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事例

ウォーカブルシティ つくば

筑波大学大学院 生命環境科学研究科 空間情報科学分野

 

つくば市中心部の歩行環境をGISにより定量的に評価し
住民が活用できるWebGISで公開

居住者にとって満足度が高く、実際に歩きたいと思う歩行環境を、「Walkability」という概念で評価。居住者の歩行行動を促進することが期待される。

イントロダクション

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つくば市内の公園を
ジョギングする人々

生活習慣病対策など人々の健康づくりに対する関心が年々高まっている。その健康づくりを支援するための環境要因の1つとして、居住地周辺の徒歩に関する環境要因を評価・考察したのが本研究である。

筑波大学大学院 生命環境科学研究科 空間情報科学分野の村山教授らのグループは、居住者の意識を考慮し、居住者にとっての満足度が高く、実際に歩きたいと考える、「歩行環境」の優れた地域を定量的に把握する研究を平成17年度から行っている。その際、居住地周辺の環境について、GISを用いた客観的な評価指標を用い、歩行環境をWalkability(歩きやすさ・歩きたいと思うこと)という概念で評価することにした。

研究対象地域は、計画当初から徒歩での移動を念頭においてまちづくりが進められ、環境都市(エコシティ)を目指す茨城県つくば市の中心部(つくば駅を中心とする東西5km、南北2km)を対象とした。つくば市中心部には、ペデストリアンデッキが整備されており、またこれと接続するように公園も多く存在していることから、日夜を問わず、ウォーキングやジョギングをする人々を目にすることが多い。

研究手法

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アンケート回答者の総合満足度分布図
(中心部に満足度の高い赤丸が多い)

対象範囲内で、無作為世帯抽出によるアンケートを実施し、歩行環境に対する総合満足度や周辺の歩行環境の評価を調査し、歩きたいと思う要因は何かを探った。

総合満足度の結果を地図化したところ、中心部では、「満足」「やや満足」の回答者が約7割近くに達した一方で、周辺部では、「不満」「やや不満」という回答の比率が高まっていることが分かった。

また、周辺の歩行環境は、以下のような質問項目(全12問)に対して、5段階で評価してもらった。

この歩行環境評価をまとめた結果、居住者は歩行環境として、安心・安全であること、そして快適であること(緑が多い、景観がよいことなど)を重視している傾向が読み取れた。

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アンケート回答者周辺の歩道設置率
(中心部に設置率の高い赤丸が集中している)

次に、回答者の各居住地から道路距離500m圏内(徒歩で日常的に歩く範囲)の、周辺環境について、歩道総延長、歩道設置率、四差路数、公園数などの項目についてArcGIS Network Analyst等を用いて算出した。

総合満足度の高い地域と重ね合わせてみたところ、歩道設置率が高い地域や大規模公園まで徒歩圏内の地域とよく一致することがわかった。これは、「歩きやすさ」「歩く機会の多さ」「歩くときの快適さ」などが高く、「総合的な歩きやすさ(=Walkability)」の高い地域といえる。

研究成果の公開

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4つに分類した歩行環境をWebGISで公開。地域
によって歩行環境が異なっていることが分かる。

本研究で得られた成果を、散歩やジョギングのコース設定の手助けにしてもらうことを目的として、WebGISによる公開を行っている。

その際、一般市民にとって分かりやすい表現で歩行環境を示す必要がある。先の周辺環境の算出結果とアンケート回答による5段階評価をもとに分析を行った結果、歩行環境を5つに分類することができた。そのうち、歩行に適した4つを以下のように表現することにした。

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沿道の緑の多さをWebGISで表示。
集合住宅地区は多めに植樹がされている。

WebGISで公開するにあたっては、電子国土、Google Earth、 ArcGISServerの3種類を利用した。ArcGIS Serverによる公開では、背景地図として、QuickBird画像、ゼンリン住宅地図、数値地図25000を使用した。また、iタウンページの情報を利用して、レストラン、コンビニなどの施設情報位置と属性も表示できるようにした。

さらに、アンケート結果から、緑の多さを歩行環境として重視していることがわかったので、ALOS画像をもとに、バンド3と4を使用して植生指数(NDVI)を求め、この値を5段階に等量分類し、道路の属性に付与して歩行する沿道の緑の多さを地図化した。

このWebGISの特徴として、実際に市民に使ってもらうことを意識したつくりになっていることがある。それが印刷機能であり、オンラインヘルプである。また、つくば市は外国人も多く滞在しており、彼らは日本人以上にジョギングに関心がある一方で、地理に不慣れなことから、外国人にも気軽に利用できるように、メニューは英語と日本語の両方を併記している。

今後の展開

歩行に必要な情報として、ベンチとトイレの情報については、PDAとArcPadを使って現地調査を実施した。今後、さらに、駐輪場やAEDの設置場所を追加する予定である。また、季節により植生の種類や緑の多さが異なり、それによる歩きやすさ、歩きたいと思うコースも変化すると思われるため、各季節の植生指数を提供することも計画している。
WebGISについては、散歩コースを自由に作ったり、それを共有できるような住民参加型WebGISをすすめていく予定だ。

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掲載日

  • 2010年1月1日