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長岡市電子住宅地図共有システム

長岡市 企画部 情報政策課/危機管理防災本部

 

庁内8割のニーズを満たすGISを目指す!

庁内の8割は住宅地図が利用できれば良いライトユーザだった。まずはそのニーズを満たすことからスタートした。

新潟県長岡市

長岡市は、日本一の大河・信濃川が市内中央をゆったりと流れ、市域は守門岳から日本海まで広がる人口28万人のまちである。
旧長岡市は、江戸時代には長岡藩の城下町として栄えた。戊辰戦争(1868年)と第二次世界大戦の長岡空襲(1945年)の二度にわたって市街は壊滅的な被害を受けるが、「米百俵※」の精神を受け継ぐ市民の力で復興を成し遂げてきた。それに因み、市の紋章は不死鳥をイメージして、「長」の文字を図案化したものになっている。

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長岡まつり(大花火大会)

長岡市は花火王国としても有名である。信濃川では毎年8月1~3日に長岡まつり(大花火大会は2日、3日)が開かれ、正三尺玉花火も打ち上げられる。また、長岡市は歴史のまちでもある。2009年NHK大河ドラマでは新潟県内各地を舞台とした「天地人」が放映されたが、その中で主人公直江兼続が養子として家督を継いだ直江家の居城として、長岡市にある越後与板城が紹介された。
長岡市の合言葉は「前より前へ!長岡人が育ち地域が輝く」である。この合言葉をモットーに全国に誇る市民協働のまちづくりを目指している。
※「米百俵」の精神とは
明治初め、戊辰戦争に敗れ困窮を極める長岡藩に、支藩の三根山藩(新潟市巻)から見舞いの百俵の米が送られた。大参事・小林虎三郎は、「食えないからこそ教育を」とその米を売り、学校建設の資金に充てたことに由来する。「米百俵」は、小泉純一郎元首相の所信表明演説(平成13年5月13日)で有名になった。

長岡市電子住宅地図共有システム

平成17年度、電子市役所を推進するために4つのチームが立ち上がった。

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洪水ハザードマップ表示画面
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ゴミステーション位置表示画面

  1. 電子申請・届出システムチーム
  2. 公共サービス予約システムチーム
  3. 電子決裁・文書管理チーム
  4. 統合型GISチーム

この中で統合型GISチームは、水道局、道路管理課、下水道課、資産税課、都市計画課、農業委員会、危機管理防災本部、情報政策課のメンバーから編成された。本メンバーは、GISヘビーユーザに位置付けられた面々である。
平成18年度、統合型GISチームはいきなり頓挫した。理由は統合型GISを実現するには、高額な予算が必要であることが分かったからである。誰の目にも数億円の予算を獲得することが無理であることは明らかであった。それに加え、GISヘビーユーザであり、また統合型GISチームのメンバーでもある水道局、道路管理課、下水道課などの統合型GISに対する機運が盛り上がらなかった。水道局は既に個別型GISを導入済みであったこと、土木部はGISがなくても業務が回っていたことが理由であったと思われる。
平成19年度は、統合型GISチームに特に目立った活動は無かった。しかし、メンバーの一員である情報政策課の日浦氏は、何か疑問に思うところがあった。今の統合型GISの考え方は本当に正しいのだろうかと。日浦氏自身は、統合型GISチームのメンバーになるまでGISの経験は全く無かった。GISの経験が無かったので、逆に色々と感じるところがあったのかもしれない。
平成20年度は統合型GISのメンバーを一新しての再スタートとなった。従来のメンバーが、水道局をはじめとするGISヘビーユーザで編成されていたのに対し、新チームは、GISライトユーザに位置付けられた、福祉総務課、危機管理防災本部、環境業務課、選挙管理委員会、情報政策課のメンバーで編成された。新チームの名称は「電子住宅地図共有システムプロジェクトチーム」であった。
新チームの掲げた目標は、「高度なGIS機能及び高精度の基図を必要としない部署において、電子住宅地図の参照、検索、主題図の作成等の機能に特化した簡易型のGISを構築すること。」であった。要約すると「住宅地図が利用できれば業務が回る8割のGISライトユーザのニーズをまず満たす。」というものであった。
8割のGISライトユーザニーズを満たすシステムとして、長岡市電子住宅地図共有システムは構築され、平成21年3月に公開された。
本システムの評価は高く、今では多くの部署で無くてはならないものになっているそうである。

「国土交通省のGISパンフレットをはじめて見た時は、GISは難しいと正直思いました。ただ、ESRIジャパンさんの事例集などを見ていたら、難しい事例がないことにある時ふと気が付きました。もしかして、GISを難しく考え過ぎているのではないかと。このことがきっかけで発想を転換することができました。これまでの調査結果で、庁内の8割は住宅地図が利用できれば良いということが分かってきました。そのためその8割のライトユーザニーズを、まず満たすことを考えました。今では、誰でも庁内ポータルから本システムを簡単に利用できるようになっています。環境業務課では、毎年新しい紙の住宅地図が届くとそこにゴミステーションの位置を書き込んでいたそうです。それは本当に膨大かつ面倒な作業だったそうですが、それが本システムの導入により作業量が激減したそうです。電話対応では、各種質問に対し、毎回地図を広げて探しながら対応していたので、すごく時間がかかっていたそうです。それが原因で市民の方が怒り出すこともよくあったとか。それが本システムでは、一発検索ですぐに目的の地図が出てくるようになり、大幅な時間短縮が実現され、怒る方も激減したそうです。このように色々な部署での成功事例を耳にするようになり、本当に嬉しく思っています。」と情報政策課の日浦氏。

今後の取組み

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作業風景

「私は新チーム結成の際にメンバーに加わりました。私達の業務も住宅地図を見られる環境があるだけで、かなり業務効率がアップします。今後は本システムを危機管理システムに応用していきたいと考えています。」と語るのは危機管理防災本部の桐生氏。
「長岡市では、毎年社会科見学で中学生が数日、各種業務を体験します。平成21年度は情報政策課に中学2年の生徒が来ました。その時に本システムを使って、洪水シミュレーションを見せてあげたり、簡単な主題図を自分で作らせたりしました。物珍しさからかとても喜んでいましたよ。生徒が喜んでいる姿を見て、私自身もGISって面白いなと改めて感じました。現在のシステムは、8割のライトユーザのニーズを満たすものです。しかし庁内には、まだ2割のヘビーユーザがいます。次はこのヘビーユーザに満足して頂けるように拡張していかなければならないと考えています。そして最後は住民サービスの向上を目指した公開型GISへの発展を考えています。ハザードマップをはじめ、公開しなければ意味のない地図は沢山ありますので、GISを利用してそれらを広く市民の方々に周知していかなければと考えています。そしてGISが長岡市民へのサービス向上の一助になることを願っています。」と最後に日浦氏は今後の思いを語ってくれた。

プロフィール


日浦 陽一 氏(左)、 桐生 克章 氏(右)



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資料

掲載日

  • 2010年1月1日