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事例

丹沢自然環境情報ステーション。自然環境の保全と再生への取り組み

神奈川県自然環境保全センター

 

自然環境の保全と再生に向け、GISを中心とした位置情報の活用。

モバイルからWebまで、幅広くGISを活用し、丹沢大山の保全と再生に向けて県民と行政で、生物の目撃情報や自然公園の情報を共有する仕組み。

はじめに

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図:e-Tanzawaのトップページ

神奈川県の北西部に位置する丹沢山地は、現在でも4万ヘクタールの豊かな自然が残され、神奈川県の水源地域として重要な役割を果たしています。また、都心から50km程の場所に位置しながら、ブナやモミの自然林、ニホンカモシカ等希少生物を含めた野生生物の宝庫であることから、多くの登山者を魅了してきました。

しかし、1980年代から丹沢山地の生態系に大きな変化が起こり始め、広範囲にわたるモミやブナの立ち枯れ、ニホンジカの個体数の増加によるブナ帯での植生劣化などが目立ち始めました。

そこで、神奈川県では2004年から2005年の2ヶ年で県民、学識者、NPO、企業など、さまざまな主体による「丹沢大山総合調査』を実施しました。この調査の中で、さまざまな情報をGISデータとして整備・蓄積するとともに、総合的に解析を行うための支援ツールとしてGISは大きな役割を果たしました。

この調査結果をもとに丹沢大山の自然再生にむけ、どのような事業を、どこで、どのくらい行うかが検討され、2007年4月から「丹沢大山自然再生計画」がスター卜しています。

今回は、このような自然再生事業の中で、主要な役割を果たしている神奈川県自然環境保全センターで、GISを積極的に活用していただいている笹川氏にお話を伺いました。

丹沢自然環境情報ステーションの拡充

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図:e-Tanzawaの概念図

丹沢自然環境情報ステーション(e-Tanzawa)は『丹沢大山総合調査」で構築した自然再生にむけた取り組みの「情報ステーション』で、丹沢大山に関する自然環境情報提供のポータルサイトと、GISデータベースサーバの2つの役割を担っています。また、情報共有のためにArcIMSをベースに構築したWebGISも組み込まれています。

丹沢大山自然再生計画は、計画-実行-評価検証-見直しのサイクルで順応的に事業を進めます。事業の評価は位置情報をともなうモニタリングデータをもとにGISによる空間解析などによって行います。県民参加と情報共有を基調として自然再生を進めるため、e-Tanzawaには、県民に向けた情報の発信と共有に加えて、自然再生事業のモニタリングデータや県民からの情報の蓄積を行う双方向型システムへの拡張が求められました。

そこで、新たに位置情報を含む自然環境情報を登録するシステムとして、ArcIMSをベースとするWeb版情報登録システムと、モバイルGISとPDA(携帯情報端末)を活用した情報登録システムを開発し、e-Tanzawaの機能に追加しました。

情報登録システムは、希少生物や外来生物などの生物目撃情報と、登山道やごみなどの自然公園管理に関する目撃情報を登録するシステムです。Web版はインターネットを通して、各種団体や一般県民などが利用することを想定して開発されています。

モバイルGISの活用

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図:モバイル用の目撃情報登録システム

一方モバイルGISによるシステムは、モニタリングや巡視を日常業務とする専門家を利用者として想定しています。

自然環境保全センターでは「丹沢大山自然再生計画」の県民参加・協働の推進の一環として、自然公園などを巡視し、マナーや安全登山の啓発、動植物調査、自然公園指導員等のサポートなどを行う専門職員「かながわパークレンジャー」を配置し、県自然公園指導員などと共に巡視活動を行い、自然環境保全活動の推進を行っています。

従来の巡視活動では、紙ベースでの情報蓄積と業務報告書作成が一般的でした。そこで、このような日々蓄積される情報をGISデータとして効率的に蓄積・管理するため、ArcGIS Desktop、ArcPad、デジタルカメラを連携させる次のようなシステムを構築しました。

モバイルGISを用いたツールで現地情報を入力することにより、データの精度を保ちながら情報を蓄積するとともに、写真とGISデータの関連づけ、帳票作成、データの整理を簡単に行うことができるようになりました。

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パークレンジャーによる作業風景

まとめ

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調査結果データと帳票

現在、かながわパークレンジャーは、このシステムの利用方法の説明を受け、実際lこ体験していただいている段階です。今後、効率的にGISデータの整理・蓄積、日々の業務報告書の作成にと、活用されるととが期待されます。

モバイルGIS版情報登録システムで日々得られるデータは、Web版システムのデータと結合されます。モバイルGIS版のシステムでは、モデルビルダーで調査の際の一連の作業をモデル化し、直感的にデータ結合までの作業ができるようになっています。

県民と専門家がモバイルとWebを利用して登録した自然環境情報の蓄積が、丹沢大山の自然再生を支える大きなカになっています。

プロフィール


研究部メンバーとかながわパークレンジャー



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資料

掲載日

  • 2009年1月1日