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電子市役所の基礎づくりと情報システム全体の最適化を目指す

長野市 総務部 情報政策課

 

組織全体として最適な共用空間データ整備と統合型GISの構築

庁内で利用する地図情報を共用空間データとして一元的に整備・管理し、各部署において活用する「汎用GIS」の構築

導入経緯

長野市は面積約730平方キロメートル、人口38万人余の都市である。善光寺平を中心に発展、豊かな自然と、多くの貴重な文化財を有し、観光地としても有名で、歴史と伝統が息づくまちである。

長野市におけるGISの導入は、約10年前に始まった。当初は、道路、都市計画、農政など、業務別の個別GISであった。しかし、機能が限定されていたことや、各システムで別々に基図を整備し、他のGISで共有が困難であることなどの課題があった。

そんな中、平成17年度に「情報システム最適化事業」が実施され、全てのシステムに関する現況把握の一環として導入済みGISの把握と、各課へのヒアリングを行い、統合型GIS整備計画を策定し、平成18年度から整備が開始された。

同年、5ヵ年の「第二次長野市高度情報化基本計画」を策定。この計画を、情報通信技術の活用により長野市高度情報化の将来像である「人と地域がつながるまち」、そして電子市役所を実現させる第一歩として位置付けた。

本計画では、電子市役所の基礎づくりと情報システム全体の最適化を目指し、次の4つを重点施策と定めた。

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  1. たまご型モデルのシステム基盤整備(注1)
    -庁内における情報共有の促進と情報セキュリティ対策の強化
  2. ITガバナンスの強化
    -ITガバナンスの強化によって、”情報化推進の意識改革”を実現
  3. 地域情報化の促進
    -必要性や費用対効果を考慮し、迅速かつ効率的に地域情報化を促進
  4. システム共通化・共同利用の実現
    -全庁的な共通システムの導入による業務効率化・システムコスト削減

上記のうち、4の具体的な整備内容として、統合型GISの構築が含まれており、組織全体として最適な共有空間データと統合型GISを、組織を横断した最適な手法と統一的な仕様により整備することとなった。

(注1)
情報共有・活用の促進を「たまごの中身」、情報セキュリティ対策の強化を「殻」に見立てている。

統合型GISの整備内容

統合型GISを整備するにあたり、最優先とされたのが、庁内のGISデータの整備と、それを効率よく利用できるような仕組み(共用空間DB)の構築であった。この共用空間DBの整備は平成18年4月から開始され、現在、このDBに含まれるものとして、DM、道路台帳、地番図、家屋図、基準点、オルソ画像などがある。

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統合型GIS構想図

これを参照する形で、職員向けに汎用GIS(WebGIS)が、平成20年7月に本稼動開始、さらに市民向けのWebGISが平成21年6月に本稼動を開始した。
一方、個別業務向けGISの構築も平行して行われ、水道GIS、都市整備GIS、建設GISが稼働中で、財政GIS、農政GISが構築中である。これらの個別GISでの共通の背景データとしても、共用空間DBが利用されている。

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汎用GISトップページ画面

共用空間DBの構築及び汎用GISの構築にあたって直面した課題について、担当の情報政策課の岩﨑氏は、「まず自分がGISの勉強をしなければならなかった。そして、関係部署との調整において、関係職員にもGISを理解してもらうのが大変だった」と振り返った。

汎用GISを構築するにあたっては、全庁にヒアリングを行った上で、どの課でも共通して利用する機能を実装するように調達要件を整理した。庁内の職員が使用するPCは「シングルサインオン」を採用しており、汎用GISトップページを開いた時点で、その職員がアクセスできるサービスのみが選べるようになっている。このサービスは課ごと、そして個人情報へのアクセスレベルごとに細かく設定されている。どのサービスにおいてもGISの機能や操作方法は同じで、アクセスできるレイヤが異なる。

汎用GIS、個別業務GISでもカバーできない業務もある。そこは、ArcViewやArcEditorをカスタマイズせずにそのまま活用している。防災情報や水道、都市計画業務などにおいて、事業計画の参考資料として、特に三次元可視化の需要が高まっている。

導入効果

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WebGIS画面

統合型GISを導入したことで、以下の効果が今後期待できる。

  1. 市民サービスの向上
    -問い合わせ対応の迅速化、提供する情報の高度化・多様化
  2. 業務効率化とデータ精度の向上
    -システム及び情報の共有による業務効率化
    -システム集約による契約・運用業務の効率化
    -データ不整合の回避
  3. 経費削減
    -GISデータ整備・更新費用の削減
    -システム集約による更新・運用費用の削減

経費削減については、今後出てくるニーズも現在の統合型GISで吸収するという方針だ。

おわりに

今後の課題として、職員へのトレーニング、データ更新、全庁を見渡した調整などが挙げられる。
岩﨑氏はGISについて、「基幹システムであり、組織を動かすもの」と述べ、今後の意気込みについて、「専任のGIS担当者が必要だという認識が庁内に広まるようにしていきたい」と抱負を語った。

プロフィール


係長 岩﨑 浩二 氏(右)
主査 駒村 克規 氏(左)



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資料

掲載日

  • 2010年1月1日