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事例

GPS/GISを用いた自主防犯活動の活動分析

科学警察研究所

 

GPSとGISの連携による効率的なパトロール活動の実現と、犯罪抑止及び犯罪不安の低減を目指す

犯罪を未然に防止するための効果的な施策の立案に資するため、犯罪者、被害者・被害物、犯行の場や地域社会などの背景要因を総合した実証研究を行う。

犯罪行動科学部の活動

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科学警察研究所外観

科学警察研究所は、科学捜査についての研究・実験及びこれらを応用する鑑定・検査、犯罪の防止及び少年非行防止についての研究・実験並びに交通事故の防止その他交通警察についての研究・実験を行っている。これらの業務対象は広汎にわたるため、生物学、医学、科学、薬学、物理学、農学、工学、社会学、教育学、心理学等の専門的知識・技術を有する研究職員が、それぞれの専門に応じた部門に配置され日々活動している。

  

犯罪行動科学部犯罪予防研究室では、犯罪を未然に防止するための効果的な施策の立案に資するため、犯罪者、被害者・被害物、犯行の場や地域社会などの実証研究を行っている。多分野の研究者が学際的な研究をおこなう上で、GISは研究基盤となっている。

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犯罪発生密度と構築環境との関係

  

GPSによる青色防犯パトロールの測定

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青色防犯パトロール車

地域の安全を守るためには、警察だけではなく、地域住民による自主防犯活動との連携が必要である。近年、防犯ボランティア団体や地方自治体の問で盛んになっているのが、青色回転灯を装備した自動車による防犯パトロール(青色防犯パトロール)である。

青色防犯パトロールの多くでは活動報告に紙の帳票が利用されているが、おおまかな時間帯や地区名しか分からず、自治体や警察は十分に活動実態を把握することができなかった。複数の団体が同じ場所をパトロールすることによる非効率や、パトロールでカバーされない空白地帯の発生が懸念される。
このため、個々の取り組みの活性化と並んで、自治体や警察が広域的な連携や調整を行う仕組みつくりが急務となっている。
そこで、犯罪予防研究室では、青色防犯パ卜ロールを積極的に実施している市川市防犯対策課の協力のもと、簡便なGPS端末を用いて青色防犯パトロールの移動経路を測定する実験を行った。

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GPS端末の操作手順

  

GISによる視覚化と分析

測位結果はGISソフトウェアArcView9.2にとりこむことで、道路セグメント単位の巡回回数や町丁目単位のパトロール充足度など、様々な集計単位による計量的な分析が可能となった。また、Tracking Analystを活用して、パトロール車の移動経路をアニメーションで示した。

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青色防犯パトロール車の移動経路

これらの分析結果は、青色防犯パトロールを実施しているボランティア団体にフィードバックされ、活動への動機付けとなっている。

今後の展開

今回、GPS機器を用いることでパトロールの実施内容を簡便に測定でき、空間分析によって効率的なパトロール活動を誘導できることが示された。同研究室では今後、以下のような展開を考えている。

1. 犯罪・犯罪不安両面での防犯対策の効果分析

青色防犯パトロールや犯罪発生マップの掲示などの防犯対策が、犯罪抑止や市民の犯罪不安低減や日常行動の変化にどう影響しているかを、防犯対策の記録や住民対象の社会調査の分析を通じて明らかにする。

2. 草の根防犯GISへの測位機器の活用

防犯活動を持続的・継続的なものにするために、活動内容を参加者や地域住民にフィードバックし、共考できるしくみを構築する。

諸外国では、犯罪対策や犯罪研究のため、GISが警察機関だけにとどまらず、行政や大学、一般市民になどで広く用いられている。問題の洗い出し、分析、対処、結果の評価にGISを活用することで、犯罪の抑止や犯罪不安の低減、ひいては安全・安心の確保につながると考えられる。

プロフィール


犯罪行動科学部 犯罪予防研究室



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掲載日

  • 2008年1月1日