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地理空間対応のBIMデータ、建設段階を越えて運用・管理にも活用

米国建設会社 HNTB

 

米国コネチカット州ノーウォークのウォークブリッジには、ノーウォーク川を横断するメトロ・ノース鉄道の4つの線路が通っている。コネチカット州運輸局(以下、CTDOT)によれば、船舶の通行のために旋回する旋回橋であるウォークブリッジの寿命は、1896年の建設の際に想定された耐久年数を超えている。そのため、現在は垂直に昇降する昇開橋への交換工事が行われている。この橋の交換プロジェクトは、既存の橋を通る鉄道交通を維持しながら行われるため、非常に複雑である。

インフラのソリューション会社であり、Esriのパート―ナーでもあるHNTB社は、数年前からウォークブリッジの交換プロジェクトの設計に取り組んできた。チームが直面した課題の1つは、設計過程において点在するデータとシステムを接続することであった。別の空港プロジェクトでEsriの新しい製品であるArcGIS GeoBIMを早期に採用した後、同社のリーダー達は同じソリューションを使用し、ウォークブリッジのプロジェクトにおいても地理空間データとBIMデータを迅速に接続できることに気が付いた。それだけでなく、ArcGIS Velocityを取り入れ既存の橋のライブセンサーデータを監視することで、ArcGIS GeoBIMがプロジェクトの設計や建設段階を越えて、新しい橋の運用と管理にも役に立つ可能性があることを認識した。
「インフラの所有者と事業者は、ArcGIS GeoBIMを単なる設計ツールとしてだけでなく、デジタルツインフレームワークの一部として使用することを検討するべきです」。同社のテクノロジーソリューションズセンターで地理空間・仮想エンゲージメントソリューション担当副社長を務めるダリン・ウェルチ氏は次のように語る。「建設中に既存の橋の傾斜、動き、温度を管理することが可能ならば、次のステップとして通常の運用中にも橋の状況を管理できると考えました」。

ArcGIS GeoBIMとArcGIS Velocityを新しいウォークブリッジの機械室で一緒に使用し、建設後にも温度や傾斜などの重要な指標を監視している

ArcGIS GeoBIMを可動橋建設へ応用

同社のチームメンバーは空港の再開発プロジェクトでArcGIS GeoBIMがどのように機能するかを確認した後、さらに別の用途を模索し始めた。「我々は可動橋の建設会社としてスタートしたため、(空港だけではなく)橋の設計プロジェクトにもArcGIS GeoBIMを使用できるのではないだろうか?」また、橋のモデリング、あるいはBrIM(建物に対しての垂直ではなく、橋に対しての水平に機能するタイプのBIMのこと)におけるArcGIS GeoBIMの価値を実証したいと考えていた。
「BrIMにおけるArcGIS GeoBIMの価値を実証できれば、我々の設計エンジニアリングは新たな扉を開くことができると感じました。小さな都市くらいある大規模な空港と、規模は小さいが複雑な橋で実証できれば、どんな設計、建設、エンジニアリングのシナリオにも広げることができます」。
同社の土木統合ソリューションのチームリーダーであるアダム・ホーン氏は、次のように述べた。「我々はここHNTB社で設計プロセスとワークフローを最新化し、3DモデルファーストのBIMとWebファーストのGISの手法を採用しようとしています。このアイデアがひらめいたのは、ArcGIS GeoBIMという1つのアプリケーションでWebファーストとモデルファーストが実現したことがきっかけでした。全く新しい方法でした」。

同社は既にCADとGIS両方のファイル形式を使用し3Dモデルの作成法を確立していたため、このプロジェクトでArcGIS GeoBIMの採用を開始したことは理にかなっていた。しかし、本当に革新的なのは、同社がセンサーからのリアルタイムデータを処理および可視化するArcGIS Velocityをソリューションに組み込むことについて考えているということだ。ArcGIS GeoBIMを設計や建設段階を越えて継続的に使用する検討をしているのである。

3D円柱は、既存のウォークブリッジのセンサーを表している(画像左)
ArcGIS Dashboardsで作成されたダッシュボードには、ArcGIS Velocityを使用して監視されている橋の傾斜が表示されている(画像右)

「既存の橋の監視は、新しい橋の建設において課題となります。なぜなら、建設中でも既存の橋で鉄道は運行し続けるからです。」とホーン氏は説明する。「既存の橋にはすでにセンサーが設置されているので、ArcGIS GeoBIMとArcGIS Velocityを使用してライブセンサーデータを統合し、既存の橋の監視をすることを提案しています。地上検証測定中に設定した基本活動の閾値を超える動きがあれば、サービスはすぐに停止します」。

ArcGIS Velocityはセンサーの履歴と現在のデータを保存する。これは、建設中に役立つだけでなく、CTDOTが通常の橋の運用と管理をする際にその価値を発揮する。
「全ての設計と建設データをまとめる単一のソリューションとしてArcGIS GeoBIMを提案した際、ライブセンサーデータを取り込み、収集し、管理するEsriの製品を組み込むことはとても簡単に思えました」。氏は最終的にArcGIS GeoBIMとArcGIS Velocityが、橋の昇降を制御する新しいウォークブリッジの機械室で一緒に使用できると考えている。「ArcGIS Velocityは現在と過去の両方のデータを共有する手段であり、ユーザーはこれらすべてをArcGIS GeoBIMという1つの場所から見ることができるのです。合理的で継続的な統合なのではないでしょうか」。

今後の展望

ウェルチ氏とホーン氏によると、CTDOTのチームメンバーはArcGIS GeoBIMとArcGIS Velocityと使用して、検査データと完全な保守履歴を橋のさまざまな要素に関連付ける方法についてブレインストーミングを行っているという。
最後にウェルチ氏はこう述べた。「自分を制限する必要はないのです。我々はArcGIS GeoBIMが設計、建設、運用そして保守に関する意思決定を行う1つの場所になることを皆様に示そうとしています」。

この事例は Esri のブログ記事「Geospatially Enabled BIM Data Proves Useful Beyond Construction」をもとに翻訳しています。

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掲載日

  • 2022年11月9日