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事例

GISの空間分析機能が生徒の問題解決能力を向上させ地域振興にも寄与する

新潟県立白根高等学校

 

モバイルGISによる地元商店街の変容の解析

GISをプラットホームとして地域、教育・研究機関との連携を図る

概要

今回、白根高校の有志3名はGISを用いて地元商店街の変容を解析した。かつて中心商店街であった街並みは「シャッター通り」と化して色あせてしまった。こうした現状に鑑み、身近な商店街をモバイルGISによりその変容ぶりを明らかにすることを目的としている。さらに商店街のポテンシャルを測定すると同時に今後の課題をも抽出することを目的としている。モバイルGISがこうした調査に有効であることを例証して今後の町づくりに貢献することを願うものである。この成果は2009年10月15日・16日に新潟市の朱鷺メッセで開催された地理情報システム学会の学術研究発表大会で発表し、地元の商工会にも成果を伝えた。

研究対象地区について

白根市は1955年(昭和30年)3月に白根町が8村と合併し、1959年(昭和34年)6月に市制を施行。2005年には新潟市に編入合併し南区として今日に至る。信濃川と中ノ口川に囲まれる沖積平野の大部分を占め、平坦で農業が盛んである。尚、この中ノ口川は“天地人”の直江兼続が掘削工事をした川である。

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1 アンケート結果の分析

平成19年度中心市街地に関する県民意識・消費動向調査(白根地区)のアンケート結果を解析すると、20代はインターネットの活用等による商店街の情報提供、夜型生活に対応した営業時間の設定といった要望が多く、60代以上は地域の文化や歴史を生かした街並み整備、ポイントカードの発行、高齢者・障害者への対応といった項目との距離が近い様子がコレスポンデンス分析の結果、明らかとなった。これらを踏まえて表町商店街のポジションを探るために買回品・準買回品・最寄品を変数として因子分析を行った。その結果、第1因子には買回品・準買回品が抽出され、寄与率は50.8%であった。第2因子には最寄品が抽出され、累積寄与率は94.9%に達した。その結果、表町商店街は第1因子、第2因子とも低い位置にいることが読み取れた。

いよいよフィールドワーク

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フィールドワークに先立ち、住宅地図をスキャンし、Illustratorで合成してGIS上で数値地図画像25000、数値地図2500(空間データ基盤)を参照してジオリファレンスした。次に建物一つ一つの輪郭をトレースしてポリゴンを作成してArcPadへエクスポートした。さらにPOSシステムを改良して新たにドメイン(業種、階数、段差の有無、景観の改善)を作成した。

サブドメインとして駐車場、空き地、住宅といった項目も作成したが、住宅地図に書き込んだ方が効率が良かったので結果的には使用しなかった。ArcPadで効率よく入力するには慣れとドメインの設計の工夫が必要不可欠である。

1 フィールドワークの結果

アーケードはあるが所々幅が狭く、障害者や高齢者には買物が不便である様子が窺えた。また商店の入り口には段差があり、同様のことが言える。さらに駐車場を備えた店舗は極めて少なく、モータリゼーションには対応できていない様子も窺えた。景観に配慮した店舗もない。これらフィールドワークの結果と昭和57年の住宅地図とを比較してみると、店舗の減少で特に際立つものは薬局の-4を筆頭に、家具、食料品、電機・電器、農機具、旗、自転車・バイクがそれぞれ-3であった。

2 ポテンシャルの測定

表町商店街と周辺の競合する店舗であるジャスコ、リオンドールのそれぞれのポテンシャルを測定して比較してみた。測定にはハフモデルを援用し、ソフトウェアはArcViewのArcGIS Network Analystを用いた。まず、旧白根市の町丁目ポリゴンにより空間データ基盤の道路データをクリップして白根地区の道路データを抽出し、ネットワークデータセットを作成した。次に先ほどのポリゴンに500mメッシュをかぶせ、これも白根地区の形状に従ってクリップした。ロケーションは各メッシュの重心とした。施設はリオンドール、ジャスコのポリゴンの重心とした。表町商店街は一つの集合体とみなし、商店のみを抽出して重心を求めた。こうしてメッシュの重心から各施設までの道路距離を測定した。次に平成17年度の国勢調査の結果を用いて、表町商店街とジャスコの商圏と判定されたメッシュ(リオンドールの商圏はなし)についてそれぞれ空間検索を行い、重なる町丁目ポリゴンを抽出して面積按分し、獲得する商圏人口を

表町商店街と周辺の競合する店舗であるジャスコ、リオンドールのそれぞれのポテンシャルを測定して比較してみた。測定にはハフモデルを援用し、ソフトウェアはArcViewのArcGIS Network Analystを用いた。まず、旧白根市の町丁目ポリゴンにより空間データ基盤の道路データをクリップして白根地区の道路データを抽出し、ネットワークデータセットを作成した。次に先ほどのポリゴンに500mメッシュをかぶせ、これも白根地区の形状に従ってクリップした。ロケーションは各メッシュの重心とした。施設はリオンドール、ジャスコのポリゴンの重心とした。表町商店街は一つの集合体とみなし、商店のみを抽出して重心を求めた。こうしてメッシュの重心から各施設までの道路距離を測定した。次に平成17年度の国勢調査の結果を用いて、表町商店街とジャスコの商圏と判定されたメッシュ(リオンドールの商圏はなし)についてそれぞれ空間検索を行い、重なる町丁目ポリゴンを抽出して面積按分し、獲得する商圏人口を計算したところ予測通り実態とはかけ離れて一番の商圏人口を獲得した。

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まとめと課題

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かつてふれあいの場であった表町商店街は幹線道路沿いのワンストップショッピングが可能な大型店舗にその地位を奪われた様子がフィールドワークやデータの解析で明らかとなった。今後は白根特産の野菜や果実をメインとしたアンテナショップ等の検討も必要と思われる。また、GISについてはPOSシステムはドメインの設計段階で工夫を凝らさなければならない。高校においてはGISを早期に学習できるような環境の整備をしてもらいたい。今後はエントロピー最大化モデルでの魅力度の測定なども試みてみたい。

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掲載日

  • 2010年1月1日