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事例

GISの活用による持続可能な森林経営への取り組み

住友林業株式会社

 

「保続林業」を基本理念に、GISを活用した効率的な森林経営を長年にわたり実践

100年以上にわたり広大な社有林の森林経営を行ってきた住友林業。
長年にわたる経験とGISの融合により、新しい森林管理手法の確立を目指す。

持続可能な森林経営の実践

地球環境の悪化に対する取り組みが急がれる中、その解決策として森林の持つ様々な機能が見直されている。森林は、「木」としての再生可能な資源という役割だけでなく、地球温暖化の要因とされる二酸化炭素の吸収や、水源涵養など多くの公益的機能を有している。しかし、日本の森林の約40%を占め、人の手によって植栽された「人工林」は、成長に応じて間伐などの手入れを行わなければ、その機能を十分に発揮することができない。植える、育てる、伐って生活に役立てまた植える。このサイクルを持続的に繰り返すことが森林管理に求められている。

その中で、全国に日本の国土面積の約1,000分のlの社有林を保有する住友林業では、森林経営の効率化と新しい森林管理手法の確立を目指して、GIS(地理情報システム)の活用に取り組んできた。同社は1691年、住友家の別子銅山開坑にともなう、周辺山林の立木利用を創業とする300年以上の歴史を持つ企業。1894年には、別子銅山(愛媛県)の長年による伐採と煙害により失われた緑を取り戻すため、大造林計画を樹 立。その後、本格的な山林事業に着手し、木を植え、森を育みながら、永続的に植林と再生産を繰り返す「保続林業(サステナブル・フォレス卜リー)」の考え方を確立した。この理念は、100年以上経った現在にも息づいており、2006年には、生態系に配慮し、持続可能な森林管理をおこなう上で、SGCE(「緑の循環」認証会議)による森林認証を国内林全てにおいて一括取得している。(認証番号:JAFTA-010)

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(左図) 別子銅山の旧精錬吹処之図。精錬と過剰な伐採により荒れた山林。(1881年)
(下図) 左の写真と同じ場所の現在の社有林。大造林計画と先人の努力により、豊かな自然がよみがえっている。

GIS導入のきっかけ

住友林業では、新しい森林管理技術を取り入れようと1983年からCADを応用した森林管理システムの自社開発を始め、1986年に導入した。その後も本格的なGISソフトの開発を進めるとともに、森林資源や施業履歴のデータベース化を行ってきたが、ソフトの利便性や開発コストの抑制を考えて、1999年からArcGISへの切り替えを開始。2001年に完全移行した。

ArcGISの活用

1. 森林用GISの開発

森林管理では、森林の状態を把握するために、樹種や資源量、施業履歴から等高線や河川などの地形情報まで、膨大な量のデータを管理する必要がある。

そこで、同社では、これらの膨大な情報を効率的に管理するため、ArcGISを森林管理用にカスタマイズした「森林管理データマップシステム」を開発した。また、伐採の計画や木材の運搬路である林道を管理するために「架線集材シミュレーション」と「林道管理システム」も開発した。これにより、森林の詳細情報を地図上で視覚的に確認できるだけでなく、空間解析による伐採エリアの抽出、林道の位置や開設履歴の把握などが容易に行えるようになった。

主なカスタマイズの機能一覧(1)
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主なカスタマイズの機能一覧(2)
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2. 森林データベースとのリンク

森林管理データマップシステムは、同社で独自に開発した「森林調査簿システム』(森林データベース)とリンクしており、カード表示機能により、森林調査簿システムのデータを森林管理データマップシステム上でも見ることが出来る。これにより、情報を知りたいエリアを地図上でクリックするだけで、そのエリアの森林情報を簡単に確認することができる。また、森林調査簿システムのデータは、毎年更新を行うことにより最新の状態に維持され、森林の経年的な管理を可能にしている。

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3. 伐採計画の立案

同社では、樹種や成長量などの森林情報からGISの機能を利用して、各エリアの生産目標に応じた分類(ゾ一二ング)を行い、長期的な経営計画に役立てている。特に、北海道では天然林を中心とした伐採事業を行っているため、航空写真から生産目標別の分類ポリゴンを作成し、小班ポリゴンとの空間解析を行うことによって各エリアの生産目標を決定し、伐採計画の立案に役立てている。

今後の展開

全国の山林事業所では、モバイル端末を使った資源調査や林道管理を取り入れている。しかし、山林現場ではGPSのデータが限られた範囲でしか受信できないという山間部ならではのデメリットがある。今後、インフラ整備によって山間部でGPS活用の幅が広がれば、山林現場にいながらリアルタイムで情報収集やデータ作成ができるようになるため、この分野の進展に期待している。また、現在はリモートセンシング技術により、衛星画像を用いて針・広葉樹の分布分類を行い、より精度の高い森圃林の現況を把握し、資源予測を行う予定である。

今後の森林経営は、収集したデータをどのようにして経営企画に活かしていくのかが鍵となる。今後も、さらなるGISの活用を促進していきたい。

プロフィール


山林環境本部 山林部 貝塚 様、有馬 様



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掲載日

  • 2008年1月1日

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