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事例

GISを用いた長距離移動野生動物の保全システム

鳥取大学乾燥地研究センター

 

人工衛星を用いたモウコガゼルの移動経路の解明と生息地評価

これまで困難であった生態保全を目的にした長距離移動野生動物の追跡調査に、地理情報システムを活用した国際的な新しいアプローチが行われている。

長距離移動動物保全のためのアプローチ

1940年代の生息数150万頭から現在の30万頭までに激減したモウコガゼル。広大なモンゴル草原に生息し、季節ごとに数百kmから数千kmの距離を移動するこのウシ科の野生動物は、地上での長距離移動観測が困難なためこれまで移動経路が解明されていなかったが、衛星追跡技術・GIS技術・リモートセンシング技術を駆使した動物保全研究によって護られようとしている。

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壮大なモンゴル草原

モウコガゼルは、体長約150cm、体重30kgのウシ科の動物で、かつては150万頭ほどモンゴル草原に生息していたが、現在は30-50万頭にまで減っている。春と秋には数千-数万頭の群れで数百-数千kmを移動するといわれているが、長距離移動観測が困難だったため、実際の移動経路は不明であり、有効な保全対策は講じられないでいる。

衛星を使った野生動物の移動調査は、これまで渡り鳥などでは実績があった。今回モンゴルの大草原を時速80kmで疾走する哺乳類に発信機を付けて衛星で追跡する新しい試みが、鳥取大学乾燥地研究センター、東京大学、モンゴル科学アカデミー、㈱パスコ、山梨県環境科学研究所の共同研究として行われている。

本研究は4年間の計画で、野生のモウコガゼルを捕獲し電波発信機を付け、衛星で受信した位置情報・GIS技術・リモートセンシング画像を用いて解析し、季節移動経路および移動要因の解明と移動ルートを考慮した保護対策の提言を目的としている。

位置情報の取得とGISデータ化

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モンゴル調査地域概略図

研究チームはまず調査地域を2つの地域(オムノゴビとドルノゴビ)とし、それぞれ2頭、計4頭のモウコガゼルを捕獲し、衛星追跡用電波送信機を装着し平原へ返した。

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システム構成イメージ

センサを搭載した人工衛星が上空を通過する際に電波を受信し、ガゼルの位置が算出される。位置情報はフランスの衛星受信施設からインターネット経由でほぼリアルタイムで入手できる。

GIS技術と
リモートセンシング技術によるデータ解析

研究チームは送られてきた緯度経度のテキスト情報をArcViewにポイントデータとして展開した。さらに、NASAの地球観測データサイトより入手したNDV(I 正規化植生指数)データを、ERDAS IMAGINEで画像フォーマット変換を行い、ArcView上でラスタレイヤとして重ね合わせた。

ドルノゴビでの調査では、北部に接するロシアと南部に接する中国とを結ぶモンゴル国際鉄道が、生息地を分断していることがわかった。

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モウコガゼルの位置と衛星画像のオーバレイ

ベクトルデータ(モウコガゼルの位置ポイントデータと鉄道のラインデータ)とラスタデータ(NDVI画像)を重ね合わせることによって、移動経路と植生分布の関連性を解析することができる。さらにラインデータから両側に6つの30kmのゾーンを発生させることにより、それぞれのエリアに含まれるグリッドセルから統計的な解析を行った。

調査期間中、モウコガゼルは冬に鉄道に近い場所を利用していたが、一度も鉄道を越えて東側に入ることはなかった。また、冬季のNDVIは鉄道の東側のほうが高かったことから、鉄道を越えられないためその時期の良い環境を利用できていない可能性が示唆された。

研究成果と今後

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平原へ返されるモウコガゼル

本プロジェクトの調査では、GIS技術によって鉄道がバリアのような役割となり、モウコガゼルの季節移動に影響を与えていることが視覚的に表現された。その後、追跡個体は最大10頭に補充されている。鉄道の影響がない地域では夏と冬の生息地で植物量が季節的に逆転することが示され、長距離を季節移動する理由が説明された。これらの研究成果は、具体的なこれからのモウコガゼル保全対策に生かされるはずである。

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モンゴル草原を移動するモウコガゼルの群れ

プロフィール


鳥取大学乾燥地研究センタープロジェクトメンバー
左から2番目:伊藤COE研究員



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資料

掲載日

  • 2006年1月1日

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