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地理情報とハフモデルから分析された地域再生のカギ

ハーシー エンターテイメント リゾート社

 

Esri Business Analyst を利用した地域再生計画とは

 

チョコレートをモチーフした街灯
チョコレートをモチーフにした街灯

近隣の大型店舗へ流出した地域顧客と観光客を呼び戻すため「市場規模」と消費者が買い物をする確率である「吸引力」をハフモデルで算出。地域再生計画の手法が明らかに。

ペンシルベニア州、ハーシーのダウンタウンは突然の観光客の減少と地域顧客の流出に悩まされていた。2008年、ミル トン・S・ハーシー氏の意思を受け継いだハーシー エンターテイメント リゾート社は、流出した顧客を街に呼び戻すため GIS コンサルティング会社に解決策をあおいだ。

小売業界の商圏分析は都市開発において必要不可欠な作業である。ある地域でターゲットとなる市場を見つけだし、そこに集まる消費者の特徴を知るには、地域の地理情報を十分に加味する必要がある。GIS ソフトウェアは地理データの抽出 と集計に特化しており、これらの分析を行うための理想的なプラットホームだといえる。ハフモデル(地理情報に基づいたビジネスの意思決定を数式化し評価するためのツール)を組み込んだ Esri Business Analyst は、ハーシーダウンタウン地区の再生に大きく貢献した。

 

街が抱える問題

ハーシーの街はかつてミルトン・S・ハー シー氏によりチョコレート工場の従業員とその家族のために開発された。1900年の初期に着工され、工場で働く従業員の宿舎、学校、教会、レクリエーション施設、市電などが整備された。1930年代には、銀行、 映画館、デパート、ホテル、アミューズメントパーク、コミュニティセンタなども建設され、ハーシーダウンタウンはハーシー地区の活動の中心地となった。街が開発され観光客が増えると交通量の増加が問題となり、ペンシルベニア州政府は高速道路の整備を進めた。しかし、高速道路はハーシーの住民や観光客の足を地方のショッピングセンタに向ける要因となり、ハーシーダウンタウンから観光客と地域顧客を奪う不幸な結果となった。

 

再生への取り組み

2005年、ハーシー エンターテイメント リゾート社はダウンタウン再生計画の原案を作成した。再生計画は、キャンディ用のラベルを印刷するために1916年に建設されたハーシーダウンタウンを代表す建物の修復から始められた。2006年の夏、修復されたビルがオープンした。その一階には2つのレストラン、2階にはハーシー エンター テインメント リゾート社のオフィスが店を構えた。その後、隣にハーシーの歴史にふれられる博物館が建設された。

2008年、ハーシー エンターテイメント リゾート社は都市再生の次なるステージに進むため、ペンシルベニア州メカニックバーグにあるデルタ開発グループと契約を結んだ。さらに、新しいダウンタウンエリア構想を実現するため、メリーランド州ボルティモアにある都市開発・地域環境開発会社 EDSA とも連携し、1年にわたる再生計画を始動させた。

再生計画案は、ミルトン・S・ハーシー氏の ビジョンを残しながらダウンタウンとその周辺施設(リゾート、学校、病院、商業地区)とのバランスを取り、さらに地域のニーズを満たすよう立案された。この計画案は、ハーシーの住民と観光客が他の地域に流出しないよう、ハーシーダウンタウンと地域の関係をより密接なものにすることが目的だった。

 

ハフモデルの利用

デルタ開発グループが地域再生に向けた商業地区のポテンシャル調査を進めていたとき、EDSA 社もまた概念設計を作成するためにダウンタウンの物理的可能性と、その限界についての調査を行っていた。ここで大きな課題となったのは、地域市場の示す好条件をクラスタ化して適切な市場規模を算出し、設計思想を作成することであった。調査の第一段階として、店舗や住居、オフィス、公共スペースなどの不動産市場の調査が行われた。

比較分析のための人口統計レポート作成にあたり、デルタ開発グループが直面した最も困難な課題は、ハーシーダウンタウンの小売店舗数やレストラン数を推測する基準となる地理的商業地区を特定することだった。デルタ開発グループのシニアアソシエイトであるデイビー・トーレット氏は「当時抱えていた疑問は、ハーシーダウンタウンの人々がどれくらい遠くまで買い物や食事に出かけるのかということだった」と語った。そしてこの疑問を解決するために、Esri Business Analyst のハフモデル が利用された。

ハフモデルとは、目的地までの距離、開発地の魅力、その土地の競争力をもとに、消費者が新しい開発地を訪れる可能性を計算する分析ツールだ。開発地の規模が大きければ大きいほど、そして開発地までの距離と時間が短ければ短いほど、消費者が開発地まで足を運ぶ見込みは高くなると予測された。

ハーシー再生に利用されたハフモデル
ハーシー再生に利用されたハフモデル

デルタ開発グループは一度地理的な商業地区を策定すると、より詳細な消費者支 出を調査し、ターゲットとなる小売業のテナントを割り出した。当時、この分析はまだ一般小売業支出のみに焦点があてられていた。EDSA 社が割り出したダウンタウンに隣接する開発可能な地区について、デルタ開発グループは、この土地をダウンタ ウン郊外にある小売店街や大型ショッピングセンタに対抗したハーシースクエアへと一新することを念頭に分析を開始した。

 

市場規模の算出

ハーシー地区の再生予測をハフモデルに適用すると、地域市場の全体像が明らかになった。これらの予測とデルタ開発グループが集めたモデルの入力値は以下の5 つの内容で構成されていた。

  1. それぞれの街区でモデル予測を集約するため、ハフモデルでは「消費者」に代わり Esri が提供する「国勢調査区画別ポリゴン」を利用した。データフィールドには、人口統計データから「小売品年間消費者支出予測」が使用された。
  2. EDSA 社は再開発候補とされたダウンタウン区画について、開発可能な土地 面積の計算を行った。計算結果は、魅力度の要因の一つである潜在的テナン ト総床面積( Gross Leasable Area )で表された。
  3. Esri が提供するショッピングセンタのデータレイヤは、競合店となる小売店の特定と抽出に使われた。ハーシーから 24キロ圏内には14のリテールショッ ピングセンタが点在していた。その中には、チョコレート通りから400メートル圏内にある 2万2878平方メートルのアウトレットセンタも含まれていた。前項の計算結果により、ハーシースクエアの GLA 値は魅力的な要素であると判断された。
  4. Esri Business Analyst を使い、周辺 の消費者とハーシースクエアの直線距 離、消費者と14の競合店との距離が計算された。これらの計算は公式上で割られる数で表されている。
  5. ハフモデルの公式において、消費者とショッピングセンタとの直線距離は検 討要素の一つに過ぎない。消費者が目的の店舗まで運転する距離は、商品の種類など距離以外の要素に影響されるからだ。例えば消費者が家具を買いに行く場合、食品を買いに行く時よりも長い距離を運転する傾向がある。ハフモデルでは距離抵抗値を重要な要素として組み込んでおり、抵抗値は1と2の間で設定されている。小さな抵抗値は家具など消費者が遠くまで足を運ぶ買い物の時に使われる。今回の再生計画の場合は小売消費量を元に算出されているので、抵抗計数値1.5が採用された。

 

再生のカギとなったもの

これらの入力情報や計算を基にしたハフモデル計算により、開発可能と判断された区画の吸引力(消費者が買い物をする確率)が割り出された。その結果、ハーシーダウンタウンは地方からの集客が増し、かつての活気を取り戻した。

Esri Business Analyst ユーザは、ハフモデルがどのように機能し、どの入力値がモ デルアウトプットに影響するのかといった体系を理解する必要がある。その一方で、Esri Business Analyst はとても使いやすいインタフェースで、デルタチームによる専門外分野の分析をも可能にした。「Esri Business Analyst でハフモデルの計算ができることを知るまでは、紙の上で計算をしていた」とトレット氏は語った。「公式に組み込まれる全ての変数の計算には多くの時間を要したが、総合的な環境下で業務を遂行することで、迅速かつ正確な成果を上げることができた。」

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掲載日

  • 2013年1月1日