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事例

過去のデータを蓄積、基本図データベースを作成。他部門との連携に活用

大阪府豊中市

 

道路台帳システムを基にした、自治体GISの先進的取組み

将来を見据えた、積極的なデータ整理、データ利用、情報管理を行う豊中市。その取組みは、先進的な役割を果たしており、今後の自治体GISにおいて政策提言に大きく影響してくる。

概要

大阪市の北部、人口約39万人の住宅都市である豊中市は、情報化政策の中核にGISを据え、住民サービス向上や行政事務の効率化を図っている。豊中市のGIS活用の特色は、デジタル地図情報を庁内LAN上で稼動させ、全庁規模で使用しており、情報政策室が更新・管理する基本GIS情報(基本図データベース)をもとに、各部局がそれぞれのデータベースとリンクさせ、個別の地理情報システムを構築している。

豊中市の取組み

豊中市へのGIS導入は、平成3年度にさかのぼる。当時、土木部には、昭和49年より実施してきた道路区域確定業務により整備・蓄積された基準点約800点と、道路境界点約6万点があったが、これらの成果は積極的に活用されず、管理も十分には行われていなかった。更に、年度、区域毎に整備された基準点について、整合性を保つことも十分されていなかった。

また、道路台帳においては、昭和53年度に市地域全域の航空写真による道路台帳付図の全面図化を、昭和57年度~平成5年度まで毎年更新を行ってきたが、再三の原図修正による精度の劣化が進み、新規に図化する時期を迎えようとしていた。

これらの諸問題を解決するため、豊中市では、平成3年度より3ヵ年で、市全域に2級基準点90点、3級基準点1200点を新たに設置し、道路に関する測量業務について、基準点に関連付けを行うことを義務付けさせるとともに、これらのデータを一元的に管理できるGISを用いた道路台帳システム構築を行う計画を立案した。

平成3年度からの基準点整備、平成7年度の阪神・淡路大震災時にずれた基準点の改測、改算作業を経て、平成7年から3年間を費やして基本図データベース(DM500ファイル)を作成した。整備された項目は330項目にのぼり、デジタルマッピンク手法により作成され、それを基に道路管理業務のあらゆるシステム構築に利用した。

平成10年からは、基本図データベースを情報政策課に移管して維持管理をおこなっており、現在では他部門でシステム構築を行うときは、新たに図面を作成せずに基本図を使用することを徹底させている。また、データ蓄積に使用できるように、標準的なGISデータフォーマットであるシェープ形式に変換できるアプリケーションを実働させることも条件としている。

  

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活用システムについて

道路管理課、財産管理課では、基準点、境界点管理システム、境界確定管理システム、道路敷地管理システム、道路台帳管理システムなどさまざまな管理システムを構築している。その運用方法については、クライアン卜より属性情報をサーバー内のOracleヘ登録し、Arclnfoで地図情報を登録する。現在、多数のデータを管理するのと同時に、クライアン卜からの同時編集を可能とするため、ArcSDEによるデータ管理に向けたシステムや地籍情報支援システムの構築中である。

  

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システム構築にあたっては、職員が日々の業務にGISデータを単に利用するだけでなく、職員自らがデータを登録、更新していくことが可能なシステムとなることを重視している。例えば境界確定支援機能では、通常の明示業務がシステムとして組み込まれており、入力業務を行わないと、境界確定業務が先に進んでいかないように作られている。

成果

数万点に及ぶ基準点、境界点の管理や活用は、このシステムなしではまず不可能であった。また、資料の検索、提示等の窓口業務にかかる時間が短縮され、それにより職員への負担が軽減されているので全体の処理時間は以前に比べて短くなった。
さらに、職員がデータ入力を行うことで、データ更新が常になされ、いつも最新情報で利用できるようになった。また、データ整備、更新費用が600万円/年間と、以前の1割程度となった

おわりに

GIS先進自治体である豊中市は、GIS普及にも積極的に取り組んでおり、地理空間情報活用推進基本法が制定された今回、更なるけん引者として期待される。

そのような状況下において、「今後の政府に期待する点は、実際作業を行う職員の技術向上を行う講習会等を行ってもらうことである。職員は、導入されたシステムを自分の手で操作し、覚えていくことが大切である。自治体GISを広めるためには、職員の意識を改善する必要がある。1年間蓄積したデータを更新させるために委託を出すのではなく、そのつど入力していき、自治体主導で業務を遂行していくことが大切である。」と柳川氏は語った。

豊中市では、今後、GIS基本計画のモデルを作成して、全国の事例となるよう、関係機関との話し合いを進めたいとも考えている。

プロフィール


手前より 柳川主幹、平田主幹、小松係長



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資料

掲載日

  • 2008年1月1日