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事例

萩まちじゅう博物館-HAGIS

山口県萩市

 

萩市におけるGIS を用いた都市遺産情報の公開

毛利輝元が慶長9年に開府。以来400年を契機に、市民参加型まちづくりと観光を促進する情報公開GISを構築し、より一層の地域の活性化を図る。

「萩まちじゅう博物館」構想とは?

毛利36万石の城下町として栄えた、歴史と文化とが調和した町萩市は、歴史の流れを変えた吉田松陰をはじめ高杉晋作、伊藤博文、木戸孝允など多くの維新の志士を育んだ町でもある。このような多くの文化遺産が散在しているといった背景から観光産業に支えられていたが、近年観光客数が大きく減少している。

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堀内鍵曲と夏みかん

2004年の毛利輝元開府400年を契機として「萩まちじゅう博物館」というまちづくり構想が動いている。「萩まちじゅう博物館」構想は、「おたから」(有形・無形文化遺産)が散在するまち全体を屋根のない広い「博物館」とみなし、かけがえのない萩の「おたから」をありのままでの保存、展示をめざす、市、市民、NPO,そして民間業者の連携・協働による新たな街づくりの取り組みである。この壮大な取り組みをとおして、新たな文化活動の創造や地域の景観づくり、そしてより多くの観光客誘致のため文化遺産を最大限に活用するのが目的である。

「萩まちじゅう博物館」の運営はNPO萩まちじゅう博物館と萩市まちじゅう博物館推進課の連携によって行われている。市民主体のNPO萩まちじゅう博物館が主であり、ホストとなるまちづくりを運営することによって、市民主体の活動に発展させることに繋がる。

萩市全域をフィールドとする「萩まちじゅう博物館」はコア、サテライト、トレイルの3つの要素から構成されている。コアは情報展示システムである「萩博物館」、「サテライト」は文化遺産そのもの、または文化・都市遺産を解説するための施設。そして「トレイル」は文化遺産やその関連性そして価値を萩市民や観光客に分かりやすく展示、解説していくための探索路。この新たな仕組みを用いて、エリアごとの特色を活かし、それらの位置的、文化的つながりを市民、行政、そして観光客で共有する。

萩まちじゅう博物館GIS「HAGIS」

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HAGIS-発見の小径
http://hagigis.city.hagi.yamaguchi.jp/
machihaku/osusume.htm

この取り組みの中で、萩市の貴重な観光資源である「おたから」情報を分かりやすく発信、公開、管理するためにGISが採用された。長い間土地に根をおろして動かない事に価値がある有形遺産にとって位置情報は重要である。したがって、利用者が自由にかつ容易に「おたから」の地図閲覧、作成ができるGISシステムを利用者の用途に合わせて構成した。山口県庁や山口大学との連携、そしてGISに不慣れでも容易に操作できるよう簡単にカスタマイズできる事を考慮し、ESRI製品でシステムを構築することが決まった。(この取り組みは総務省の平成14年度地域情報化モデル事業、eまちづくり事業に選定された。)

萩まちじゅう博物館GIS「HAGIS」は以下のように構成されている。

  1. インターネット閲覧:ArcIMS4.0
  2. データ管理、編集:ArcView8.3
  3. 入力用タブレットPC:MapObjects2.2
  4. データベースサーバー:ArcSDE8.3

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システム構造図

HAGISはArcIMS4.0ウェブサーバーとして使用し「まちあるき」のための、地図と観光案内をインターネット配信している。萩まちじゅう博物館内では大型タッチパネル上で表示し、利用者が自分だけの萩まちあるきの地図をその場で作成し、印刷することができる。

萩まちじゅう博物館、萩市役所内ではArcView8.3を使用し、データ作成、編集を行い、高速、かつ効率の良い地図データの格納、管理のためにArcSDEを導入した。

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萩まちじゅう博物館内のタッチパネル

HAGISは情報を配信するのみではなく、利用者が現地で収集した情報を取り込む事ができる。観光客や萩市民がMapObject2.2で作成された入力用GISアプリケーションを搭載したタブレットPCを携帯して「まちあるき」をし、発見した「おたから」(文化遺産)を登録する。そして、萩まちじゅう博物館で管理されている「都市遺産リスト」および「文化遺産データベース」に加えられる。このような情報を位置情報と共にデータベースで管理することにより、市民や観光客への遺産解説に使用できるようになった。価値が再発見された「おたから」は広くまちづくりの資源として生かされている。

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HAGISー城下町絵図宝暦元年(1751年)

萩まちじゅう博物館GISで利用されている地図データは、全て萩市オリジナルで作成された。多くの古地図が現存し、個人所有のものも数多く提供された。特に古くから残る城下町絵図を現在の地図に重ね合わせ、地図から萩の今と昔を見ることかでき、また、古地図をもって、萩のまちを散策することができる。

今後の取り組み

萩市では市民、観光客、行政の共通基盤としてのGISを目指し、HAGISの更なる展開を計画している。観光促進ツールとして、携帯電話のHAGIS閲覧サービスやQRコード等を利用したナビサービスの配信、そして行政サービスのコンテンツ配信や教育現場での教材としての使用など様々な場面でのGISの活用を考えている。

柳井事務局長のお話によると今後豊富すぎる文化遺産コンテンツをより効率よくまとめる事が必須との事。萩市ならではの贅沢な悩みである。こうした情報を分かり易く配信することにより、観光客が再訪するような魅力的な観光都市にするのが今後の課題である。

プロフィール


萩市まちじゅう博物館推進課、NPO萩まちじゅう博物館
左より、柳井事務局長
中尾指導員
総合政策部情報政策課 福島課長



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掲載日

  • 2006年1月1日