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農地関連情報の可視化で農業共済業務を効率化

魚沼農業共済組合

 

水土里情報利活用促進事業ですすむ農業分野のGIS

水土里データと管理台帳の連携で、農地関連情報を可視化し、業務の効率化に成功した魚沼農業共済組合を紹介する。

農業共済事業について

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大雨・台風・干ばつ・冷害・地震・落雷・・・ 農業は、偶発的に起こる様々な自然現象に、その年の収穫量・品質が大きく左右される産業である。
国では、「農業者が不慮の事故に因って受けることのある損失を補填して農業経営の安定を図り、農業生産力の発展に資する」ことを目的とした農業災害補償法を制定しており、この法律に基づいて農業共済事業が実施されている。

農業災害が発生した際の損失を補填するために、固と農業者が共済掛金を出し合い、災害が発生したときに共済金を支払う共済事業のほか、被害を最小限にとどめるための損害防止活動が主な事業内容だ。その実施組織として全国各地に農業共済組合が存在し、管轄内の田畑に関してその地名地番、面積、作付け品目、収量、掛金などを管理している。

NOSAI魚沼(魚沼農業共済組合)のGIS

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業務選択用インターフェイス

新潟県の小千谷市、魚沼市、南魚沼市、十日町市、川口町、津南町、湯沢町を管轄しているのが魚沼農業共済組合(呼称NOSAI魚沼)だ。NOSAI魚沼では、共済事業用に文字ベースの管理台帳システムが使用されていたが、平成19年度より、これら管理台帳と地図を結び付けてGISが導入された。

GISを導入することで、共済事業の対応迅速化や、共済事業の適正引受・損害評価を図ることを目的としている。

NOSAI魚沼で利用している農作物共済の台帳システムは、大きくわけて2種類ある。組合員を管理する台帳と、作物の耕地を管理する台帳だ。これら台帳データをGISに移し変えるにあたっては、アドレスマッチングや、地名地番をキーとした農地筆データとのマッチングが行われた。今回導入された地域ではかなりの高確率で、マッチングに成功した。

GISシステムはNOSAI魚沼向けにカスタマイズが行われているが、できるだけArcViewの素の姿を残すよう開発されている。誰でも簡単に操作できるよう、機能を最小限に抑えた専用システムとして開発することもできたが、やがてArcViewの操作に慣れてゆくことを考慮し、ArcViewが持つ豊富なGIS機能をより自由に利用できるようにしたいという希望があったからだ。

データの選択や検索用には、業務別に分かりやすいインターフェイスが用意されており、直感的なデータ検索や表示がで、きるようになっている。

水土里情報利活用促進事業

平成18年度から平成22年度にかけて、農林水産省で「水土里情報利活用促進事業(以下、水土里事業)」が始まった。本事業は、都道府県単位で農地筆・区画情報や水利施設、航空写真など、農業に関係する情報をGISデータとして整備・管理するものである。今回のNOSAI魚沼でのGIS導入は、津南町と南魚沼市(旧大和町)の2地域で実施されたが、ここで使用した地図データは、この水土里事業により新潟県土地改良事業団体連合会が整備したものである。

これから水土里事業のデータ整備にあわせて順次、導入エリアを拡大していく予定である。

農業共済事業でのGIS活用

農業共済事業では、「組合員がどこに住んで、いるのか」、「どこで何が作付けされ、どれくらいの収量があるのか」、「いつどこで、どのような被害があったのか」など、「位置」が重要となる情報がたくさん利用されている。

特に病害虫が発生した場合には、被害拡大防止のためにも、どの範囲で発生しているかをリアルタイムで空間的に把握することがとても重要となる。
これまでの台帳システムをGISに変えることで、情報の視覚化にかかる手間が激減した。GISでは瞬時に表示されるデータも、これまでは該当する地区の白地図を用意するところから始まり、台帳の地名地番情報を基に手作業で色を塗り分ける作業を行ってきた。

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手作業による地図の色分け

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GISでの表示

情報を地図として簡単に表示で、きるようになったため、収量調査や損害評価、損害防止活動など日常業務の効率化のほか、手作業によるミスの減少や、特別栽培米、他作物、栽培情報管理の精度向上にもつながった。

今後の発展~モバイルGIS~

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損害評価では、被害発生地での状況確認や、記録としての写真撮影が行われている。事務所に戻ってから情報を更新しているのが現状だが、現地で直接データを更新できるようモバイルGISの導入も検討している。モバイルGISを利用すればGPSで座標値が取得できるので、被害発生地で直接データを登録することができるからだ。

水田への落雷被害の他、最近ではイノシシやシ力など野生動物による被害なども増えてきている。現場確認作業の効率化が期待される。

エリア・業務の拡大にむけて

現在は農業共済事業のうち、作物共済の業務に限定してGISが利用されているが、今後は、ビニールハウスなどの園芸施設共済などの資産共済でもGISを利用していく計画だ。

また、水土里事業によるデータ整備には地域差があるため、すぐの実現にはいたらないが、現在の2地域から順次エリアを拡大し、管轄内全域のGIS化も目指している。

更に大きく視野を広げると、組合の地域をまたいで農業を営む農業者もいることから、業務上、近隣組合の地図データも必要になる。こういった組合管内を超える営農にも対応できるよう、より大きなGISシステム構築も望まれる。

プロフィール


GISを担当する佐藤 守 係長(左)、五十嵐 淳二 主査(右)



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資料

掲載日

  • 2009年1月1日