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エチゼンクラゲの出現情報の公開で漁業被害を軽減

社団法人 漁業情報サービスセンター

 

有害生物出現情報 WebGISシステムの拡張により、モバイル端末から情報の確認が可能に

日本近海域における有害生物の出現情報を公開することで、漁業被害の軽減を目指す。
その目的遂行の支援にGISを利用する。

漁業情報サービスセンター

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定置網に入網した大型クラゲの排出作業の様子。
漁師の手によって、1つずつクラゲを網から
出さなくてはならない。

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大型クラゲにより漁獲物の表面が傷ついてしまう。

社団法人 漁業情報サービスセンター(JAFIC)は、昭和47年に漁海況情報の充実・迅速化を図る見地から設立された。

設立以来、漁業情報の効率的な利用の促進及び漁業経営の安定を図るとともに、漁業に関する情報技術の振興に寄与することを目的として日々活動している。

そのJAFICの重要な事業の1つに、有害生物等情報配信システムの運用がある。これは、2005年の大型クラゲ(エチゼンクラゲ)の突然の大量出現がきっかけとなっている。大型クラゲは、大きいものでは傘径が2メートル、重さ150キログラムにまで成長する。過去にも大型クラゲの出現は確認されてきたが、2005年の大量出現は、これまでに類を見ない程であり、その被害も甚大であった。更に2009年においては、2005年を上回る大量出現と、より広範囲な地域での被害が確認され、漁業関係者を一層悩ませることとなった。

大型クラゲによる直接的な被害に遭ったのは、定置網漁と底曳網漁だ。魚網の中に大型クラゲが入り込んでしまうと、その重さで網が破損してしまったり、引き揚げ作業が困難となる。更には、大型クラゲの入網により漁獲物が傷つき、漁獲物の取引価格にまで影響を与えてしまうことさえある。

有害生物等情報配信システム

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有害生物等情報配信システムの構成図

有害生物等情報配信システムは、2005年の大型クラゲの大量出現を契機に実施された「大型クラゲ被害防止緊急総合対策事業」の一環として運用されている。本システムでは、様々な関係者へ、適切な情報をGISを活用する事ですばやく配信している。

JAFICでは、本事業を開始した当初よりArcGISで作成したマップをPDF形式で配布する一方、WebGISを使った情報共有にも取り組んでいる。PDF形式の提供と比較して、WebGISでは、1つの画面で時系列のデータを表示させたり、閲覧したい範囲をユーザが任意に選定する事ができる。また、海底地形や水温等の情報を重ねた状態で、大型クラゲの出現状況を条件に沿って絞込む事が可能であることもWebGISの強みである。

  

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FAXによる通知やPDF形式の情報は、その時点での情報がすばやく知りたい漁業者から重宝されている。WebGISに関しては、県の職員や水産試験研究機関の関係者から好評を得ている。その理由としては、自分達が関わる地域だけでなく、その周辺の出現情報も一度に確認する事が可能であり、また過去の状況を確認することで、地域と時系列の比較検討に有用であるからである。

スマートフォンの活用

JAFICでは2010年より、更にユーザの利便性を向上すべく、スマートフォン向けのWebGISを配信する事を試験的に開始した。これまでも一般的な携帯電話向けに、クラゲの出現情報をテキストで配信してきていたが、地図機能を加えたモバイルGISの活用は、新しい試みであった。

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Windows Mobileを搭載した
スマートフォン向けに開発した
WebGIS。インターネット経由
で大型クラゲの出現状況を確認
できる。地図の移動、拡大、縮小、
属性表示はもちろんのこと、
絞込み検索も可能となっている。

開発を担当した株式会社パスコとも相談して、モバイルOSはWindows Mobileを、そしてモバイル用GISエンジンには、ArcGIS Mobileを採用した。WebGIS用サーバにArcGISServerを採用していたことから、開発を限られた時間で完了させることができた。これにより、今までPCでしか見ることが出来なかったWebGISを、モバイル端末で閲覧、操作が可能となり、どこにいても素早く簡単に出現情報を確認する事ができる環境を整えることができた。

今後の展開

有害生物等情報配信システムの今後について質問をすると、「取り組んでみたいことはいろいろとあります。」と斎藤氏。
「まず1つは、スマートフォンの可能性に興味を持っています。特にAndroidの台頭により、スマートフォン市場に変化の兆しが出ていると思います。現在のJAFICの配信システムではWindows Mobileのみに対応していますが、この先は対応する端末を格段に増やすことが出来ればと思っています。もう1つは、配信コンテンツの充実です。現在は大型クラゲが主ですが、水クラゲ、トドやナルトビエイ等、他にも漁業にとっての有害生物が報告されています。また赤潮等の情報も漁業関係者にとっては重要です。これら有害生物の情報に加えて、海洋情報(海底地形、水温分布等)を包括的に提供できるポータルサイトを実現したいと考えています。これにはGISの技術が重要になると考えています。」

これは当初からの構想であるため、JAFICでは大型クラゲの情報を管理するデータベースを設計する際に、将来管理する有害種が増えても対応できるように構築されている。ただし、データ収集の過程においては日本全国の漁業関係者の協力があってこそ可能である。「漁業被害をみんなで協力して軽減させるといった意識を、多くの方と共有していきたいと思います。」と斎藤氏から今後の抱負をまとめて頂いた。

大型クラゲの大量出現の原因はまだ解明されていない。ただし、過去5年間を振り返ると、発生数が少なかった翌年は大量発生をしている傾向も見られることから、JAFICでは2011年の動向に注目している。漁業被害を軽減するためにも、データ収集から情報共有の体制とシステムを持つJAFICへの期待は大きいだろう。

プロフィール


事業1課 課長 斎藤 克弥 氏



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掲載日

  • 2011年1月1日

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