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事例

効率的・効果的なガバナンスに空間データ基盤を活用

アラブ首長国連邦

 

アラブ首長国連邦アブダビ政府では、空間データ基盤の強化により包括的eガバメントプログラムを実施

政府や関連機関が空間データの効果的な利用、共有を促進するためのフレームワーク(アブダビ空間データ基盤)を活用。

  

イントロダクション

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ヤス島の衛星画像、2009年IKONOS 1m解像度
(Space Reconnaissance Center提供)

アラブ首長国連邦の首都でもあるアブダビ首長国では、今日、首長国政府が、最新テクノロジを利用し持続可能なエネルギー、経済、環境など幅広い分野においてイニシアチブを取っている。リアルタイムでの空間データの収集、保存、配信は、空間データの基盤を維持し、首長国政府や企業が活動を円滑に進めていく上で、とても重要な役割を果たしている。アブダビ空間データ基盤(AD-SDI:Abu DhabiSpatial Data Infrastructure)は、アブダビ システム・情報センター(ADSIC:AbuDhabi Systems and InformationCentre)が中心となり運営しており、政府や国民による質の高い最新地理空間データへの簡単なアクセスを推進している。アブダビの各政府機関は、それぞれのニーズにあったGIS技術および地理空間データの整備に注力している。そして、地理空間データの効果的な利用、共有に必要不可欠な組織的能力を養い、より効率的、効果的なガバナンスの実現を目指している。AD-SDIは、そのためのフレームワークである。

  

導入手法

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アブダビ大縮尺ベースマップ
(アブダビ市提供)

2007年6月、ADSICは、AD-SDIイニシアチブを開始し、アブダビで地理空間情報の効率的な活用、共有を支援、促進するため、スタッフの能力や技術、手順、データ、政策、規定に関するフレームワークの提供をスタートした。AD-SDIは、データクリアリングハウス、地理空間ポータル、ウェブサイト、そして、データの提供や共有に関して定めた公の協定、参加コミュニティ間の調整等のための幅広いプログラムを包括している。空間データセンター(SDC:Spatial Data Center)の作業チームはArcGISパッケージ製品を利用し、データ処理、データチェック、評価、マップサービスの配信、GIS分析等を行いプロジェクトごとに地図を作成している。Esri社のテクノロジはAD-SDIのクリアリングハウスや関連メタデータカタログの構築、RESTやSOAP対応のサーバ サービスやモバイルGISアプリケーション開発のために利用されている。FlexやJava等のAPIを利用してアプリケーションを構築し地図を閲覧することもできる。

AD-SDIスタッフは、様々な場でAD-SDIイニシアチブおよび関連する様々な機関の代表メンバを支援している。例えば、ADSDI技術委員会での会議や討論を進めたり、地理空間データの維持、更新に関する取り決めを作成し実施している。さらに、セキュリティ、公共安全、ユーティリティ、環境などの各分野において活動する人々に働きかけ、積極的に協力や協調の場を創り出している。

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「アブダビ空間データ基盤(AD-SDI)」
ホームページ

現在、このプロジェクトは最終段階の第3ステージにある。このイニシアチブには40近くの政府および政府関連機関が参加しており、2011年はさらに多くの機関が参加する見込みである。地域開発の一環として、ADSICは、ライセンスやデータサービスに関する詳細な規定、例えば、データの提供、アクセス権限、また、データ更新のタイミング、公開の可否などについて、各参加機関と協議している。又、所有権、個人情報、セキュリティに関する地理空間法の整備も進めている。

適切なデータ、技術、手順などの標準化を図ることは、AD-SDIコミュニティ間でデータの相互運用性を保ち、地理空間データの不一致や重複を防ぐ上で非常に重要であり、AD-SDIコミュニティの間ですでに蓄積されているGISデータや従来の作業方法を統一する為には、関係機関の積極的な参加が不可欠である。
今日、地籍、オルソ画像、標高、交通、土地利用、土壌、ユーティリティなど首長国連邦が有する基本的な空間データセットは、政府の各担当機関が維持、管理している。現場で発生した変更は、それぞれの担当機関が記録し、空間データを更新するという手順を踏んでいる。このようにAD-SDIコミュニティ全体で利用可能な空間データは、タイムリーに更新、維持されている。
地理空間メタデータカタログは、AD-SDIで標準化を維持する上で、もう一つの重要な仕組みである。データクリアリングハウスにある全てのレイヤには、ジオポータルを介しアクセス可能なメタデータが付属している。メタデータは、従来、ADSICチームによりまとめられていたが、今ではデータサービスに関する取り決めとして各担当機関がデータ維持の責任を負うよう条件付けられている。
Esri製品を利用している組織は、ArcGIS Desktopを利用しデータを維持することができ、そうでない組織は、一度権限さえ与えられればジオポータルを介して、または、ISO標準のメタデータ維持ツールを利用してデータを更新することができるようになっている。

  

導入効果

AD-SDIイニシアチブの最終目的は、政府機関または関連組織によるネットワークを構築し、データの相互運用性を高めることにある。つまり、首長国連邦にある全ての空間情報に簡単にアクセス可能なジオポータルを構築することである。現在、ジオポータルは、セキュリティ設定により安全性を確保しつつ、誰でもアクセスが可能となっている。そして、日々、情報が蓄積、更新されている。
AD-SDIジオポータルは、コミュニティに公開されている300ものマップ レイヤを有するデータクリアリングハウスへのアクセスを提供している。担当機関は、ADSICチームへ更新情報を提供し、ADSICは、標準化された規定に基づき、データを最新、且つ正確に保っている。

AD-SDIは、コミュニティから多くの支持を受け、以下の通りコスト削減にも役立っている。

  

まとめ

これらのポータルサイトの運用は、アブダビでの空間データの利用と共有を促進しており、日々、関係機関に勤務する多くの職員がジオポータルの優位性に気付き利用し始めている。

プロフィール


Mohammed Ahmed Al Bowardi 氏



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資料

掲載日

  • 2011年1月1日