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事例

複雑な導管地図データをWebGISで快適に操作

大阪ガス株式会社

 

ガス導管設備管理システムの高性能化

ArcGIS Server を採用し、複雑な導管地図データをストレス無く表示するWebGISを開発した。

概要

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導管MAP操作画面

大阪ガスは近畿地方の680万戸に都市ガスを供給し、管理する導管総延長は57,000kmに達する。
ガス事業者の業務においてGISは設備管理、計画、工事、保安、災害対策など多岐にわたって活用されている。同社では2003年に古くから使われていた設備管理GISをArcGISにリプレースし、各種業務アプリケーションとの連携も実現してきたが、今回基幹となる「導管MAPシステム」をArcGIS Serverの機能をフルに活用した高レスポンスなものに改変した。

経緯

大阪ガスでは、1986年に初期導入したGISガス導管設備管理システムを時代に則した最新テクノロジに準拠したシステムに順次更新し、社内システムとして利用してきた。
初代GISはメインフレームをプラットフォームとしたシステムであったが、1995年にエンジニアリング・ワークステーションおよびパソコンにダウンサイジングした第二世代GISを導入した。
21世紀に入り、WebGISの技術が確立すると2003年ArcGISベースの第三世代GISを導入した(※1)。
またその後、現在の2008年まで、「他工事管理システム」や「見積店回答システム」などの業務アプリケーションとGISの連動システムを開発・導入してきた。それら業務アプリケーションの土台としてArcGIS Serverで作成されたGIS機能を提供するWebサービスを基盤とするSOA(サービス指向アーキテクチャ)を構築した(※2)。
そして2008年に従来の第三世代WebGISを根本的に見直し、最先端技術であるAjaxを活用し、よりユーザにわかり易く、レスポンスのよいWebGISの開発に成功した。

高レスポンスなWebGISの追及

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今回の改良にはWebGISにおけるレスポンスの向上を徹底的に追及し、Google Mapsなどで採用されているAjaxを活用し、全域表示から詳細表示まで、ダイナミックに拡大縮小が可能で、シームレスに地図移動ができるWebGISを開発した。そのようなWebGISを実現させるためマップキャッシュ作成機能に優れたArcGIS Server 9.2を採用した。
仕組みとしては、背景地図となる地形データや住宅地図デー夕、導管データを、ArcGIS Server 9.2のマップキャッシュ作成機能を用いてタイル状に並べられた画像データに出力し、GISサーバに格納する。クライアントとなるブラウザは表示する領域の画像データをサーバに非同期通信でリクエストし、サーパからのレスポンスとして地図画像データが返って来る仕組みである。

通常キャッシュデータは画像データなので地物の編集ができないが、日々編集が行われる導管データについては、別途メンテナンスシステムから編集が行われた領域のみを差分アップデートする仕組みを組み込み、この問題を解決した。結果として詳細な設備図形、注記、旗揚げ線などが記載された複雑な導管地図データが一瞬にして表示されるWebGISが誕生した。
もちろん過去のWebGISでの機能は引き継いでおり、他の台帳システムとの連携や、ブラウザからの加筆修正機能なども実装している。
そのほかにも、より高いパフォーマンスを追及するためデータモデルの見直しを行った。従来のデータモデルはエンジニアリング・ワークステーションの時代に作成されたデータモデルしを踏襲していた。今回の開発では各設備のデータモデルの統廃合を行い、表示、検索などにおいてより高いパフォーマンスが期待できるデータモデルに再編成した。

また従来、高圧幹線の設備データにおいてはCAD図面をファイリングシステムで個々に閲覧していたが、今回のシステム構築において、GISデータに直接座標値付きのCAD図面を取り込み、WebGIS上で、高圧幹線の施設データを閲覧できるようにした。この結果シームレスに高圧幹線が閲覧できるようになり、設備メンテナンスの可視化において改善を図るとともに、重要設備の位置座標管理に向けて大きな一歩を踏み出したことになる。

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高圧幹線の表示

管理コストの改善

サーバの管理コストの改善については、従来のWebGISではサーバが
14台で構成されていたが今回の見直しでダウンサイジングを図りサー
バ10台でのシステム構築を実現し、サーバの管理コストを削減すること
ができた。
クライアントの管理コストについてはWebアプリケーションを完全なノン
プラグイン(フ“ラウザ1こアプリケーションをインストールしないでも動作す
る)で動作するよう設計したことにより、Webアプリケーション導入にお
けるクライアントの管理コストを削減することができた。

ArcGIS導入の波及効果

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メッシュ単位の導管状況分析画面

2003年にArcGISを導入してから5年が経過したが、大阪ガスの各部署において地図データの様々な利用が盛んになっており、着実にGIS基盤としての用途を拡大している。
導管計画の部署では、埋設年が古い導管の履歴情報や土質条件などを元に、導管の改修の優先順位を策定するなど、戦略的な設備改修計画にArcGIS Desktopを利用している。これは導管設備を扱う共通の空間データベースを利用し、ArcGISの標準機能である空間検索、属性検索の組み合わせをフルに活用するもので、今後様々な施策立案に利用されることが期待できる。

また導入当初、導管計画の部署のみで使用されてきたGISであるが、ArcGISの導入後、他部署でのGISの利用が盛んになっている。
例えばガス機器を販売している営業部門では導管部門で作成した導管データを営業情報と組み合わせマーケティング分析に活用している。
このようにGISデー夕、アプリケーションの共通基盤を持つことにより、組織をまたがったデータ活用が可能となり、各部署個別の創意工夫によるGIS利用が可能となった。
今後は防災関連部署などにもArcGISの活用が予定されている。

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システム概念図

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導管事業部 チームメンバー



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資料

掲載日

  • 2009年1月1日