都議定書の期限である2012年まで時間はありません。現在の研究が地球温暖化の防止及びアジア地域にとっての持続可能な発展に繋がっていくように、これからも研究を続けていきます。』と井内氏は今後の抱負を語った。

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社会経済研究所
右から井内氏、栗原氏



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掲載日

  • 2007年1月1日

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