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京都市防災マップの作製と公開

京都市消防局

 

住民主体の防災活動による社会の防災力向上へGIS はどのように活用できるのか

京都市消防局は京都市防災マップ検討委員会を設置し、GIS を活用した防災マップの作製に取り組んだ。

京都市防災マップ検討委員会

京都市は京都府南部に位置する府庁所在地で、人口約147万人、面積約828平方キロメートルの政令指定都市である。京都市の約60%を占める山麓部は潜在的な土砂災害の危険性を持ち、京都盆地は桂川・鴨川・宇治川・木津川の合流する地域であることから、歴史的に洪水の被害を多く受けてきた。また、京都盆地は断層の動きと川の運ぶ堆積物でできた地形であり、盆地の周りには花折断層など多くの活断層が確認されており、地震被害の記録も多い。

地震被害想定マップ(例)
地震被害想定マップ(例)

  

2003年5月、災害や防災活動に対する市民の理解と協力を深め、自助・共助に根ざした、住民主体の防災活動の取り組みを更に促すため、京都市防災会議地震洪水等対策委員会の下に、京都市防災マップ検討委員会が設置され、防災マップの作製が始まった。

京都市は人口の多い大都市であると同時に、歴史都市として伝統的な木造建築物が多く、大規模災害の発生時は交通機関の麻痺、老朽建物の倒壊や延焼など、様々な被害が複合的に発生する可能性が高い。大規模災害による被害を最小限に留めるには、行政の取り組みだけでなく「自らの命、自らのまちは地域で協働して守る」という自助・共助に根ざした、住民主体の防災活動が重要であり、京都市防災会議で策定される京都市地域防災計画でも、住民主体の防災活動の充実を重点の一つとしている。

京都市防災マップ検討委員会は、京都大学防災研究所 林 春男 教授を委員長に、震災・水害の研究者、地域の防災関係者、行政の専門家に市民公募委員も参加して、京都市消防局防災危機管理室を事務局に、2004年より開始された。防災マップ作製業務に関しては株式会社パスコが担当することとなった。

防災マップとGIS

京都市防災マップ検討委員会は、防災マップの役割を次のように定義した。

防災マップの役割
防災マップの役割

  
  1. 被害の予測
    災害の種類による違いや特徴を理解し、自分の住む街の危険性を知る。
  2. 避難の選択
    どのタイミングで、どこへ、どのように避難すべきかを予め学習する。
  3. 効果的災害学習
    これまで少なかった、複合災害を意識した学習にも使えるような教材とする。
  4. 長期的な土地利用の誘導
    居住・産業・観光地の適地選定や、減災対策の検討に適用できるものとする。

これらの要件を満たす防災マップを整備するため、水災害・土砂災害・地震災害に関して、京都市全域の災害予想図を一覧できる「全市版」と、自分たちのまちに関する詳細を知ることのできる「各区版」、そしてこれらの総集編的な内容となる「冊子版」の三種類の防災マップを最終成果物として出力することになった。そして、災害の被害想定図やシミュレーションデータ、これまでの災害データや土地利用図など様々なデータを任意に重ねあわせ、分析・表現できるツールとしてGISが活用されることになった。

防災マップの作製

防災マップの作製は関係組織・部局が持つ既存のデータを整理し、マップの要件に適合したデータを選択することからスタートした。国土地理院・国土交通省・京都府・京都市など多くの行政機関から、共通データとして使用される背景地図・防災施設・その他施設データ、そして水災害・土砂災害・地震災害マップごとの主題となる浸水深ランク・土砂災害危険箇所・震度分布などのシミュレーションデータや断層・浸水実績範囲などの調査データが収集・分類された。また、航空レーザー測量により得られた微地形データや、過去の被害データの存在は、より詳細で効果的な防災マップの作製に役立つ結果となった。

2003年9月から2005年1月まで計8回開催された、京都市防災マップ検討委員会では、特に2004年に開催された第5回以降の会議で、収集されたデータから得られる暫定版のマップやシミュレーション結果を参照しながら、国や府が解析対象としない河川の浸水想定空白地域の処理方法や、より理解しやすいマップの作製などについて協議された。協議の結果発生した、主題の追加や地図表現の変更には、ArcGISソフトウェアの持つ潜在能力が大いに生かされた。

まとめ

地元新聞記事
地元新聞記事

  

京都市防災マップは2004年8月に全市版が配布され、その後2005年2月,3月に各区版、冊子版が配布された。全市版、各区版の防災マップは京都市が約65万世帯の市民向けに毎月配布する「市民しんぶん」で配布された他、京都市役所のホームページでも公開されている。地元新聞紙で紹介されるなど、防災に関する意欲的な取組として注目を集めている。

2005年7月、米国サンディエゴで開催されたESRIUser ConferenceのMap Galleryに出展された、英語版デザインの防災マップは、「出版物:地図シリーズ・アトラス部門最優秀賞」及び「総合最優秀賞」を受賞した。世界の90カ国以上から13,000人以上もの参加者が集うカンファレンスでの受賞は、これまで京都市が取り組んできた内容が高く評価された結果である。

京都市防災マップは2004年8月に全市版が配布され、その後2005年2月,3月に各区版、冊子版が配布された。全市版、各区版の防災マップは京都市が約65万世帯の市民向けに毎月配布する「市民しんぶん」で配布された他、京都市役所のホームページでも公開されている。地元新聞紙で紹介されるなど、防災に関する意欲的な取組として注目を集めている。

京都市防災マップの整備から、主として次の四点の課題が見えてきた。

ESRI USER Conferenceに出展されたマップ
ESRI USER Conferenceに
出展されたマップ

  
  1. 地域防災計画への反映
    防災マップの整備により、各種防災関連施設の設備増強や、最適な配置などに関する課題が見えてきた。
  2. マップの活用
    自主防災組織での周知や、学校における教材としての活用などを進める必要がある。
  3. マップの更新
    最新情報の反映や、住民アンケートなどに基づいた、より使いやすい改良が必要である。
  4. 高精度かつリアルタイムな情報発信
    特に浸水情報に関しては、避難時の二次的災害を防ぎ、要援護者の住居状況を確認するために、GISの高度な活用が求められる。

これらの新しい課題に対し、京都市は引き続きGISを活用した防災活動に取り組んでいく。

プロフィール


京都市防災マップ検討委員会


京都市消防局 防災危機管理室
〒604-0931 京都市中京区押小路通河原町西入
http://www.city.kyoto.jp/shobo/main.html


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資料

掲載日

  • 2006年1月1日

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