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事例

3万端末の接続を可能にした巨大統合型GIS

大阪市計画調整局 都市再生振興部

 

3万9千人の大阪市職員による全庁利用

年間3億円のGIS関連業務コストを削減するため、庁内に散在する16の個別GISの最適化、
業務時間の短縮、高度利用を目的としたGISを導入

  

イントロダクション

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大阪市庁舎

大阪市では、建設、道路、上下水道、都市計画、市所有地管理などの用途で各部局に個別にGISが導入されている。これらの個別GISが、平成19年度には庁内に16存在し、ハードウェアとソフトウェアの運用コストとして年間約3億円の費用がかかっていた(地図整備費用は含まず)。これらのシステムがそれぞれリプレイスの時期を迎え、更新及び運用費の計上を計画していた。

  

導入手法

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都市再生振興部にて

この計画にあたり、計画調整局では、業務時間と地図整備の一元化によるコスト削減(個別GIS利用の最適化)と、今までGISを使った事のない職員を含む全ての職員による利用推進(全庁的GIS利用推進)を目的として統合型GISの導入を目論んだ。成功すれば、3万9千人の職員が利用し、3万端末が接続する統合型GISが構築される。しかし、庁内からは、「GISは既にあるではないか」という声が多く、また、便利になるからという理由だけでは市民の理解を得る事は難しい状況だった。そこで、大阪市計画調整局長自らが指揮を取り、推進体制作りからスタートした。「統合型GIS推進プロジェクトチーム」を立ち上げたのである。

計画調整局は、導入及び開発に、2年間で統合型と公開型の両GISに1億3千万円の予算を計上し、安定時期には年間1億円のコスト削減が可能であるという試算を行い、執行会議に承認された。

導入にあたっては、前例の無いような大規模GISを構築する上で、ArcGIS Serverの性能が評価され、国際航業様により開発されるアプリケーションを支えるプラットフォームとして採用された。

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システム構成図

導入効果

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大阪市統合型GISインターフェイス

平成22年1月25日に大阪市統合型GISの運用がスタートした。都市再生振興部の西田壮一担当係長は、「全庁的なGIS利用推進」に手応えを感じている。「今まで紙地図しか使っていなかった職員がGISにより業務を大幅に効率化できることに気付いたんです。」「これまでは、住所を頼りに紙地図に数万のポイントを落としていた作業が、Excelから住所を取りこみアドレスマッチングをかける事によって一瞬にして電子地図上にポイントが落ちるんです。」「以前は統合型GIS導入に反対していた職員にも、“これがGISですか!”と驚きをもって受け入れられました。」

西田担当係長は、かつて大阪市都市工学情報センターに在籍したGISのエキスパートである。その氏がいかに現場の職員にGISを教えたのだろうか。その答えは意外なものだった。「“GIS”という言葉はIT用語としては発展途上であり、職員にはリテラシがありません。」「また、GISを扱う上で必要な知識は短時間で習得できる物ではありません。一から説明していたのでは庁内には広がらないんです。」

「例えば、アドレスマッチングを説明するときに、平面直角座標系から説明しても解ってもらえません。」「今までは住所だけでしたよね?これが座標になるんです。学校で習った座標と同じです、と説明すれば解ってもらえます。」
「GISを一から全部説明しようと思ったら進みません。広める為には、まず解りやすくGIS抜きで説明することが大切です。」

GISのエキスパートが現場の職員の目線で、活用してもらうにはどうしたらよいか考えた結果、まずはGIS自体を説明しないという結論に至ったのだ。

「3万9千人の職員のうち、道路に携わる職員はミリ単位、都市計画はメートル単位、その他の業務は10メートル単位の精度で地図を利用しています。それぞれの業務の目線に立ってシステムの使い方を説明するとすんなり受け入れてくれるようでした。」

  

今後の課題

前述のように、3万もの端末を接続しつつ、現場の職員からはスムーズなレスポンスを求められた。「職員の皆さんに使ってもらうには、必要な情報をさっと閲覧できる操作感が必要なんです。」「高度な解析機能は一部の職員にとっては必要ですが、大部分の職員のスムーズな閲覧に対するニーズに応える事が今後更に重要になってきます。」と辻成和担当課長は語る。

コスト削減に関する目標を達成できるかが直近の課題となって差し迫る。平成23年度~24年度で、運用コストが削減されている事を証明しなればならない。平成24年度に報告書及び今後の計画案が一定の評価を受ける事ができれば、平成25年度以降もシステムの運用を継続する事が可能となる。平成22年度が終了しようとする現在、正念場に差し掛かかっている。建設、下水、私有地・公有地管理を重点に、更に全体の最適化で年間1億円のコスト削減に挑む。

プロフィール


辻 成和 担当課長 (左)、西田 壮一 担当係長 (右)



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資料

掲載日

  • 2011年1月1日