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事例

広域農業におけるさまざまな業務を ArcGIS で効率化

道央農業協同組合

 

ArcGIS であらゆるデータを整備
現地調査や営農指導など多様な業務で活用

ArcGIS を基盤とした GIS プラットフォームの特徴

  • 冬は ArcGIS Pro でデータの整備、夏は現地調査アプリで現地調査業務に
    活用し 1 年を通じてさまざまな業務で利用

概要

道央農業共同組合(以下、JA道央)は、江別市・千歳市・恵庭市・北広島市の 4 市を区域とする広域農業協同組合である。大消費地である札幌市に隣接し、新千歳空港や苫小牧工業港、北海道縦貫自動車道が近接しており、物流・商流上も恵まれた地域で、約 17,000 ヘクタールの耕地面積を有している。


JA道央区域図

JA道央は、地域農業再生協議会が行う交付金事業である経営所得安定対策に係る事務委託を受けており、当該業務の効率化のため、JA道央江別営農センター(以下、江別営農センター)で ArcGIS の活用を開始した。その結果、業務の効率化や作業日数の削減などの効果があったため、その後、北広島地区、恵庭地区、千歳地区の営農センターでも ArcGIS が導入された。

ArcGIS は経営所得安定対策の業務以外にも現地での状況把握や、農薬を散布する圃場の確認などさまざまな業務で活用されている。
ここ数年は経営所得安定対策の業務とセットで連作の情報を GIS で管理する取り組みが進められている。

ArcGIS 活用の経緯

経営所得安定対策の業務はこれまで紙面でのやりとりがほとんどであった。農家の作物の状況調査では、圃場を直接見て、農家にヒアリングを実施し、事務所に戻ってから上司に報告するという流れで進められていた。

江別営農センターでは、経営所得安定対策の作業で他センターに先んじて ArcGIS を使用しており、以前は 1 週間かけていた作業を 1 日半で完了するなど大幅な短縮に成功した。

江別営農センターの取り組みを他の地区にも展開するため、2020 年度(令和 2 年度)に北広島地区、恵庭地区、千歳地区でも ArcGIS が導入された。

ArcGIS を導入後、各営農センターでは、経営所得安定対策の業務以外にもさまざまな業務で ArcGIS を使用している。


経営所得安定対策現地確認マップ

業務での利用例

JA道央では、主に冬に ArcGIS Pro を使用したデータの整備、夏に ArcGIS Online と現地調査アプリを使用した調査業務を行っている。現在は以下の業務において 1 年を通して ArcGIS を活用している。

圃場と組合員の自宅の可視化

広大な畑において、紙地図では現在地や方角が分かりにくい場合がある。そこで、ArcGIS Online を使用して圃場と組合員の自宅を可視化したことで、手元のスマートフォンやタブレットで現在地や目的地をすぐに確認でき、土地勘のない職員でも迷うことなく現地調査が行えるようになった。

農薬散布での利用

雪が多い冬はトラクターが圃場に入ることができないため、防除用無人ヘリコプターが農薬を散布する圃場の確認に ArcGIS が使用されている。農薬の散布実績の情報は、防除を依頼した業者から入手し Excel データのみで管理していたが、2020 年からは、Excel データを ArcGIS Pro で読み込み、作成したマップを担当の課と共有している。マップを作成することで、農薬をどこに散布したのか一目で把握できるようになった。また、農薬を散布した圃場の情報はデータとして蓄積されるため、過去の散布実績の把握にも役立てている。

畜産での利用

畜産の事業でも ArcGIS が使用されている。主に雑草を取り除く事業で圃場の確認に使用されている。

コーンの交雑防止

コーンの場合、生食用のスイートコーン、飼料用のデントコーン、子実用のコーンが近い場所で栽培されると交雑し、品質が悪くなる。江別営農センターでは、コーンの交雑防止のため、2 年前から 「コーン作付け確認マップ」 を作成し、コーンを栽培している圃場から 300 メートルのバッファーを示し、交雑の可能性がある圃場を可視化している。コーンの栽培は、隣接する自治体でも行われているため、作成されたマップは周辺の JA など関係者に共有されている。

連作の把握

現在 JA道央では、連作障害への対策として、各圃場の作付け履歴データの整備を経営所得安定対策の業務とセットで進めている。ベースとなる作付け履歴データは ArcGIS Pro で作成しており、紙で管理されている過去のデータは、一度 Excel に反映させ ArcGIS Pro で読み込んでいる。

連作障害を把握するためには、最低でも 4 年分のデータが必要となるが、ArcGIS の導入時期の影響もあり、データの整備状況は営農センターごとに異なっている。

最も早く整備が進んでいるのは、江別営農センターだ。すでに 4 年分の田のデータを整備しており、タブレットで圃場の連作情報を確認することができるようになっている。

現時点では連作障害対策のための営農指導でデータを活用している営農センターはないが、今後データの整備が完了した営農センターから活用していく予定だ。


コーン作付け確認マップ

今後の展望


圃場の連作状況の可視化

JA道央では、今後もさまざまな業務で ArcGIS の活用を検討している。

たとえば、耕作者の年齢や後継者の有無をマップ上で可視化することにより、後継者が不足しているエリアへ営農指導をする際の検討材料としての活用や、災害発生の頻度が高い地域の特定などにも活用できると期待している。また、リモートセンシングによって、米のたんぱく質含有率や麦の NDVI 値を取得し、活用できないかも検討している。

このように多岐にわたる業務での活用が期待されていると同時に、職員の ArcGIS スキルの向上にも注力をしていく。営農センター間での習熟度の差を埋め、各営農センター内で培ったノウハウを共有するため、JA道央では ArcGIS の勉強会を開催し、これまで以上にさまざまな業務で ArcGIS の利活用を進めていきたいと考えている。

プロフィール


道央農業協同組合職員の皆さん



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資料

掲載日

  • 2023年1月30日