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事例

ArcGISを活用した新北九州空港連絡道路の緑化計画

西日本工業大学

 

地理情報システムと3Dコンビュータグラフィックの融合による緑化景観シミュレーション

平成18年3月、新北九州空港の開港に伴い、空港と東九州自動車道(苅田北九州空港LC)を結ぶ新北九州空港連絡道路が建設された。連絡道路の現状再現、緑化計画、提案を目的として研究を進めている。

全体概要

  

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研究対象道路(黄色の点線の部分が研究対象道路)

  

2006年3月16日に開港した新北九州空港(北九州市小倉南区空港本町)は、これまで運用されてきた旧北九州空港(北九州市小倉南区大字曽根)に代わり、人、モノ、物流の交流のスピード化、北九州を基点とする国際化を目的とし、周防灘の沖合約3kmに作られた人口島に本格的な海上空港として建設された。新北九州空港連絡道路(以下、連絡道路)は、その新しく完成した新北九州空港と陸地とを繋ぐものであり、空港と東九州自動車道(苅田北九州空港l.C)を結ぶ約8kmの地域高規格道路である。この連絡道路の建設により、近隣の街の活性化が進められると同時に、これまでの工場地帯としてのイメージを改善し、緑あふれる街としての新しいイメージを創生するため、街の美観・緑化について検討されている。本研究では、連絡道路を管理する苅田町と連携し、連絡道路の内、国道10号線から松山埋め立て計画地までの約3.5kmを対象にArcGISと3Dコンピュータグラフィック(以下3DCG)ソフトウェアを用い、連絡道路の現状を再現し、緑化計画を立て、その緑化の効果と景観向上について様々な緑化計画を提案することを目的として、研究を行った。

  

現状景観の構築

まず、現状景観を作成するために、はじめに新北九州空港連絡道路周辺地図・道路の計画図面や航空写真等の様々な空間情報データの収集を行った。次に実際に現地へ行き、樹木の調査や、現状の建物や看板の位置確認を行い、それと共にその建物や看板の写真撮影を行った。次にArcGISを利用して、地形情報(国土地理院刊行数値地図50mメッシュ標高)や道路データ(苅田都市計画総括図)を入力し、本研究の基盤となる対象地域のデジタル地図データを整備した。樹木や建物などの30コンテンツ作成に関しては、ArcGIS 3D Analystに付属している多くの3Dシンボルを可能な限り活用することにしたが、日本固有の複雑な形状の建物など容易に再現出来ないものに関しては、3DCGソフトウェアを利用し、3DCGコンテンツを作成した。また、作成したコンテンツに対し、現地で撮影した建物の写真をテクスチャとして貼り付けることにより、よりリアルなコンテンツを作成することに努めた。テクスチャ用の写真加工作業工程としては、画像編集ソフトウェアを利用した。現地で撮影した写真から画像編集ソフトウェアを利用して、写真を要素ごとに分割(例えば、建物とフェンス等)、不要な部分を消去するなど、地道な作業が必要となり、多くの時間を消費することになった。今回の研究では、約3.5km長の連絡道路の周辺のホテル、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、電柱、看板など25点、また連絡道路と交差する国道10号線周辺の民家などのコンテンツを作成した。GISとCGを相互に利用することによる一連の作業により、現状景観を再現するに至った。

  

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現状景観再現の一例

  

緑化シミュレーション

ここでは、様々な緑化案を想定し、緑化前後の様子をシミュレートし、景観改善についての検討を行った。現在の樹木は、中央分離帯にク口ガネモチ、ヤマモモ、ホルトノキが植えられており、歩道側にはタブノキとケヤキが植えられている。このそれぞれの樹木も現地写真を元に現在ある場所に配置した。その後、緑化スペースを抽出し、その場所に幾つかの緑化提案として、沿線上にクスノキを配置、中央分離帯には、ツバキやウコンザクラを配置するなど、2つのパターンの樹木配置シミュレーションモデルを作成した。最終的には、ArcGIS 3D Analystに付属する3D GISビューアであるArcSceneやCGソフトウェアに付属のアニメーション機能を利用することにより、鳥撒や自動車の走行回線による三次元リアルタイム緑化シミュレーションが行えるようになった。新北九州空港連絡道路においての環境・自然・景観が融合した環境都市デザインへの提案や緑化計画の立案など、意思決定に役立つ情報の提供を行うことが出来たと確信している。

【景観シミュレーション結果】

  

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緑化前

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緑化後

  

今後の展開

今回の研究における緑化シミュレションは、2つの提案パターンにて検討を行なったが、今後は様々な形態の緑化提案、また緑化提案に対する景観の評価を行っていく必要があると考えている。景観評価に関しては、感性的な要因が多い。よく使われるSD法は、アンケー卜の調査結果を統計的に分析する手法であるが、定量評価ではない。皆の意見を取り入れるような評価を実現するには、景観評価の定量化が不可欠である。本システムを活用しながら、景観要素の定量化を行っていきたいと考えている。
景観の評価を行う上では、ここで考える景観の定量化の方法としては、下記の4つを想定している。

【景観評価図】

  

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  1. 周辺の物からの投影を単位球で分類と統計
  2. 静止状態の景観と統計値の関係を研究・分析
  3. 走行による景観の統計と分析
  4. 統計による最適な景観の条件分析

プロフィール


周 囲云 教授


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資料

掲載日

  • 2008年1月1日